Planetarium SS置き場

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ まこ×亜美 □

ファーストインプレッション

まこ亜美出会い編でごじゃりまする。
ちなみにコレを書いた頃にハマってた映画は、家出した(苦笑)某国の王女様がダンディな新聞記者さんと恋に落ちる
例のアレです。好きなんだよあの映画。
さすがにベスパはムリやからチャリンコで、ジェラートの代わりにソフトクリームはこの二人の必須アイテム!(笑)
と、何だかわけわかりませんが、亜美ちゃんってこんなんだったんじゃないかなぁ?と思って書きました。
  
 



「へぇ~ここが今度あたしが転校する学校かぁ、ふーん」
 あたしは区立十番中学校と書かれた門を確認すると、校舎を見上げる。
 今日は土曜日のせいか部活動をしている人間以外は生徒はいないみたいだ。
 あさってからここに通うことになるからって、一足先に下見に来てみたんだけど中々いい環境にはあるな、うん。
 あとはちょっとホームセンターとスーパーに寄って買い物して・・・あぁ~部屋片付けなきゃなぁ~引越しって大変だよなぁ。
「あっカラーBOXも欲しいな!乗るかなぁコレに?」
 あたしはチラリと自転車の荷台に目をやるが、ちょっと怪しいかも・・・と思いつつまぁいっか、とそっと自転車のペダルを踏み出した。

  ☆

「うわぁ~スッカリ暗くなっちゃったな!うーん買い物しすぎた・・・重い」
 あたしは自転車からよいしょっと荷物を降ろすと、両手いっぱいに買い物袋をさげたままエレベーターに向かう。
 やっとのことでたどり着いた部屋、キーホルダーにひとつだけついている鍵を取り出し、鍵穴に指し込んだ瞬間、改めて感じた・・・。

 ――今日からあたしはここで一人暮らしをするんだ――

 冷たい金属音が響き、鍵がくるりとまわる。
 ブラックホールがあたしを迎える。
 誰もいない闇の中に吸い込まれそうになりながらも、とりあえず声に出してみる。
「ただいま」
 ドサっと玄関に荷物を降ろすと手探りで電気の位置を探す。
 パチン
 ブラックホールが一転して、ダンボールでごった返している明るい廊下が現れた。
 当然のことながら誰からも返事が返って来ることはない。
「あー疲れた、でもこれ開けなきゃなぁ」
 ガサゴソと白いビニール袋を物色する。
 ――?アレ?何か足りないなぁ、何か忘れてないかあたし?
「あっ!卵!!卵忘れた!あー肝心の卵がなきゃダメじゃん、あたし何やってるかなぁ~」
 ブツブツと独り言を言いながら時計を見上げる。
 まだスーパー開いてるよね?しゃーないもっかい行こう。
 あたしは財布をつかむとGパンの後ポケットに無造作に突っ込んだ。
 再び自転車を引っ張り出すとエイっとペダルを踏み込む。

  ☆

「へっへー閉店間際だったから安く買えちゃった!ラッキー」
 あたしはなんとなく気分がよかったのでちょっと遠回りして探検してみようと、来た道とは違う道へと自転車を漕ぎだした。
 東京タワーが見える。前の学校でも見えたけど、ココのほうがでっかく見える。
 確かあの辺に公園あったよなぁ~行って見ようかな。

