Planetarium SS置き場

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□ 静留×なつき □

止まり木

まだ舞衣たちが転校してくる前の話。
なつきにとって静留しかいなかった頃の話。
なつきが安らげる唯一の場所。
でも静留にとっては苦しくて、でも幸せな空間。
そんな二人の話。






 ガタン ドンっ
「・・・何やろ?」
 すでに夜中・・・と呼ぶにふさわしい時間に突如響いた激しい物音に驚いて振り返る。
 何となく寝付けずにいた静留は、することも思いつかなかったので、机に向かって明日の授業の準備をしていたところだった。
 警備厳重な女子寮だけに侵入者などの心配はないとは思うのだが、ここのところ奇妙な事件が続いているだけに油断は出来ない。
 細く物音の正体を確かめるように扉を開け・・・開けようと押してみるが何かに押さえられているのか扉が妙に重い。
「何やのん?」
 グっと力を込める。
「ん・・・」
 うめき声と共にドサっと何かが倒れてきたかと思うと、扉の前を塞いだ。
 一瞬でその正体に気づいた静留は思わず悲鳴のような声をあげてしまう。
「なつき!!!」
 ライダースーツ姿のなつきが、息も絶え絶えに床に横たわっていた。
 自分の体が通るくらいの隙間を作ると、そこが廊下だと言うことも忘れて
 慌ててなつきのそばにしゃがみこんで体を抱き起こした。
 静留の悲鳴を聞きつけてか何人かが扉を開けて出てくる気配を察知した静留は、無理矢理なつきを自分の部屋に担ぎ込んだ。

  ☆

「なつき・・・あんた何でこない傷だらけなってんの?あんた一体何してんの?」
 窮屈なライダースーツを何とか脱がせ、Tシャツに下着姿のままのなつきを自分のベッドに寝かすと、なつきの体を濡れたタオルでふき取ってやる。
 苦しそうに眉を寄せ、小さく呻くなつきの意識はまだ戻っていなかった。
「こないキレイな体してんのに、アザだらけなって・・・」
 そっとなつきの露になった腕や腿に、愛おしそうに一つ一つ傷やアザを確認するかのように指を這わす。
 もう随分前から気がついていた・・・自分の気持ちに。
 なつきの全部が欲しい・・・心も・・・身体も。
 うちが抱いてるのは邪な想い・・・そんなんわかってる。
 でも止まらへん。
 止められへん・・・。
 なつきを抱かれへん代わりに、気持ちも入ってへんのに他の子の身体を貪ることもある。
 そうすることで自分の醜い欲を解消するかのように・・・。
 だがいくら抱いても解消どころか、そのたびに一つずつ心に深い傷が刻まれて行くのがわかる。そないな自分が汚れてると思うし、そんな自分がなつきを想うことなんか許されへんとも思う。・・・自分を汚すことで・・・傷つけることでなつきを諦めようとしてたんかもしれへん。
 だが日に日に募る想いは留まることを知らなかった。
 うちは「親友」、「えぇ先輩」・・・なつきにとってそないな存在であらなあかん。
 それが出来へんようなったら、うちはもうなつきのそばにおれんようになる。
 なつきのそばにおれんようになるくらいやったらナンボでもガマンするけど・・・。
「こない無防備になられたら・・・うちガマン出来へんよぅなるやん・・・なつきのいけず」
 なつきの手を取ると、静留はそっと甲に唇を寄せる。
 愛おしそうにそっと触れた。
 これくらいなら許されるだろう・・・許して欲しいと願うように。

  ☆

「・・・ん」
 目を開けると、目の前には見慣れない白い天井が広がっていた。
「・・・どこ?」
「起きたん?」
「え?」
 声のした方に視線を向けると、静留がいつものように穏やかに微笑んでいた。
「しず・・・る?」
 どうして静留が?ここは・・・静留の部屋か?
「なつきうちの部屋の前で倒れてたんぇ?覚えてへんの?」
「うん・・・すまない」
 正直全く覚えていなかった。
 敵にやられた傷を負ったままバイクに乗り込んだところまでは覚えていたが、その後どこをどうやって帰って来たのか全く記憶がなかった。
 体を起こそうと力を入れるが、瞬間、鈍い痛みが体中を駆け抜けた。
「あいっ・・・たぁ・・」
「無理したらあきません、そないアザだらけにしてからに。もうちょい寝とき」
「でも・・・」
「それやしなつき、そないな格好で帰るわけにはいきませんやろ?」
「は?」
 なつきは静留の視線を追って自分の体を見下ろす。
「わぁぁぁっな、な、何だ?わたしの服!」
 ガバっとシーツをかき集めて下着姿の体を隠すと、顔を真っ赤に上気させてキョロキョロと部屋を見回した。
「ライダースーツは流石に脱がせんとしんどいですやろ?あそこにちゃんと拭いてかけてありますさかい」
 壁にはハンガーに吊るされたライダースーツがかかっていた。
 ドロドロだったはずのソレは、すっかりキレイになっていた。
「あぁ・・・ありがとう・・・」
 言いつつもまだ真っ赤になったままなつきは膝に顔を埋めてしまう。
「なぁなつき?」
 静留の手がなつきの頭を、母親が子供をあやすように優しく撫でる。
「なつき何してんの?何でこない傷だらけ、アザだらけになってんの?」
「・・・」
「なつき?」
 顔を伏せたままなつきはイヤイヤをするように首を小さく振ると
「なんでもない」
 とだけ言った。
 静留には言えない。
 いつも生徒会の仕事とか色々忙しいのに、わたしのことなんかで迷惑をかけたくない。
 今、現在迷惑をかけているのはわかっている。
 それでも静留をこの件には巻き込みたくはない。
 そんな矛盾した自分の気持ちと行動に、なつきの心のもやもやは晴れることはない。
「お前は・・・巻き込みたくはない」
 結局それだけしか言えず、なつきは再び黙り込んでしまう。
 ふぅっという小さなため息が聞こえる。
 あっ・・・怒ったかな?
 なつきは恐る恐る顔を上げた。
 静留はいなかった。
 突如襲った不安に、なつきは求めるように名を呼んだ。
「静留?」
「ん?」
 キッチンからひょいっと顔を覗かせた静留は、こっちが拍子抜けするくらいいつものように微笑んでいた。
「あ、いや・・・なんでもない、すまない」
「なつきちゃんと食べてるん?またヘンなモン食べてるんと違うん?ちょっと食べていき、もう用意できますさかいに」
「あ、でも・・・」
 お盆に乗せられたご飯や煮物に味噌汁がなつきの鼻腔をくすぐる。
 ぐぅぅぅ~きゅるる
 なつきの腹の虫が素直に反応する。
「ほら、お腹は正直やねぇ」
 くすくすと笑う静留は、ベッドの横に運ばれた小さな座卓テーブルにお盆を乗せた。
「あ、ありがとう」

