Planetarium SS置き場

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□ ランダム □

護るべきもの

18禁でしたね~
しかも前世とか絡んでて?
いや~無謀なことしたよな
ジュピヴィナやったと。


 
 夜もふけた頃、ジュピターは自室の窓から宇宙(そら)を…  
 蒼く輝く地球を複雑な想いで見つめていた。
 
 ドンドンドン 

 「な、なんだぁ?」 
 夜中の静寂を突如として破壊する騒音に、ジュピターの肩がビクっと震えた。 
 突然の来訪者を迎え入れようと、扉を開けに立ちあがる。 
 瞬間、フラリと何者かが腕の中に倒れ込んでくるのを、ジュピターはあわてて抱きとめる。 
「ヴィ、ヴィーナスぅ?」 
「ジュピ…タ…」 
「な、何だよこの傷!?」 
 ヴィーナスの体中にはアザや傷が無数に刻まれ、戦闘服であるセーラー服も破損していた。 
 痛々しい姿だった。 
「オマエ偵察に行ってたんじゃなかったのか?」 
 ヴィーナスは足をもつれさせ、息も絶え絶えにジュピターの肩に手を置くと、押しのけてムリヤリ部屋に入る。 
「見つかった」 
 それだけをかろうじて伝えると、ドサっとジュピターのベッドに仰向けに倒れ込む。 
「見つかったって?敵に?敵につかまってたのか?」 
「ん…」 
「よく帰ってこれたな…とりあえず手当てするから」 
 救急箱と濡れタオルを片手にヴィーナスのそばにしゃがみこむと 
 使いものにならなくなった戦闘服を脱がしにかかる。 
「マーズは?いなかったのか?」 
「知らない、いるんじゃない?たぶん」 
 体を起こして素直にジュピターの行為に従いながらも言葉はそっけない。 
「じゃぁ、まっすぐここに?何であたしのトコに?」 
「ふふっ、なんでだろ」 
 自嘲気味に笑うと、傷だらけの裸体をさらしたまま再びベッドに倒れ込む。  
 顔を見られないようにと両腕を交差させて目元を覆う。   
 嗚咽が洩れる。  
 目を丸くするジュピターの手が思わず止まる。  
「ヴィナ?」  
「あたし…もぅ、ダメだぁ」  
「何が?」  
 気を取りなおしたジュピターはヴィーナスの体をお湯で濡らしたタオルで優しく拭き始めた。  
「自信ない、リーダーなんてもう出来ない」  
「え?」  
「もう…ヤだ」  
 普段の強気なヴィーナスからは考えられないほどの弱気な言葉にジュピターは目を丸くする。  
 ヴィーナスの両腕の隙間から涙が流れ落ちる。  
 ジュピターは頬に落ちる涙を親指で拭うと  
 ヴィーナスの上に馬乗りになってそっと両腕を持ち上げるとまっすぐ瞳を見おろす。  
「バカだな、オマエ以外の誰があたしらをまとめるんだよ?」  
「あたしには…大切なもの…護れそうにないもの、そんな能力(チカラ)ないもん」  
 瞳いっぱいに涙を溜めたまま答える。  
「あたしが護るよ」  
「怖いのよ」  
「何が?」  
「あたしのせいで大事なものを失うのが…たぶんこの国はもう…」  
「言うなよ!」  
 険しい表情でヴィーナスを睨みつける。  
「そんなの聞きたくない!」 
「ジュピター、あなたも薄々気づいてるんでしょ?」  
「…!?」  
「ココはもう…崩…」  
「まだ大丈夫だ!きっと…」  
 ヴィーナスの言葉を自分に言い聞かせるかのようにムリヤリ遮ると、泣きそうな顔で微笑む。 
「大丈夫に決まってる…」 
 ジュピターはさっきまで自分も感じていたイヤな未来のヴィジョンを打ち消すかのように
 半ば強引にヴィーナスの唇を自分の唇で塞ぐ。 
 目を見開いて一瞬暴れるが、両腕を4守護戦士一の怪力で拘束されては抵抗できるハズもなかった。 
 ヴィーナスが大人しくなるのを見計らって、ジュピターの唇がそっと離れる。 
「腕…離してジュピター…マーキュリーに怒られる」 
 突然愛しい人の名前を引き合いに出され、一瞬ドキンっと心臓が跳ねる。 
 動揺を悟られないようにムリヤリ押さえつけると、目を細めて微笑む。 
「ばーか、ほっとけねーだろ、今オマエのこと離したら壊れんだろーが!?たまには甘えろよ!あたしだったらかまわないから!…マーズには黙っててやるから」 
「…うん」 
 