  ☆

「へぇ~結構いいじゃん・・・一の橋公園?ふーん」
 中央にある噴水のそばに歩み寄る。
 ふっと噴水の向こう側で背を向けて座り込んでいる人影のシルエットが見える。
 暗くてどんな人なんだかよくわからなかったんだけど、あたし妙に気になっちゃったんだよね。噴水の周りをくるりと歩いてあたしは近寄った。
「あの…どうかしたんですか?大丈夫ですか?」
 近づいて見ると驚いたことにセーラー服を着たあたしと同じくらいの年の女の子だった。
 もう夜も遅い時間なのに、こんなところで何やってるんだろう?
「あの?」
 ひざを抱えて顔を埋めて座り込んでいるその子にあたしはもう一度声をかけてみる。
 その子はゆっくりと顔を上げたかと思うと、奇妙なものでも見るかのように、定まらない視線であたしを見あげる。
 ドキン!
 吸い込まれそうになる瞳。深い蒼・・・いや藍色かな?
 何とも不思議な雰囲気をまとっているその子はゆらりと立ちあがると、抑揚のない声で一言。
「何でもありません、ごめんなさい」
 感情のかけらも感じられない声が冷たく響く。
 ――何であたし謝られてんだろ?ま、まぁ何でもないならいいけどさ。
 「えっと・・・でももう暗いからさ、女の子が一人でこんなとこいたら危ないよ?親心配しないかい?」
 おせっかいかなと思いつつも、尋ねる。
「別に?――あまり帰ってこないから」
「えっと、うーんっと、ふーん・・・何してたの?」
「――どうして?」
「え?あ、いやどうしてって言われても・・」
 あたしは言葉につまるとポリポリと頬を掻く。
「なんとなく・・・さ」
「――帰りたくないから」
 その子は俯いて、ポツリとそれだけ言うと再び黙り込んでしまった。
 あたしはうーんと頭の中でぐるぐるとその理由に該当しそうなことを色々想像したんだけど、よくわかんなくて――結果出てきた言葉には自分でも驚いてしまった。
「ウチ来る?」
「え?」
 目を丸くする彼女。そりゃぁビックリするわな、あたしもびっくりだって。
 でももっと驚いたことはさ!・・・その子が無表情のままコクンとうなずいたことだったんだってばさ。
 普通、見たこともない会ったこともない、まぁ女とはいえ知らない人間のウチについて来るかぁ?
 誘うあたしもあたしだけどさ!――でもこの子妙にほっとけないオーラが出てんだもん。
 元来のあたしのおせっかい気質がムクムクと頭をもたげて来ちゃったんだよね。
 ――こうしてあたしの引っ越してきて初めてのお客様は名前も知らない女の子となった。

  ☆

「どうぞ、今日引っ越してきたばっかで散らかってるけどあがってよ」
「…おじゃまします」
「ね、ごはん食べた?あたし今から作るけど食べる?・・・っても道具ないからたいしたもんできないけどさ」
「――え・・・?でも・・・」
「オムライス食べたくってさ、今卵買いに行ってたんだ」
 あたしは唯一出ているフライパンと卵を両手にへへっと笑う。
 あたしの笑顔がスルーされる。
 ――この子ちっとも笑わないなぁ。
「じゃぁ・・・」
やっとのことでそう返事をくれると、あたしの頬はにへらっと緩んだ。
「ん、待ってて」

  ☆

「はいどうぞ、食べて食べて♪」
「おいしそう」
 ふっくらとふくらんだ半熟気味の卵にくるまれたチキンライス。
 確かに見た目からしてかなり食欲をそそる出来映えだ。
「だろぉ?自信作!こう見えてもあたし料理得意なんだよねぇ、へへ」
「いただきます」
 彼女は両手をキチンと合わすとペコリとおじぎをする。
 礼儀正しい子だなぁ、へへっ何かうれしーや。きっといいトコロの子なんだろうなぁ?
 ――でもどうして帰りたくないとか言うのかな?っていうかあたし連れてきちゃったけどよかったのかぁ?
 犯罪――とか言わないよね?ね?
 あたしは頭の中でやっぱり自分がとんでもないことしてんじゃないかなぁとチラっとヤな予感がよぎる。
 けど、つい彼女の『いただきます』につられてあたしも「いただきます」と頭を下げた瞬間――忘れちゃったよ。
 彼女はスプーンでサクっと一口掬うと口に放り込む。
 彼女の反応が気になるあたしはその様子をじっと伺う。
「――おいしい!」
 瞬間、ぱぁっと彼女に初めて笑顔が広がった。
 初めて見る彼女の笑顔は女のあたしから見てもすっごくかわいいなって思えちゃったんだよ!
「かわいいじゃん」
 あたしは彼女の笑顔を見た瞬間、イヤな予感とかそんなのが全部どっかいっちゃった。
 ――で、思わず声に出しちゃった。
「え?」
 彼女はキョトンとあたしを見あげる。
「笑えばかわいいのに」
 あたしは素直にそう言うと、気になってたことをそのままぶつけてみた。
「――家で何かあったのかい?」
「え?」
 一瞬にして彼女の表情が曇る。
「や、帰りたくないって・・・」
「ううん、何でもないんです、ただ一人の家に帰るのがイヤだっただけで・・・」
「一人?ご両親は?」
 あ、ヤバイこと聞いちゃったかな?
「あ、いや、いいんだ!ごめん!さ、食べよう食べよう!ね?」
 コクンと彼女は黙ったままで素直にうなづいた。
 ま、誰にでも聞かれたくないことぐらいあるよね!うん…。

