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□ 静留×なつき □

手をつなごう2

2話めー




「なつきーいるの?」
 マンションのドアの前で、中になつきが居ると信じている舞衣と命が中に向かって声をかけていた。
「・・・」
「いるんでしょう?どうしたのよ」
 舞衣・・・。
「なぁー舞衣―なつきいないのか?」
「いると思うんだけどねぇ、静留さんと何かあったのかな」
 ――静留さん・・・舞衣もそう呼ぶ。
 高等部にいた頃、あいつは“会長さん”とか“藤乃会長”とか“藤乃先輩”とか“静留さん”とか“藤乃さん”とか呼ばれてて、あいつを呼び捨てにしてたのはわたしくらいだったハズだ・・・例外もいるけど。
 例外というのは、“ぶぶ漬け女”と呼ぶ遥と、“藤乃”と呼ぶ奈緒や誰でも呼び捨てにする命のことだ。
「しょうがないなぁ、また後で来てみようか、命」
「ん」
 今は誰にも会いたくない。
 このまま放っておけば帰るだろう。
 放っておけば・・・。
 カチャリ
 気づいたらなつきは自らドアを開けていた。
 自分でもよくわからなかった。
「え?」
「あ、なつきだ!」
「何だ、やっぱりいるんじゃない。出なさいよねー」
 んっと差し出された手にはなつきのカバンが握られていた。
「なつき学校戻らないで何してたのよ?」
「別に・・・」
 暗い顔でそれだけ呟くと俯き、続きを我慢強く待つ舞衣の期待を裏切るように黙り込んでしまった。
 たっぷり10秒は待った。
「なつき?何かあった?」
「え?」
「学校に戻って来ないし、放課後になっても静留さん姿見せないし、二人でどこかでかけちゃったのかと思ったけど、そんなこと静留さんがさせるわけないし・・・」
「・・・」
 黙りこむなつきの様子をただごとじゃないなと察した舞衣は、相変わらずそばにくっついている命に向き直る。
「命、ごめんね、ちょっと先帰っててくれるかな?」
「どうした?舞衣」
「ちょっとね・・・帰ったら命の好きなラーメンたっくさん作ってあげるからさ、ね?」
「ん!わかったぞ!じゃあわたしは奈緒と遊んでくる!」
 ダっと駆け出す命に舞衣は
「気をつけるのよー!」
 と、これまたまるで母親のように声をかける。
 そして今度はなつきに向き直り、ドアに手をかけた。
「じゃあお邪魔しまーす」
「え?あ、ちょ、おい!?」
 二人のやりとりに取り残され、呆然と佇んでいたなつきがやっと我に返った時には、すでに舞衣はリビングにいた。
「うっわー散らかってるわね相変わらず」
 げんなりしたように首を竦めると、とりあえず自分の居場所を確保しようとその辺のものをどかす。
 唯一のスペースであるソファに座ると、舞衣はまだ立ち尽くしているなつきを見上げた。
「で?何?」
「何って・・・」
「行ったんでしょ?大学に」
「・・・あぁ」
「いたの?」
「・・・いた」
「で?何で元気ないのよ?」
 そこでやはり黙り込んでしまうなつき。
 辛抱強く待つ決心をした舞衣は、じっとなつきの様子を観察した。
 何から口に出していいやらわからずにいるような、思っていることを口に出していいのだろうか・・・そういうことで悩んでいるような気がする。
「なつき?」
 促す。
「浮気でもしてた?」
 ありえない仮定話を持ち出してみた。
「そんなんじゃない!!」
 だが、思いの他過剰な反応に、口に出した舞衣が驚いた。
「・・・マジ?」
「静留に・・・友人ができるのはいいことだ」
「え?」
「あいつはいつも取巻きに囲まれて、後輩に慕われて、同級生にまで尊敬とかされて、教師たちも一目置くくらいだった。あいつの周りにはいつもたくさんの人がいたんだ」
「そうねぇ、ただ本人がそれを望んでいたかは別だけどね」
「それはそうだが・・・でもどれだけ人がいても、その中の誰一人として静留のことを呼び捨てにできるヤツなんていなかった」
 黙って先を促す。
 なんとなくなつきの言いたいことがわかってきた。
「多分風華から上がったヤツは静留のことあんな風には呼ばない・・・だから外から来たヤツだと思う」
「ん」
「静留はさ、あんなに人当たりいいように見えてあんまり本音を言わないから、時々近寄りがたい雰囲気になるんだ。でもそんな静留の隣にアイツはいとも簡単に座ってた。静留って呼んでた・・・静留も笑ってた」
「なつき、悔しかったんだ?」
「悔し・・・え?」
「静留さんの隣は自分の居場所だって・・・“あの”静留さんを呼び捨てにできるのは自分だけだって思ってたから」
「・・・そう・・・なのか?」
「あたしに聞かないでよ」
 呆れたように小さなため息をつくと、舞衣はツンっとなつきのおでこを人差指で突いた。
「でもさ、あたしだってなつきのこと呼び捨てにするし、腕とか組んじゃったりしたし、いつもランチ一緒にするじゃない?静留さんだって寂しかったんじゃないのかな?なつき態度冷たいしぃ」
「でも・・・」
「なつきが大学に行って、自分とは違う世界にいる静留さんを見て寂しくなったのと同じだと思うよ。静留さんだってあたしたちと楽しく高校生活送ってるなつきとは違う世界にいるって思うと寂しいのかもよ?だからしょっちゅう会いに来て、二人の間にある足りない時間の溝を埋めようとしてるんじゃない?いつもあんな風に笑ってるけど、静留さんも顔に出さないからさ」
「わたしは・・・どうしたらいい?」
「どうしたらって・・・あんたねぇ子供じゃないんだから・・・って子供よりタチ悪いか」
 やれやれと呆れたように首を振る。
「・・・」
「走れ!なつき!」
 バンっと舞衣の手が背中を思いっきりはたいた。
「痛っ!!!」
 だがその力強い手はいつもなつきの背中を押してくれる。
 気がついたら走っていた。
 駐車場に止めてあるドゥカティにまたがると、エンジンをかけ、暖気運転など待てないというようにエンジンを1,2度吹かすと発進させた。
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Date:2008/08/25
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