  ☆ 
 
 ジュピターはヴィーナスの全身の傷に、痣に、キスの雨を降らせた。  
 優しくいたわるように、一ヶ所ずつ丁寧に丁寧に。  
 そんなジュピターの愛撫に、今にも声を上げてしまいそうになるのをヴィーナスは唇を噛みしめて必死で堪える。  
「…エンリョしてんの?」  
 ヴィーナスの頬をそっと掌がなでる。  
 ジュピターの親指が零れ落ちる涙に触れる。  
「大丈夫だから…声…ガマンしなくていいし、背中抱いてていいから、な?」  
 そっとヴィーナスの手を自分の背中に回すように促すと、舌で涙を舐め取る。  
 額に、頬に、目元に何度も何度も降り注ぐキスに、ヴィーナスの意識は溺れる。  
 唇に到達すると、ジュピターはさっきとは違って今度は奥にまで侵入を果たそうと舌をねじ込んでくる。  
 角度を変えては繰り返されるキスに、足りなくなった酸素のせいか頭がぼんやりしだすともうジュピターの舌の動き以外は何も感じることが出来なくなっていた。  
 ジュピターの冷たい右手が脇腹に触れると、そっと這いまわる。  
「ん!…んんっ」  
 苦しそうにうめき、身をよじって逃げようとするが、ジュピターの手の動きが止まる気配はなかった。  
 ツツっと掌がヴィーナスの形のいい胸を包み込む。  
 「ふ…ん…」  
 キュっと指先に力が込められると、ビクンっとヴィーナスの体が跳ねる。  
 唇を離したジュピターは、長い付き合いなのに初めて見るヴィーナスの表情に驚く。  
 さすが美の女神をつかさどるだけあってキレイだな、と改めて全身に視線を這わす。  
「ジュピター?」  
「うん?」  
「後悔しても…知らないから」  
「…後で考えるよ」  
 ジュピターは、ヴィーナスの胸の先端の膨らみを口に含むと、器用に舌で弄ぶ。  
「はぁぁっ、やっ!…だ」  
 ジュピターの壊れ物を扱うかのような優しい愛撫に、ヴィーナスの頭の中が真っ白に染まる。  
 ジュピターの手が胸からヴィーナスの中心に伸びる。  
 指が吸い込まれる。   
 蜜が絡みつく。  
「カンジてるんだ…ヴィナ?」  
「ばっ…か…言わないで」  
 ジュピターの体を押し返そうと肩に手を伸ばすが、全く力がこもってはいなかった。  
 くっと中で指が折り曲げられる。  
「はうぅっ、んんっ」  
 何度も何度も出し入れされるジュピターの長い指が、ヴィーナスの思考を奪い取る。  
 押し返そうと肩に伸びていた手は、いつのまにか背中を抱きしめていた  
 爪が背中に食い込む  
 部屋に響く声や荒い呼吸音が誰のものなのか、二人にはすでにわからなくなっていた。 
 
  ☆ 
 
 グッタリと眠るヴィーナスの腕や足に手当てを施すと、ジュピターはキレイに包帯を巻いていく。  
 マーキュリー仕込みの手際の良さである――とは言ってもいつもは手当てをされる側なのだが。  
「ん…」  
「気がついたか?ヴィナ」  
「うん」  
「そっか」 
 ただ何も聞かずに微笑むジュピターの存在がありがたかった。 
「ありがと…あたしがんばるから…護るから、あなたたち仲間も、この国も」 
「うん」 
「帰るわ」 
 治療が終ったのを見計らって体を起こすと、着替えをすませる。 
 借り物なのでサイズが少し大きめだが、文句は言えない。 
「うん…がんばれリーダー!」 
 拳を振り上げて応援するジュピターにヴィーナスは満面の笑顔で答える。 
「ばか」 
 ベーっといたずらっ子のように舌を出すと、ヴィーナスは部屋を後にした。 
 