  ☆

 あたしがキッチンで食後の紅茶を入れて戻ってくると、彼女はソファに座ったままコックリコックリと船を漕いでいた。
 あたしはそばに座って彼女の顔をのぞき込む。
 よく見たら疲れた顔してんなぁ・・・このまま寝かせてあげた方がいいのかな。
 ふっと一瞬思い悩む。
 しょうがないよなぁ、家に連絡しようにもよく考えたらドコのダレかもわかんないし――うーんでもどっかで見たような気がするんだけどなぁ~。
「よいしょ」
 あたしはさすがにそのままソファで寝かすわけにもいかないと思い、彼女をそっとお姫様ダッコで抱き上げると自分のベッドに運ぶ。
 起きる気配がまったくない・・・よっぽど疲れてるんだなぁ。
 その時だ、ポトリとポケットから何かが落ちた。
 制服がシワになっちゃうかな?とかちょっと気になったけど、でも服脱がすわけにはいかないからさ、とりあえずそのまま彼女をベッドに寝かすとキッチリと布団をかけてやる。
 眉間にシワを寄せたまま眠る彼女は、ただひたすら規則正しい寝息を繰り返していた。
 ――魅入ってしまう。
 サラサラのショートヘアに、長い睫毛――キレイな顔だよな――。
 思わず彼女の前髪に手を伸ばすと、サラっとかきあげる。
 んんっと一瞬彼女の眉が逆ハの字にゆがむ。
 ビクっ!
 あたしはあわてて手を引っ込めた。
 しかし返ってきたのは再び規則正しい寝息だった。
 起きる気配は全くなく、それを見たあたしはフっと我に返る。
「あ、そうだ、落し物!」
 あたしは引き返すと、部屋の入り口に落ちていたものを拾う。
「生徒手帳?――あ、何だ今度あたしが転校する学校じゃん」
 あたしはそれをぱらりとめくる。
 感情をムリヤリ押し殺したような、無表情な顔を撮影された写真が貼られていた。
 今はかけていないみたいだけど、写真はメガネをかけているので一瞬別人に見えたが、間違いなく彼女だった。

 ――『水野亜美』――

「亜美ちゃん・・・か」
 あたしは夕食の時に一瞬だけ見せた彼女の笑顔を思い出す。
「ん?水野亜美?水野水野…あっこないだ雑誌だか新聞だかに載ってた天才少女!?」
 全国模試だかなんだかで連続トップだとかなんとかで載ってたような・・・あたしにはあまり関係のない世界の話だったから流し読みしかしてなかったけど、確かに彼女だ!
「へぇ~普通の女の子じゃん」
 ふいっとベッドで眠る彼女に視線を向ける。
 眉間にシワを寄せて眠っている彼女を――
「大変なのかなぁやっぱり」
 あたしはそっと彼女の前髪に触れる。
「今日はゆっくり休みな」

