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□ 静留×なつき □

最後の記憶

ちょっとイタイです




「うちはなつきを愛してます」


 そう告げた瞬間・・・うちの中の何かが狂った。
 冷静沈着・眉目秀麗・学力優秀・品行方正と、周りの誰が見ても非の打ち所もない人間のように思われてきた・・・いや、そう思わせて来た藤乃静留という人間像は、この瞬間崩れ去った。
 でもそんなことはもうどうでもよかった。
 元々他人に慕われようと思っていたわけやない。
 尊敬や、ましてやライバルやなんて思てもらえるような人間でもない。
 勝手に騒ぎ立てる周りとの関係に、波風を立てるのが面倒やっただけや。
 情報収集に利用させて貰たけど、それくらいしてもバチは当たらんくらいの働きはしたつもりや。
 自分はうまくやれていると思っていた。
 なつきともうまくやっていけてる思ぅてた。
 あんな祭りさえなかったら・・・ずっと。

  ☆

「静留」
「ん?」
「すまない、実は・・・あの騒ぎでマンションがその・・・大破してしまって・・・」
「うん?」
「昨日は舞衣の部屋に泊めてもらったけど、あの部屋にいつまでもってわけにもいかないし、新しい家もまだ見つからないし・・・だなぁ、出来ればここに・・・」
 言いにくそうに言葉を濁すなつきの言葉を遮るように口を開く。
「堪忍なぁ」
 原因の一端を担っていることを自覚している静留は、しょんぼりと肩を落として小さな溜息をついた。
「ばかっそんなこと言ってるんじゃない!」
 ビクンっ
 なつきの剣幕に思わず静留の身体が強張り、小さく肩を竦める。

――イヤっ!!――

 フラッシュバックが静留を襲う。
 拒絶の言葉、なつきの声。
 思い出したくない記憶を振り払うように頭を抱えてその場にうずくまると、イヤイヤと振り乱す。
 静留の突然の奇行になつきは目を丸くする。
「おい!静留?」
「え?あ、はい?」
 我に返った静留は、何事もなかったかのように立ち返ると何とか笑う。
「大丈夫か?どうしたんだ?」
 眉を寄せて心配そうに覗き込む。
「あ、いえ、なんでもありまへん、堪忍」
「すまなかった大声出して、びっくりさせたな」
 そっと今度は驚かさないように微笑み、静留の頬を撫でようと手を伸ばす。
「あっ」
 だが、触れる寸前で静留はズサっと後ずさると、再び怯えたような不安そうな目でなつきを見つめる。
「静留?」
「あ・・・」
「や、やっぱり迷惑だよな、わたしなんかが転がりこんでは」
 少し、今度はなつきがしょんぼりと肩を落とす。
「や・・・そうやなくて・・・」
 慌てて否定はするが、続ける言葉が見つからずに俯く。
「そうやなくて?」
「なつきがその・・・イヤなんちゃうかなって」
「どうしてわたしが?イヤなら初めから頼みになんか来ないぞ?」
 きょとんと不思議そうに見上げる。
 すっかり忘れているのだろうか。
 静留がなつきに告げたこと・・・したことを。
 いくら蝕の祭りが終わり、平和が戻ったとはいえ静留がしたことは事実だ。
 それはこの先も変わる事はないし、消えることのない忌まわしい記憶だった。
 その記憶をなつきは失っているのだろうか?
「あ、いや、それやったらうちはえぇんやけど」
「ありがとう静留!」
 ふぅ~っと安堵の息をつくと、安心したのかなつきの肩から力がどっと抜けた。
 結局、何だかんだ言ってもなつきのそばにいたいという願望に、静留は負けた。

  ☆

「なつき、お風呂溜めたさかいに先入り」
「え?いいのか?」
「ん、うちまだ片付けもんあるさかいにどうぞ」
「わかった」
 なつきは着替えとタオルを片手に浴室に向かった。

  ☆

「あいつ・・・まだ気にしてるのかな・・・」
 湯船に浸かり、足を目一杯伸ばしながら視線を宙に泳がせる。
 なつき好みの温度・・・少し熱めのお湯が心地よく、ぼんやりしていると自然と思考がそこに戻って行く。
 あの事を覚えていないわけがない。
 いや、その行為の記憶自体は意識を失っていたのだから無くて当たり前なのだが、そんなことがあったと知った時の衝撃は忘れない。
 忘れられない。
 だけどその話をこれ以上蒸し返すつもりもないし、静留とこのまま友人ですらいられなくなるのもイヤだ。
「わがままだな・・・わたしは」
 パシャンと掬ったお湯で顔を洗うと、んっと伸びをする。
「さて、と」
 なつきは勢いよく立ち上がると踵を返した。