  ☆ 
 
「え?ヴィーナスが帰って来ない?」 
 夜中、職務を終えたマーキュリーはマーズの部屋を尋ねていた。 
 職務中、何度もいつものマーズらしくないミスが目立ったのが少し気になったので、夜遅くて申し訳ないとは思いつつも様子を見に来てしまった。 
 マーズの集中力が欠けていた原因は、やはりリーダーであるヴィーナスだった。 
 敵地に偵察に行ったまま連絡もなしに、もう3日も帰って来ていなかった。 
「どこに行ったのかしらね?」 
 いくらなんでも帰還してもいい頃だ。   
 敵に捕まりでもしたのかと、さすがのマーキュリーも心配になったけれど、それ以上に気になるのはマーズの落ち込みようだった。  
「最近様子がオカシかったの、何かを思い詰めてるみたいで…でもあたしは何も聞けなかった」  
「マーズも感じてる?この国の…」  
 マーキュリーの言わんとしていることを察したのか、コクンと神妙な顔でうなづく。  
「ヴィーナスもきっと…」  
「でも!!」  
「ん?」  
「言ってくれてもいいのに…」  
「そうね」 
 
  ☆ 

 心配は残るのだけれど、明日の職務のことを考えて早々にマーズの部屋を後にしたマーキュリー。 
 しかしその足は自室には戻らずに真っ直ぐにジュピターの部屋に向かっていた。 
 すでにいつものジュピターならば眠っているであろう時間だったのだが…。 
 角を曲がったところで、カチャっとジュピターの部屋の扉が開くのが見えた。 
 まだ起きてる?珍しいわね。 
「じゃね」 
 え? 
 開いた扉から出てきたのは、何とさっきまでマーズとの間に話題に上っていた張本人の、ヴィーナスだった。 
 扉の中に向かってベーっと笑顔で舌を出していた。 
 どうしてヴィーナスがジュピターの部屋から出てくるの? 
 しかもこんな時間に?いつ帰って来てたのかしら? 
 扉を閉めたヴィーナスが、ハっとマーキュリーの視線に気づいた。 
「あ、マ、マーキュリー?ジュピターのところに行くの?」 
「え?あ、ええ」 
 ふとヴィーナスの格好に目が止まる。 
 戦闘服姿ではなく、何度かジュピターの部屋のクローゼットで見かけた彼女の着替えのうちの一枚だった。 
 「マーキュリー?」 
 ハっと我に帰る。 
「あ、あの!えっと…マーズが心配してたわよ」 
「あぁ、そっか、うんわかった、行ってみるわ」 
「えぇ、そうしてあげて」 
 ヴィーナスの背中を見送ると、マーキュリーはそっとジュピターの部屋の扉を開ける。 
「誰?ヴィナ?忘れ物?」 
 暗闇の中から声が飛ぶ。 
「あたし」 
「マ、マーキュリー?」 
 ガバっと勢いよく半身を起こす気配がする。 
 どうやらジュピターはすでにベッドにもぐり込んでいたらしい。 
「ごめんなさい寝てた?今そこでヴィーナスに会ったから…来てたの?」 
「ん、来てたよ、ヒドイ怪我だったから手当てしてやってたんだ」 
 丁度眠るところだったのか、ジュピターはいつものように産まれたままの姿… 
 引き締まった美しい裸身を星明かりにさらしていた。 
「ふーん、どうしてマーズのところに行かなかったのかしら?」 
「さぁね」 
 ジュピターのそっけない答えに、なぜか鼓動が早くなる。 
 考えたくない想像が頭をよぎるが、ふるふると小さく首を振って不安を打ち消す。 
 トコトコっとベッドの脇に近寄ると、おもむろにジュピターの頭を掻き抱いた。 
 クンっと濡れた髪に顔を埋める。 
「…マーキュリー?」 
「いい匂いね」 