  ☆

 アイタタタ、腰がギシギシ言う。
「アレ?あたしあのまま寝ちゃったのかぁ?」
 あたしはベッドのそばで、彼女を見ているうちに眠り込んでしまったらしい。
 ふと見ると、彼女はまだ寝息を立てていた。
 あたしはんーっと大きく伸びをすると、キッチンに向かう。
 朝食の用意をするためだ――もちろん2人分。
「パン・・・でいいよねぇ?ごはん炊けないし」
 うんうんっと自分をムリヤリ納得させると、トーストとスクランブルエッグを手早く作りにかかった。
 丁度卵が半熟加減になる頃、寝室でゴソゴソと彼女が起き出す気配がした。
「あ、起きたかい?」
 あたしは菜箸を片手に寝室をのぞき込む。
 ベッドの上で今の自分の状況を必死で分析しようとしているのか、呆然と部屋を見渡していた。
 あたしの顔を視界に捉えると、やっと思い出したのか目を丸くする。
「あ、あ、あの!あたし!?」
「あ、ごめん、起こそうか悩んだんだけどさ、すっごい疲れてたみたいだし・・・何だか起こせなくてさ」
「ううんううん、ごめんなさいあなたのベッド取っちゃって!」
 ブンブンと彼女が水滴を払う子犬のように勢いよく首を振る。
 寝起きでちょっと動揺してるのか、昨日よりはちゃんと人間っぽい顔してるなぁと思う。
 クスクス
 あたしは何だかうれしくなって思わず笑ってしまった。
 天才少女もやっぱり普通の女の子じゃん。
「さぁ起きた起きた!ごはんにしよう?トーストとスクランブルエッグしかできないけどいいよね!?」
 彼女はよっぽど恥ずかしかったのか、顔を赤らめたままコクンとうなづいて席につく。

  ☆

「ねぇ?今日さ、よかったらあたしに付き合わない?」
「え?」
「あたし昨日引っ越してきたばっかでまだよくこの街わっかんないんだ。色々揃えたいものもあるし案内してくんない?――ダメ?」
「ううん、大丈夫」
「ヤッタ!制服のままじゃなんだから服貸すよ、ちょっと大きいかもしんないけどさ」
「うん、ありがとう」

  ☆

 あたしはGパンとTシャツに着替えた彼女を自転車の後ろに乗るように促す。
 しかし彼女の口から発せられた言葉は
「二人乗りはいけないわ」
 と、絵に書いたような模範生の言葉だった。
「だぁいじょうぶだって、はい乗って乗って」
 あたしはそんな言葉に耳を貸さず、強引に彼女を乗せるとペダルを踏んだんだけど・・・。
「ほんとに乗ってる?」
 あまりの存在感の無さにあたしは思わず振りかえる・・・ちゃんと乗ってる。
 ――けど軽い!軽すぎる!ちゃんと食べてんのか?この子??まぁいいけどさぁ
「しっかりつかまってなよ!」
 彼女がおそるおそるあたしの腰に手を回す。
 ちょっとくすぐったいけど、でも妙に心地良い感触。
「いっくよぉ~」
「キャっ」
 あたしは立ち漕ぎをすると、一気にスピードを上げた。
 風が気持ち良かった。

