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□ 静留×なつき □

幸運

なつき誕生日話です
あたしの萌えポイントは通い妻なので合鍵の話。



「どないしょ・・・うちとしたことがウカツやったわぁ」
 静留は珍しく眉間を人差し指で押さえて悩んでいた。
 正直、静留にとって最悪の失態であろう事態が、今現在発生していたのだ。
 実家に帰省していた静留は、帰って来るなり壁のカレンダーに目を向けると愕然とした。
「8月15日・・・なつきの誕生日を忘れるやなんて・・・ナンボ忙しいゆぅてもそれはあきませんやろ」
 自分の愚かさに自らツッコミを入れる静留。
 カレンダーの15の部分には大きな花丸がついていた。
 なつき自身は自分の誕生日などどうでもいいという種類の人間なので、一緒にいてもそんな話はしない。
 なつきと一緒に遊びに行ったり宿題見てあげたり電話したりとほとんど毎日一緒にいたにも関わらず、楽しさに忙殺されてその話題になるヒマがなかったのだ。
 いや、それは言い訳やわ。
「どないしょ」
 時計を見上げた静留は受話器を上げた。
 なつきの誕生日を迎えるまで1時間を切っていた。

  ☆

 何度かコール音が聞こえると、はいっと何だか眠そうな声が答える。
「なつき?もう寝てたん?」
「ん?静留か?あぁいや・・・ちょっとウトウトしてただけだ。どうしたんだ?こんな時間に」
「ん?ちょおなつきの声が聞きとぉなってなぁ、起こしてしもて堪忍なぁ」
「いや、いいんだ、わたしも丁度目が覚めたところだったしな、アレ?今は実家からか?」
「いいえ、今こっち帰ってきましたんよ。それよりなつき、ちゃんと寝る時はベッド入らなあきまへんぇ。クーラーつけっぱなしで寝てへん?夏やかて風邪ひくんやから気ぃつけなあかんよ」
「わかってる!」
 ほなねっとこれ以上睡眠を妨げるのも悪いし、明日会いに行くんやからいいかなと受話器を置きかけたその時だ。
「しっ、静留!」
「はい?」
 未練を残しつつも置きかけた受話器を、素早く耳元に戻す。
「あの・・・今からそっち行っちゃダメか?」
「今から・・・どすか?」
 意外な発言に静留が驚いた。
 うちが言いたかった言葉やったのに、なつきに先ゆわれてしもたわ。
「え?でももう遅い時間やで?」
 心にもない言葉。
 ホンマは会いたくて会いたくて、会いに来てくれるゆーのが嬉しくてしょぉないクセに
 ちょっと心配する素振り見せてみたり・・・ホンマうちは素直やないわぁ。
「・・・迷惑・・・か?」
 少しだけなつきの声がしょんぼりとスネたような口調に変わった。
 あぁっアカン!なつきしょんぼりしてしもてるわ!
 そないななつき、想像しただけでかいらしいけどっっ、でもアカン!
 受話器越しのなつきの姿・・・しょぼ~んとわんこの耳を垂らしてスネるなつきの姿を想像して悶絶しそうになるが、何とか気を静めて努めて冷静に答えた。
「そんなわけありまへん!堪忍な、なつき。うちも会いたいわ。でも大丈夫?」
「バイクですぐだから・・・じゃあ行くからな」
「お土産用意して待っとります」
「ん」

  ☆

 なつきの言った通り、本当にすぐにバイクのエンジン音が遠くから聞こえはじめた。
 最近静留は、なつきのバイクの音が聞き分けられるようになっていたので間違いない。
 あぁ、今頃なつきエレベーターかな。
 もうすぐ上がってくるかな。
 中で階数表示見上げてる頃やね。
 今、廊下歩いてる頃やわきっと。
 ほら、もう鳴るわ。