「そう?いつもと同じだよ?」 
「ね、ヴィーナスと…何してたの?」 
「何って?だから…」 
「ヴィーナスも同じにおいがしてた」 
「あぁ、体ボロボロだったから風呂にブチ込んだ」 
 不安な気持ちを抱いたまま見下ろすと、目だけでマーキュリーを見上げるジュピターの瞳とぶつかる。 
 ジュピターはマーキュリーの腰に手を回すと、キュっと力を込めて抱き寄せた。 
「あいつね…」 
「うん?」 
「すっげー悩んでた…偵察に行って、ボロボロにされて帰って来て…リーダーの資格なんてないって責任感じてた…見ててツラかったんだよ…」 
「ヴィーナスが?」  
「きっとさ、そんな弱ってるところをマーズに見られたくなかったんじゃないかな?」 
 ヴィーナスのツラそうな涙が脳裏をチラつく。 
 泣きそうになる。 
 強くなりたい、少しでも彼女の負担を減らしてあげたい。 
 抱いたところで…抱きしめてあげたところで彼女の心を癒せたとは思ってはいない。 
 むしろ、いらぬ罪悪感を背負わせただけかもしれない。 
 でも、あの時はあーするしか思い浮かばなかったんだ。 
 同じ罪を背負うことで少しでも肩の荷物を軽くしてくれたらいいなと… 
 国の未来を独りで背負い込むことはないということをわかって欲しかったのかもしれない。 
 みんな同罪だということを…。 
 勝手な言い分かな…。 
 結局マーキュリーを…そしてマーズを裏切ったことになるんだもんな…。 
 ごめん…みんな。 
「ねぇジュピター?」 
「何だい?」 
「あなたも…やっぱりあたしに見られたくない?弱いところ」 
「あぁ、どう…かな?そうかも…」 
 悲しそうに、寂しそうにジュピターを見おろすマーキュリーの髪をゆっくりなでると、うそだよっと耳元で囁く。 
「そんな顔しないでよ、でもさ、マーキュリーだって何も言わないじゃん?」  
「え?」  
「疲れててもそんなそぶりは見せないじゃん、残業しまくりで限界までがんばって倒れちゃうしさ?  
 どうしてだろうねぇこの人は?そんなに頼りになんないかな?あたし」  
 イジワルな顔をすると、人差し指でマーキュリーの額をツンツンとつつく。  
「あの!それは!…ごめんなさい」  
 つい一週間ほど前の出来事を引き合いに出されたことが恥ずかしかったのか、赤面すると俯いて謝る。  
「あはは、冗談だよ」  
 ジュピターはキュっとマーキュリーの頭を抱くと、ポンポンとあやす。  
 マーキュリーはジュピターの肩に額を置くと、黙ってされるがままになっていたが、意を決したように唇を噛み締めてジュピターに視線を戻す。  
「あの!…ヴィーナスと…本当に何にもなかった?」  
 ドクン!  
「あ?何にもって何が?」  
 早鐘を打つ心臓を悟られないように、とりあえずすっとぼける。  
「えっと、だからそのぉ…」  
 言いよどむマーキュリーの言葉を遮るように、チュっと唇にキスを送る。  
「妬いてんだ?」  
「そ、そんなんじゃ…」  
 益々赤く染まるマーキュリーの顔を、からかうように笑って楽しそうに眺める。  
「おいでマーキュリー、一緒に寝ようよ」  
「え?キャっ」  
 グイっと腕をつかむと、有無を言わさず、あっという間にベッドに引きずり込んだ。  
「愛してる、マーキュリー」  
「ん」  
 疑問も嫉妬も仲間のことや王国の行く末も、この瞬間全てがどうでもいいと…ただお互いと共に過ごす時間と空間以外はもうどうでもいいと2人は無責任にもそう想っていた。 
 