  ☆

「おいしい?なつき」
「ん?あぁ」
 貪るように食べるなつきを見ていると、普段キチンと食べていないであろうことが一目瞭然だ。
 だが、なつきには食事を作って待ってくれている親がすでにいない。
 かといって自分で作って食べようという気などさらさら無いようだし・・・そもそも料理など出来ないだろう。
 なつきの唯一苦手な科目は「家庭科」だ。
「ちゃんと食べなあきまへんぇ?」
「めんどくさい」
「たまには作ってあげますさかい、うちに食べにおいで?な?」
 親友のポジションを利用した言葉に、なつきの耳がピンと反応する。
「・・・いいのか?」
「当たり前です」
「・・・時々な」
 真っ赤にした顔を隠すように、ガツガツをご飯を掻き込むなつきがかわいらしくて、思わず静留の頬が緩む。
 時々でも何でもえぇ、なつきと一緒におれる時間がちょっとでも増えるんやったら。
 なつきは何も疑ってへん・・・うちがどないな想い抱いてるかなんて夢にも思ってへんやろ。それでえぇ。
 そう思わせてたらえぇ。
 なつきと一緒におれるんやったら自分の欲くらい押さえこんでもえぇ。
 なつきと会われへんようなるくらいやったら、死んだほうがよっぽどマシや。
 自分が傷つくことなんかこれっぽっちも怖くない。
 自分押さえこむのは慣れてるさかいに・・・。
 ・・・うちの表の顔は嘘ばっかりや。
 静留は、自分の中で蠢く黒い影の正体に薄々気がついていた。

 『鬼』

 日に日に大きくなっていく黒い影を静留は無理矢理押さえ込んでいた。
 いつか暴れだしそうな、そんな予感を心の奥にしまいこむと
「いつでもどうぞ」
 ニッコリと、表の顔で笑った。

  ☆

「今日は泊まっていきますか?なつき」
 問われて一瞬躊躇した。
 自分でも驚いていた。
 思いがけず落ち着いてしまっている自分に。
 久しぶりに笑った気がする。
 泊まってもいいかなと思わせる雰囲気に流されそうになる、だが・・・
「いや、帰るよ」
 なつきの口から出た言葉は気持ちとは裏腹な言葉だった。
 一瞬かいま見えた静留のガッカリしたような表情に、チクンと胸が痛む。
「すまなかった、静留」
「ん?何が?」
「・・・いや、色々と」
「うちはなつきの為やったら何でもしますぇ」
「ばっ、な、何を言うんだ!」
 本気なのか冗談なのか、静留はいつもこういう事を笑顔でサラっと言う。
 嬉しいとは思うが、それに甘えるわけにはいかない。
 わたしの唯一と言っていいであろう友人と呼べる相手であっても、言えることと言えないことがある。大切な友人であるが故に言えないこともある。
 それでも・・・それなのにわたしはどうしてここに来てしまうんだろう。
 甘えてはいけないと思っているのに。
 どうして静留なんだろう・・・。
 自問自答するが、答えはいつも見つからない。
 ただ、ここが居心地のいい場所であることは間違いない。
 静留のそばが・・・。
「ありがとう、静留」

  ☆

 出て行ったなつきの背中を見送ると、静留は先ほどまでなつきが寝ていたベッドに腰かける。愛おしそうにぬくもりを感じるように何度も何度もなつきの跡を撫でる。
「なつき」
 愛しい人の名を呼ぶ。
 泊まっていくかという問いになつきは一瞬動揺しとった。
 うちかて実際うんってゆわれたらどうしていいんかわからんかったやろう。
 なつきがうんってゆわへんのわかってて問うてみた。
 なつきは決して心開いてくれへん。
 なつきが開いてくれへんところに土足で踏み込むわけにはいかへん。
 多分、あの子の一番近くにおる友人はうちやと思ってる・・・思いたい。
 それでもただそれだけ・・・や。
 どんだけ望んでもうちのモンにはならん。
 それでもそばにおりたい。
「なつき・・・なつき・・・うちはあんたを・・・」

 愛してます・・・。
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Date:2008/08/25
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