 ――ぴんぽーん

 ドンピシャのタイミングで鳴るインターフォン・・・と、同時に待ってましたとばかりにドアを開ける。
「おこしやす、なつき」
「うわっ、は、早いな!」
 あまりのタイミングの良さに、目を丸くして仰け反るなつき。
「ふふっ、愛の力どす」
「ば、ばかっっっこんなところで何を言ってるんだ!」
「堪忍な、入って」
「あぁ、お邪魔します」
 静留がなつきの家に行く時は、「ただいま」と言って入るのに対して
 なつきは今でも静留の家に来る時は「お邪魔します」だった。
 それほどまでに静留がなつきの家に通っている頻度が高いということだろう。
「何だか久しぶり・・・だな」
 なつきはソファに腰かけると、うーんと大きな伸びをした。
「せやねぇ。なつきあんまし来ぇへんもんねぇ」
 かつて、マンションが破壊され、行くところのなかったなつきが数日いたことはある。
 ケガをしてふらりとやってきたこともある。
 なつきの手当てをしながら、何も出来ない自分がもどかしくて泣きそうになった。
 なつきのことが誰よりも大事やのに伝えられへん想いが苦しかった。
 この部屋で二人で過ごした時間に、あまりいい思い出はなかったかもしれない・・・。
 コポコポと冷たい麦茶を入れると差し出した。
 夜は涼しいとはいえ真夏だ、汗もかくというものだ。
 なつきは暑そうに髪をかきあげると、ゴキュゴキュと麦茶を一気に飲み干した。
「ぷはぁ~おいしい!」
「おかわりいります?」
「いや、いい、ごちそうさま」
 コトンとテーブルにグラスを置く。
「それにしてもどないしたん?なつきが来たい言うやなんて珍しいやない」
 さりげなくなつきの隣に座ると、静留は自分の分のお茶を口にする。
「そうか?・・・なんとなく・・・な」
「嬉しいわぁ」
 グラスをテーブルに置くと静留はなつきの肩に頭を乗せて、甘えるようにそう言う。
「あ、うっ・・・」
 モジモジと手を握り締めたり開いたりグーパーを繰り返し、軽く貧乏揺すりまで始めてしまうなつきに、静留は怪訝な顔で問う。
「どないしたん?」
「え、あ、いや、な、なんでもないぞ、何でも」
 目が泳いでいる。
「なつき?」
 なつきの体をグイっと自分の方に向けて、頬を両手で包み込んだ。
「どないしはったん?言いたいことあったら言うてみ?」
「あ・・・えっとその・・・」
 チラリと壁の時計に視線を送るなつき。
 静留もつられてそちらに目を向けた瞬間、カチっと長針と短針と秒針がキッチリ12の所で揃った。
「あっ・・・」
「・・・!?」
「なつき、誕生日おめでとう」
「え?」
「今15日になったわ、なつきの誕生日」
「・・・覚えてたのか」
 ぱぁっと嬉しそうに満面の笑顔でそう言われて、さっき思い出したということを静留は言い出せずにいた。
 もうこの際黙ってたほうがええやろうね。
 なつきの後ろで尻尾がえらい嬉しそうに高速回転しとるんやもん・・・そんななつきに悩殺寸前、くらくらと眩暈を起こしそうになるのを静留は何とかこらえる。
「当たり前どす」
 ニッコリとそんな動揺をおくびにも出さずそう答えると、キュっとなつきの体を抱きしめた。
「ホンマはな、電話した時うちが会いに行ってもえぇ?って聞こうとしてたんよ。でもなつき眠そうやし明日にしよか思ってたら先に言われてしもたさかいに甘えてしもた」
「そっか、そうだったのか」
「ん、堪忍な」
 よしよしっとなつきの頭を撫でると、静留はとびきりの笑顔を送った。
「ありがとう静留」
「こっちこそやわ、なつき・・・産まれてきてくれておおきにね」
「え?」
 一瞬何を言われているのかわからなかったのか、なつきがキョトンと静留を見あげる。
「なつきがこの世に生を受けてくれたからうちはなつきに会えた・・・なつきに出会えたことがうちの人生最大の幸運やさかい、なつき・・・産まれてきてくれておおきにね」
 チュっと頬に額に、鼻の頭にと何度もキスを送る。