  ☆ 

 コンコン 
 静かに開く扉から警戒するようにマーズの顔がのぞく。 
「ヴィナ?」 
「Hi!」 
 片手を上げて挨拶をする。 
「一体ドコに行ってたのよ!?」 
「ご、ごめん」 
 もう片方の手も小さく上げて降参のポーズを取る。 
「何?その格好、それにその傷?」 
 うさんくさげに顔をしかめると、ヴィーナスの全身を上から下までナメるように観察する。
「たいしたことないわ、ジュピターに手当てしてもらったし」 
「…ふーん」 
 マーズの視線から逃れるように部屋に入ると、二人で寝ても落ちない大きさがいいと言うヴィーナスの見立てたクイーンサイズのベッドにドサっと腰をおろす。 
 無言で紅茶の用意を始めるマーズの背中に向かって話しかける。 
「ねぇ?怒ってる?」 
「どうして?」 
 マーズの抑揚のない言葉に、ツツーっとヴィーナスの背中を冷たい汗が流れる。 
 やっぱり怒ってるじゃない。 
「あたしが…ジュピターのところに行ったから…?」 
「どうして?今のあなたにはあたしじゃなくて、ジュピターの方が必要だったんでしょ?仕方ないわ」 
 背中を向けたマーズの、紅茶を淹れる手がカタカタと震えている。 
 カップの中で暴れる茶色の液体。 
 マーズの異変に気づいたヴィーナスは、立ちあがると背後から手を伸ばす。  
 触れた瞬間、カチャンとカップを取り落とすマーズの手元に茶色の染みが広がる。  
「マーズ…ごめん」  
 そっとマーズの手に自分の手を重ねると、震えを止める。  
 左手を腰に回して抱き寄せると、首筋にくちづけを送りながら囁く。  
 マーズの背中にピンっと張り詰める緊張感。 
 ヴィーナスはそんなマーズの様子にあえて気づかないフリで愛撫を続ける。 
「あたし…マーズのこと泣かせてばかりだね」 
 マーズはその時初めて自分が涙を流していたことに気づいた。 
「ホント…リーダー失格よね…あなたのそばにいる資格もないのかもしれないわ」  
「ばか、あたしは泣いてなんか…」 
「心配かけてごめん…ジュピターなら泣かないと思ってさぁ、ついグチっちゃった」 
 マーズの強がりを無視して続けると、えへへっと苦笑いを浮かべる。 
 マーズはヴィーナスの手から逃れるかのようにくるりっと体を反転させ、驚いているヴィーナスの胸にポスンっと額を預けると俯く。 
 涙を隠すかのように。 
「ごめん、ヴィナもツライのに」 
「え?」 
「くだらない嫉妬した」 
「珍しく素直ね」 
 目を丸くして見下ろすヴィーナス。 
 いつものマーズなら無関心を装うか、逆に言い返されるかなのに。 
 いいわねこういうマーズも。 
「あたしがもっと強かったら…って」 
「あたしさ…」 
 ぽんぽんっと言葉を遮りながら愛しそうに微笑み、マーズの長い髪に指を差し入れると梳きながら話を始めた。 
 「ホントは会いたかった、マーズに。でもここのところ何だかイヤなことばかり感じちゃって、偵察に行ったら敵にみつかるわ、やられるわで混乱しちゃって…どうしていいのかわからなくなったの。こんな情けない姿マーズに見られたくなかったっていうかさ…くだらない意地張っちゃった、ごめんね…ふふっ」 
 ふるふると俯いたままで黙って何度も首を振るマーズの髪が乱れる。 
 マーズの長くて細い指がそっとヴィーナスの右腕の傷をなぞる。 
 ゾクリっと背筋に震えが来る。 
「痛かった?」 
「ん?あぁ、ま、ね」 
「キレイな体なのにこんなに傷だらけ…無茶ばっかりしてさ、ばっかじゃないの?」 
「ホメてくれてるの?ありがと。でもリーダーだからがんばんなきゃ、でしょ?」 
「死なない程度にね」 
「あなたが待っててくれる限り…ううん、一緒に戦ってくれる限りあたしは死なないわよ」
 つっと顔を上げるマーズの潤んだ瞳に、ヴィーナスの強くまっすぐな視線が絡む。 
「あなたはただ待ってるだけの女(ひと)じゃないでしょう? 
 そんな女だったらあたしはホレてない…あなたは…強いわ」 
「ホメ言葉として受け取るわ」 
「ホメてるのよ」 
 泣き笑いの表情を浮かべながらも直、強がろうとするマーズが愛しくて、ヴィーナスは思わず唇を奪ってしまう。 
 虚をつかれたマーズの目が一瞬見開かれ、視線が泳ぐ。 
 しかしすぐに閉じるとその行為に応じる。 
 2人の息遣いと、唇を合わせる音だけが部屋に響く。 
 長い長い時間をかけて、お互いを貪るように求め続ける。 
 たった3日会えなかっただけなのに、永遠にも感じられたこの3日分を取り戻すかのように、そしてお互いの不安を拭い去ろうとするかのようにただひたすら求めあう…。 
「愛してるわ、マーズ」 
 