  ☆

「ね?アイス食べようか?あたしオゴルよ、案内料」
「え?でも・・・」
「遠慮いらないって!」
 あたしは有無を言わさず公園のベンチに彼女を置き去りにすると、ソフトクリームを買いに走った。
あたしはバニラのソフトクリームを2つ買うと、両手に持ったまま彼女の元に急いで駆け戻る。
「ん?」
 彼女は子供が蹴飛ばしてころころと転がってきたボールを拾い上げると、ちゃんと子供の目線までしゃがんではいっと手渡していたところだった。
 すっごい優しい笑顔。
 思わずあたしの足がその場で止まる。
 心臓がドクンと跳ねる。何だろ?この動悸は――?え?だって・・・や、ま、いーや。
 あたしは気を取りなおすと足を進めた。
「お待たせ~はいどうぞ」
「ありがとう」
 ふわりと笑む彼女の隣にあたしはさっさと腰掛けると一口なめ取る。
「んーおいしい!へへっ幸せ!」
 あたしは心の底からそう思っていた。
 ナゼだかわからないけど、昨日会ったばかりの彼女なのに一緒にいると妙に落ちつくんだよね。
「うん、おいしい」
 彼女も初めて会った時に比べたらずっと笑う回数が多くなった気がする。
 あまりこうやって遊ぶことが出来ないのかな?やっぱいつもトップキープすんのも大変だろうしなぁ・・・。
 ふっとあたしは今思いついたことを提案してみる。
「ね?何かしたいことある?」
「え?」
「今まであたしにつきあってくれたから、今度はあたしがアンタに付き合ってあげるからさ!何でも言ってよ!」
「え、でもあたし・・・あんまり遊びにいったりとかしたことなくって――よくわかんないんです。ショッピングとかお茶とか人と行ったことなくて」
「そうなの?うーんじゃぁさ、それやろう!今から全部!」
「え?全部?」
 驚いて目を丸くする彼女の手をあたしはムリヤリ引っ張り上げる。
「大丈夫!まだ時間はある!それと・・・敬語はもうナシね!友達なんだからさ!」
 アハハっとあたしは再び彼女を自転車の後ろに乗せて走り出した。

  ☆

「ねぇ?これなんか似合うよ絶対!」
「そうかな?」
「うん、あ、こっちもいいね!ほら!」
「あ、これ」
「どれ?あ、いいじゃん」
 そんなやりとりを、あたし達はあちこちの店で繰り返す。
 さすがにあまりおこずかいもないので、本当にウィンドウショッピングなんだけどさ、でもあたし自身も誰かとこうやって買い物来るなんてホントなかったから、すっごい楽しかったんだよね。撮ったことナイって言うから、(あたしもナイけどさ)プリクラなんかも撮ってみたりしてさ!何だかんだ言って結局あたしが楽しんでるような気もするんだけど・・・。

  ☆

「あぁ楽しかった!」
 あたしたちはさんざん店を冷やかしたあと、さすがに歩き疲れたのでカフェで一休みをすることにした。
「ね?」
 あたしはカフェオレをかき混ぜながら、さっき切り分けたプリクラをじっと見つめている彼女にも同意を求めてみる。
「うん、楽しかった」
 ふわりと微笑む彼女。
 何だ、やっぱり笑うとかわいいや。
 ドクンドクンっとあたしの鼓動が彼女の笑顔に反応して、突然活発になった気がした。
 でもあたしは――この楽しい時間の終りが迫っていることに気づいちゃったんだよね。
 口に出すのはすごくヤだったんだけど
「ねぇ?もう・・・そろそろ帰らないとダメ・・・だよね」
「うん・・・・」
 彼女の表情が再び翳りを帯びた。
 二人の間に沈黙が広がる
 タイムリミットが刻一刻と迫っていることを二人は痛切に感じはじめていた。