 目を閉じて、頬を紅潮させ、気持ち良さそうに甘んじて受け入れる。
 静留のキスはいつも気持ちいいなと、フワフワと体が浮くような感覚に襲われながら思う。なつきはキスの嵐が一瞬止まった瞬間、タイミングを見計らって静留の胸に飛び込んだ。
 しがみつくように服を掴み、俯きながら肩を震わせる。
「どないしたん?なつき」
 心配そうに眉間にシワを寄せ、ぽんぽんと背中をさすりながら優しく耳元で囁く。
「嬉しい・・・静留にそう言ってもらえてすごく嬉しい」
「そうなん?」
 なつきはぎゅっと握り締めた拳を震わせると
「わたしは、わたしのこのHiMEの力がなければ母さんを亡くさなくて済んだのかもしれないし、父親も出て行くなんてことなかったかもしれない・・・わたしのせいだって思ってた頃もあったし、産まれてこない方がよかったのかも・・・とか何度も思った・・・でも、産まれてきてよかった・・・静留に出会えてよかった・・・すごく嬉しい・・・産んでくれた母さんに感謝しなきゃな」
 言って、ぐすっと鼻をすするとなつきはゆっくりと顔を上げた。
「珍しくさっき、自分の誕生日が明日だと気づいてしまったんだ・・・いつもなら全く興味なんかないのに、なんとなく思い出してしまった・・・そしたら無性に一人でいることが寂しくて寂しくて・・・静留に会いたくなった。そしたらお前から電話がかかってきたからビックリしたんだ」
 なつきかいらしい!
 もうこないに可愛いらしいなつきほっとかれへんわ!
「電話くれてありがとう静留」
 目ぇウルウルさせてもうて、この子はホンマに・・・。
 気づいたら再び力一杯なつきの体を抱きしめていた静留。
「痛い!静留痛い!」
「・・・」
「し、静留?」
 少しだけ力の抜けた静留の腕から逃れたなつきは、ふと見上げた。
「ホンマにあんたはもう・・・いっつもうちのツボ突いてきよるなぁ」
 言った瞬間、そっと今度はなつきの唇にキスを送ると、息が苦しくなるほど長い時間静留は塞ぎ続けた。
「ん・・・んんっ」
 手をジタバタさせて暴れはじめたなつき。
 どれくらい時間が経ったのか、やっとのことで解放されたなつきは、ハァハァと肩で呼吸を整える。
 そんななつきを他所に、どんな肺活量をしているのか静留は平然と問う。
「なつき、プレゼントは何がえぇ?」
 まだ少し呼吸を整えているなつきは、
「いら・・・ない・・・」
 と言ってブンブンと首を振る。
「そないなわけにはいきまへん、何でも言うておくれやす」
「・・・」
「何か欲しいモンあります?サービスしますぇ?」
 ぽんぽんっと頭を撫でて問う静留。
 頬を真っ赤に染めたなつきがポツリと一言。
「鍵が欲しい」
「鍵?何の?」
「ここの・・・わたしも「ただいま」って言えるようになりたいから・・・」
 目を丸くして黙り込む静留に、なつきは慌てて言い直す。
「あ、いや、し、静留がよければでいいんだ!イヤならいいぞ、うん」
 静留は黙って立ち上がると玄関に向かい、鍵の束を持ってきた。
 かちゃかちゃと束からひとつの鍵を外す。
「はい、どうぞ」
「・・・え?」
「え?ってこれが欲しいんやろ?明日一緒にこれに合うキーホルダー探しに行きましょな」
「え、でも静留のは?」
「合鍵ありますさかい大丈夫」
「でもこれは本キーだろう?」
「せやからなつきにもろて欲しいんどす」
 ニッコリと微笑む静留。
 ふっとなつきもつられて嬉しそうに微笑む。
「ありがとう、貰っておく」

  ☆

 翌日、なつきの腰に他の鍵とは分けられて、大事そうに薄い紫色のリボンに括られている一本の鍵がぶら下がっていた。
 静留の鍵には蒼いリボンが・・・二人の絆のように固く結ばれていた。
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Date:2008/08/24
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