  ☆ 
 
 ふっと目を覚ますと、目の前で眉間にシワを寄せて寝息を立てるヴィーナスを見つめる。
 頬をそっとなでる。  
 「ヴィナ…」  
 よほど疲れていたのか目が覚める気配は全くない。  
 たぶん…今日2度目の行為であろうことにマーズは薄々気づいていた。  
 その相手がジュピターであるだろうということにも――。  
 あえて気づかないフリをして、ヴィーナスを受け入れた。  
 今拒否をすると、2度と帰ってこないような気がして――。  
 プライドを捨てないとこの人のことは愛せないのかもしれないと肌で感じていた。  
 なりふりなんてかまってられない。  
 失いたくない。  
 あたしはこの人を愛している。  
「何…泣いてるのよ」  
 ビクン  
「マーズ…?」 
 涙を見られるのが今更ながら恥ずかしくて思わず寝返りを打つと、背中を向けてしまう。
 その背中にふっとぬくもりを感じる。 
 愛しい人の、人より少しだけ高い体温。 
 優しく体を包み込んでくれる傷だらけの腕。 
 何度も修羅場を乗り越えてきた証である痣の刻みこまれた身体。 
 マーズの肩が震える。 
「マーズ…どうして泣くの?イヤだった?」 
 不安そうに尋ねるヴィーナスの声が少し震えている。 
「自分で…自分が嫌になる」 
「どうして?」 
「あたし、こんなに誰かに…あなたに執着するなんて思ってなかった――自分をどんどん見失ってる気がする」 
「――あたしもよ」 
「え?」 
 意外な言葉に思わず首だけで振り返ると、その瞬間を逃さないというかのようにヴィーナスがマーズの体を無理やり反転させて、抱き寄せた。 
「やっ…ヴィナ?」 
「こっち向いててよ…」 
「…?」 
「愛してる、誰よりも、何よりも…戦士としての…リーダーとしての意地やプライドや役割を忘れそうになるくらいにね――ギリギリの線上に立っているのよ、綱渡りの愛ね、全く」 
「ん」 
「あたしが生きて帰れるのは、あなたがいるから…だから見捨てないで、あたしはバカだから、マーズを泣かせることばかりしちゃうけどでも――」 
  
 ――愛してる―― 
 
 ハッキリともう一度そう告げると、何か言おうとするマーズの唇を塞いだ。  
 言葉を発することが叶わなくなったマーズは答える代わりに、シッカリとヴィーナスの腰を抱いていた。 
 
  ☆ 

「あいつらさ、いいよな」 
 マーキュリーの頭の下に差し込んだ腕枕の手で髪をなでる。 
「あいつら?ヴィーナスたち?」 
「そ、なんだかんだ言ってアイツら前線で一緒に闘えるじゃん? 
 一緒に最後を迎えることが出来るんだろうな、たぶん 
 でもあたしはきっと、最後をマーキュリーと同じ場所では迎えられないもん」 
「…何バカなこと…」 
 不安そうに抱かれた胸元から顔を見上げる。 
「でも事実だろ?ブレーンのマーキュリーは基地で指揮とってるだろうし――あたしはたぶんあいつらと最前線だ」 
「それは…この国が滅びるってことが前提の話よね?滅びるの?」 
 少し怒ったような顔で体を起こすとジュピターを睨みつける。 
 実は彼女があたしたちの中では一番強いんじゃないかと、時々感じる。 
 こんなに小さな体で彼女なりに限界まで頑張っているのを見ると、時々自分が情けなくなる。 
 ジっーと小柄で少し細過ぎるくらいの肩や腰、小ぶりの胸を備えた身体を見つめる。 
 こんな時なのにいつも見慣れている身体を、やっぱりキレイだなと思う。 
「ごめん…あたしが弱気になってちゃダメだよな」 
 フっと微笑むと素直に謝る。 
「あたし…がんばるよ、やっぱり大事なモノ守りたいから…あたしなら出来るハズだか  
「そうよ、それでこそあたしの……な…ジュピターよ」  
「ん?何?」  
「愛してる」 

 ――まだまだ死ねないな。 
 
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Date:2008/08/22
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