  ☆

 家に戻ると、彼女は黙って再び制服に着替えた。
「あの・・・あたし・・・おじゃましました」
 何か言いたそうに、でもどう言えばいいのかわからないのか、ただペコリと深々と頭を下げるだけの彼女。
 あたしは何だか突然彼女が遠い存在になってしまったような錯覚に陥ってしまった。
 まぁ元々全く知らない同士だったんだけどさ、でも・・・ねぇ
「えっと、あの・・・うん」
「じゃ」
 彼女はあたしに背を向けると、玄関で黙ってローファーを履く。
 抱きしめたら折れそうな背中。
 ちゃんと食べてるのかな?と心配してしまうほどの華奢な体。
 あたしは自然と・・・ホント思わずだったんだよね。
 ついつい後から彼女を抱きしめちゃった。
「え?あ、あの?」
 ビクンと硬直する彼女の身体。
「あのさ、もちっと力抜いたほうがいいよ?」
「え?」
 気のせいか少しだけ彼女の身体からスーっと力が抜けた気がした。
 あたしは抱きしめている腕に彼女が”壊れない”ように少しだけ力を加える。
「昨日寝てるときもずっと眉間にシワ寄ってたよ?」
「・・・!」
「初めは全然笑わなかったし・・・笑い方わかんないのかと思ったよ」
「うん・・・そうかも」
「そうなの?」
 コクリとうなづく彼女。
「笑ったほうがかわいいよ」
「――ありがとう」
 その言葉を聞くと、あたしはそっと腕を広げて彼女を解放した。
 彼女はくるりと振りかえると、ニッコリと笑みを浮かべた。しかも極上の!
「じゃ」
「うん、また――」
 彼女はただ黙って微笑む。
 何て返事していいのかわかんないんだろうね。
 次なんか無いと思ってるのかな。
 くるりとふたたび背を向けて黙って出て行く彼女をあたしも黙って見送る。
 カチャリと彼女が出て行った扉が閉まる。
 途端にが広がる静寂。
 改めてこれから一人なんだということを思い知らされる。
 一人暮し初日から一人じゃなかったもんなぁ・・・涙出そう。
 あたしは自分を励ますようにゴシっと目元をぬぐう。
「明日から学校だ!よし!準備しよっと!」
 あたしはうん!っと気合を入れると気を取りなおして、片付けと準備を同時進行で進めるべくダンボールの山に立ち向かった。

  ☆

 ――翌日の昼休み、屋上――

 あたしはお弁当を食べる場所を探してさまよったあげく、たどり着いたところは屋上だった。やっぱりあたしの良くない噂が出まわってるみたいだな。
 もちろん半分以上は噂に尾ひれがついてるだけなんだろうけど――でもやっぱり誰も怖がって近づいてこないよなぁ。
 あたしの口からは先行き不安な中学生活を思うとため息が洩れた。
 損だよなぁ、あたしって――。
 ガチャっとドアを開けると、ブワっと一瞬風が吹き込んでくる。
「うっわぁ~気持ちいいな!いい天気だ!」
 あたしは今しがたついていたため息のことも忘れ、グーっと青空に向かって伸びをする。
「ん?」
 ふっと屋上の一角に見覚えのある華奢な背中をあたしは見つけた。
 あたしのことなんかコレっぽっちも気づいてないのか、一心不乱に本を読んでいた。
 片手に本、片手にサンドイッチというまぁあんまり行儀のいい姿ではないけれど――。
 あたしの口から思わず笑みが洩れてしまった。
 足音を立てないように、あたしはそっと近づくとトントンと肩をつつく。
 ビクっと肩を震わせて振りかえった彼女が、次の瞬間目を丸くする。
「あなたは!?」
「へへ、木野まこと!今日からここの生徒なんだ、よろしくね水野亜美ちゃん」
「6組の転校生って??」
「あたし」
「そう、そうだったんだ・・・あれ?あたし名前?」
「あぁ、コレ」
 あたしは彼女の忘れ物を差し出した。
「生徒手帳?」
「ごめん、実は知ってたんだ、でもあの時は言わないほうがいいのかと思って黙ってた――で、返すの忘れちゃってたんだ」
 あたしはポリポリと頬を掻くとごめんと頭を下げた。
「ありがとう」
 微笑む彼女があたしにはまぶしかった。

 ――生徒手帳の写真が変わってることに、彼女はいつ気づくだろう。

 だってさ、絶対コッチのがイイ顔してんだもん。
 これくらい先生に見つかっても怒られないよね!
 あたしが今日もらった生徒手帳にも、彼女のと同じ写真を貼りなおしたことを思い浮かべながらあたしは微笑み返した。

――うん、やっぱり笑ったほうがかわいいよ、亜美ちゃん。
スポンサーサイト

* 「まこ×亜美」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2008/08/26
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://moetetsu7.blog59.fc2.com/tb.php/99-ceef8f7e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。