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□ 夏実×美幸 □

迷い

段階その1
中嶋くんごめん!

「美幸ぃ中嶋くんが探してたよー」

 警邏から帰った夏実と美幸を見つけるなり頼子が駆け寄って来る。
「何だろ?」
「デートの誘いじゃないのぉ?」
 うりうりとちゃかすように肘で美幸の腕を突つく頼子。
「んもう、そんなんじゃないわよ」
 少し照れたように頬を染める。
「今更照れなくてもいいじゃないよ!で?その中嶋くんは?」
 きょろきょろと部屋の中を見回す夏実の問いに頼子は
「さぁ?」
 と首をかしげた。大した情報屋である。
「そのうち帰って来るんじゃない?」
「そうね、夏実、報告書書くわよ」
「ほーい」





「ねぇ夏実ぃ?あんたたち普段ご飯とかどうしてんの?」
 自動販売機のそばにある休憩所でダベる3人、夏実に頼子に葵。
「美幸が作ってくれてる」
「当番とかじゃなくて?」
「うん」
「夏実さんは美幸さんのダンナさんみたいですねぇ」
「美幸も大変だぁ~夏実の面倒見てばっかだから中嶋くんとの間も進展しないのかもね」
「ちょ、それはないでしょぉ~?あたしが作るより美幸が作った方が早いし美味しいんだもん」
 葵ちゃんと頼子にちゃかされ、頑張って反論しようとしてもすればするほどドツボにハマっていくような気がした。
 確かに何かにつけ美幸に頼るクセついてるけどさ、でもあたしだって・・・。
「帰って掃除でもしよっかな」
「何?急に」
 考えこんだと思ったらイキナリ話が飛んことに頼子は目を丸くする。
「なぁんでもない、じゃね」
 ひらひら~っと手を振るとその場に飲みかけのコーヒーを残して夏実は去って行った。
 その背中を見送りながら、ふと今更気づいたように頼子が葵を見上げて聞いた。
「そういや、美幸は?」
「中嶋さんとどこかに出かけたみたいですよ?」
「えーーーー?いつのまにーーー?」
「さっき定時で上がってそのまま・・・」
「葵ちゃーん。そういう時は追いかけなきゃ!」
「追いかけなきゃって頼子さんってば」
「まだ間に合うわ、早く!行くよ葵ちゃん!」
「え?わたしもですか?」
 有無を言わせず頼子は葵を強引に更衣室に引きずっていった。