「なつきそっちのベッド使ってな」
 元々二人部屋だったのを一人で使用していた静留の隣には、使った気配の全くないままのベッドが置かれていた。
「あぁ、すまないな」
 なつきはスカイダイビングをするようにドサっと飛び込んだ。
「子供みたいなことしはるな」
 くすくす笑う静留はすっかりいつも通りだった。
 そう見えた。
「なぁ静留」
「ん?」
「もう寝るか」
「せやね、もう遅い時間やさかいにね。なつき明日補習?」
「あぁ」
 イヤなことを思い出さされたというように、憮然と短く答える。
「なつきやったら出席さえしたら大丈夫やろ?」
「まぁな」
 めんどくさそうに答える。
 そもそも成績優秀ななつきの補習の原因はただの出席日数不足なのだから、それさえクリアしたら無事進級出来るだろう。
「ほな・・・消しますね」
「ん」



 目を閉じ、早く眠ってしまおうと意識すればするほどなつきの姿が瞼の裏にちらつき、眠れなかった。
 眠れるわけがなかった。
 一方的とはいえ、一度は抱いたことのあるその身体。
 そのなつきが何を思ってか自分の元に転がり込んで来た。
 思いもかけない事態に動揺はしたものの、やはりなつきの顔を見られることは嬉しかった。
 が、その反面それは静留にとって生き地獄でもあった。
 葛藤が続く。
 小さな溜息が漏れる。
「静留、起きてるか?」
 タイミングを見計らったかのようななつきの声に、一瞬ドキンと胸が高鳴る。
「ん?」
「すまなかったな」
 思いがけない言葉。
「何が?」
 ゆっくりとなつきの方に寝返りと打つと、すでになつきがこちらを向いて自分を見つめていたことに驚き、動揺する。
「どないしたん?なつき」
 何でもないように、努めて冷静なフリをして答える。
「いや、本当は迷惑だったんじゃないかなって思ってな」
「そないなことあらへんよ」
 ふわりと微笑む。
「うちにも責任あるさかいに」
「それはもういいんだ!何度言わせる?」
 少しだけ語気が荒くなる。
「でも・・・」
「お前がわたしをここに置いてくれるのは、責任を感じているからだけか?」
「え?」
「お前はわたしをその・・・」
 言い慣れない言葉のせいか、言いにくそうに言葉を濁す。
「うちはなつきを・・・」
 「愛してます」という言葉を飲み込むと、静留は逃げるようにごそごそと背を向けて、飲み込んだ言葉とは違う言葉を吐き出した。
「・・・はよぅ寝んと、明日遅刻しますぇ」
 だがそんな静留の努力を無にするかのように、なつきがとんでもないことを言い出した。
「なぁ、そっち行っていいか?」
「え?」
 返事をするより前に、ごそごそとなつきがベッドを這い出る音がする。
 ドクンドクンと早鐘を打ち始める心臓。
 掛け布団がめくられる気配。
 なつきが潜り込もうとした瞬間、静留はガバっと起き上がる。
「あかん!なつき」
 ドンと突き飛ばす。
「うわっ、たっ、たっ」
 思わぬ反撃にバランスを崩したなつきは、ベッドの向こう側に落ちそうになる。
 慌てて手を伸ばすと、寸でのところでなつきの手首を捕まえることが出来た。
「え?」
 だが今度は引っ張ったその勢いでドサっと静留の身体にのしかかるように倒れ込んでしまった。
「わ、す、すまない!」
「ん、大丈夫。堪忍な」
 恥ずかしそうに慌てて起き上がると二人は沈黙した。
「悪かった、戻るよ」
 なつきは気まずい空気を打ち破るようにぽりぽりと頭を掻くと、自分のベッドに戻った。
「おやすみ、静留」
 久しぶりに見た至近距離でのなつきの顔。
 感じた吐息。
 暴走しそうになる自分を無理矢理押さえ込むと一言告げた。
「・・・おやすみ」
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Date:2008/08/25
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