  ☆

「中嶋くんこれなんかいいんじゃない?」
「それ?喜んでくれるかな?」
「ん」
「そっか、じゃあそれにしよう。こういうのって何を渡せばいいのか全然わからなくってな。助かったよありがとう」
「いいえどういたしまして。ホラ早くレジに持って行ったら?」
「あぁ」
 中嶋がそれをレジに持って行く姿を見送る美幸の背中に、突如悪寒が走った。
 勢いよくくるっと振り向いたそこに原因がいた。
「みぃた~わよぉ~?美幸ぃこぉんなところで何してんのよ?」
 心なしか肩で息をしているようだが、目は好奇心いっぱいにキラキラ輝いていた。新しいネタを見つけた時のような顔だ。
「へ?よ、頼子?葵ちゃんも?」
「中嶋くんやっぱりデェトのお誘いだったんだぁ?」
 ニヤニヤと笑うと美幸の頬をツンツンと突つく。
「ち、違うわよ!そんなんじゃないってば」
「じゃあ何してたのよ~こんなところで二人でさ」
「誕生日のプレゼント選びにつき合ってたの!」
「誰の?」
「瀬名さんよ」
「中嶋くんのお母さんの?」
「お母さん・・・まぁ・・・そう・・・なるのかな」
 中嶋の父、大丸と再婚を果たした瀬名は、美幸よりもまだいくつか若い子だった。当然中嶋よりも若い。
 そんな瀬名が自分の母親になるのは不思議な気がしただろうが決して嫌ってはいなかった。
 だから誕生日に何か送ろうと思ったのだろうし。
「なんだ~、いやいやでもそういうのにつき合ってこういうとこ来るのもデートなんじゃないの?」
「んもう、いい加減にしてよ!帰る!」
「まぁまぁ中嶋さんも不器用な方ですからこういう口実でもないと中々誘えなかったのかもしれませんし」
 店先でぎゃあぎゃあ騒ぐ二人をいさめようと、身もフタもないフォローを入れる葵。
「ダンナさんが美幸の帰りを首を長~くして待ってるもんね~?いや、ダンナというより子供かも」
 ケラケラと笑う。
「ちょ、頼子さん!それは言い過ぎですよ。じゃ美幸さんごゆっくり」
 まだ何か言おうとする頼子の口を塞ぎ、引きずりながら店を出て行く。
「ちょ、葵ちゃん!頼子!?」
「ん?どうした小早川?誰かいたのか?」
 頼子たちが姿を消したと同時に中嶋が戻って来た。
「頼子が・・・あ、いや何でも無いわ。お金払ってきた?」
「あぁ、ありがとうな小早川。お礼に晩ご飯でもどうだ?オゴるよ」
 誘うだけで少し声が上ずっている。
 こういうところはいつまでたっても変わらないな。
「え?あ・・・ごめん、今日はやめとくわ」
 少し考える仕草を見せて美幸は顔を上げた。
「え?」
「夏実がお腹空かせて待ってるし。ほっとくとちゃんと食べないんだもん」
 ニッコリと満面の笑顔で夏実を引き合いに出す。
 中嶋と二人で食事をしたくないわけではない。
 頼子にちゃかされたからでもない。
 ただ夏実のことが気になった。
 それだけだ。
「ごめんね中嶋くん」
「あ、あぁ」
 美幸の親友であり、同居人であり、かけがえのない相棒の名を出されれば、中嶋とて引き止めることは出来ずに、呆然と足早に駆けて行く美幸の後ろ姿を見送った。

  ☆

「ただいま~」
「あっち!ちょ、わぁーーーーっ」
「夏実?」
「あ、おかえりー美幸」
 いつもは美幸がしているエプロンをつけて、おたまを片手に汗だくの夏実がひょいっと顔を出す。
「どうしたの?」
「んー?たまにはあたしがご飯作ろうかなってさ」
「夏実はそんなことしなくてもいいのに」
「どうして?」
 ふと真顔になって問う夏実。あたしには何も任せられないってことなのか?
 美幸がどういうつもりでそんなことを言うのか理解できなかった。
「え?」
「あたしがこんなことしちゃ変かな?」
 自分のエプロン姿を見下ろす。
「そうじゃないわ」
「美幸がさ、あたしのこと気にして自分の幸せ見失っちゃ悪いじゃない?だからちょっとはこういうの自分で出来るようになった方がいいかなっ・・・て、え?」
 さっきとは違い、おどけたように最後まで言いきる前に、美幸が首に勢いよく抱きついてきた。
 ぎょっとおたまを持ったまま両手を降参という風に上げたまま受け止めたはいいが、予想もしてなかった攻撃にすっかり動転していた。
「美幸?」
「ばか」
「いや、でもさぁあたしが美幸に負担ばっかかけてんじゃないかなって思って反省してんだよね。あたしのせいで中嶋くんとの仲が進展しないんじゃ悪いでしょ?」
「そんなこと言わないでよ!」
 声が震えている。
「どうしたの?美幸」
 おたまを持ったままの手でよしよしと美幸の背中を撫でる。美幸は何も言わずただ黙って夏実の首にしがみついたままだ。
「おーい、美幸ちゃーん」
「夏実の口から・・・そんな言葉聞きたくない」
「え?ごめん、何かあたし悪いこと言っちゃった?」
 鈍感な夏実は素直に謝ると、美幸の腕を解いた。
 夏実に両腕を掴まれたまま俯いて美幸はふるふると首をふる。
「美幸、あたしなんかにかまってばっかりじゃデートも出来ないんじゃない?たまにはゆっくりして来たらいいのに」
 美幸はその問いに答えずに俯く。沈黙が空気を支配する。
 その沈黙に耐えられなかった夏実は、ひょいっと俯いた美幸の顔を覗き込むと追い打ちをかけた。
「あたしは美幸のダンナでも何でもないのにご飯作ってもらったり、朝起こしてもらったり迷惑ばっかりかけてるし」
 自分で言っててしょぼんと落ち込んでしまう夏実。
「あたし、ここにいてもいいのかな?」
 その言葉に反応して、目を潤ませた顔を上げる。
「・・・迷ってるの」
「え?」
「中嶋くんが嫌いなわけじゃないの。夏実が・・・東海林巡査長と一緒だった頃、寂しくて寂しくて耐えられなかった。あの時は中嶋くんがそばにいてくれたけどでも・・・やっぱり耐えられなかった」
「ごめん」
 今日何度目だろうこの言葉。でもイヤじゃない。夏実はよしよしと美幸の頭を優しく撫でた。
「こんな風にてんびんにかけちゃうなんてあたしは狡いってわかってるの。夏実と中嶋くんは違うってわかってるのに。でもどっちも失いたくないからって決断できないの。狡いの、あたし」
 本気で悩んで、本気で苦しんで、本気であたしのことも想ってくれてる美幸が愛しい。
 そう思った瞬間、理性がどっか遥か彼方に吹っ飛んだ夏実は思わずもう一度抱きしめてしまった。おたまを放り出して今度はしっかりと。
「もういいから。わかったから美幸、泣かないでよぉ」
 自分で抱きしめといて胸の中で肩を震わせる美幸をどうしたらいいのかわからず、夏実はあたふたと懇願するしかなかった。
「な、泣いてないわよ!」
 そんな夏実の心配をよそに、こんな時にも意地を張って両手で体を押しのけようとする美幸をそれでも夏実は離さなかった。
「痛いってば、夏実」
「イヤ」
「え?」
「離さない」
「夏実!?」
「あたしはさ、美幸の幸せ考えたらあたしなんかより中嶋くんの方がいいって思ったのは本当なんだ。でも・・・そんなこと考えてホントの気持ちから逃げようとしてる自分がすんごくイヤだった」
 夏実の胸に耳を当てたまま黙って耳を傾ける。
「ホントは今日もずっとイライラして待ってた。ジッと待つのは性に合わないからこんな格好して出来もしないことやり始めたんだ。美幸がご飯食べて帰って来るかもしんないのにさ、二人分用意しちゃった」
 コンロに乗った鍋からの美味しそうな匂いが努力を物語っていた。
「あたしは夏実がお腹空かせて待ってると思って帰って来たわ」
「そうなの?」
「だってまさか夏実が用意してくれてるとは思わないじゃない?」
「ぷっ」
「あはっ」
 同じこと考えてるのかすれ違ってるのかよくわからないお互いの思いやりに、あははははっと思わず二人は一緒になって笑ってしまった。

  ☆

「ね~美幸?」
「なぁに?」
「あたしは我慢したりとかすんごい苦手なんだよね、わかってるとは思うけどさ」
「うん。何、今更?」
「だよね~あははっ毎日一緒にいるんだもんね」
「何よ?変な夏実」
「だから・・・」
 夏実はスっと真顔になると真っ直ぐ美幸を見据えた。
「あたし美幸が決断するまで待てないよ」
「夏・・・んっ」
 唇が名を呼ぶ前に夏実の唇がそれを塞いだ。
 ぎゅっと服を掴んで抵抗するそぶりを一瞬見せたが、それもそう長くは続かなかった。
 呼吸が苦しくなりかけた頃、離れた唇が耳元で囁いた。
「あたしは美幸に迷惑ばっかかけるけど、美幸だけだから、受け止めてくれんの。ってゆーか美幸にしか無理だから。だから中嶋くんにはやんない」
「ばかね」
 くすくすと少しだけ頬を赤らめたまま小さく笑うと、美幸の人差し指が夏実の唇を塞いだ。
「しょうがないわね・・・もらわれてあげるわ」
 言ってもう一度今度は美幸から夏実へと唇を寄せた。
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Date:2008/08/26
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