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□ 静留×なつき □

笑顔3

もいっちょ




 最高学年に上がり、すでにその部屋の主となった静留は、自分を慕って近づいてくる後輩達の相手に興じていた。
 決して本気にはならないし、彼女達も薄々それは感じているだろう。
 それでも良いからと、静留のそばには常に数人の取り巻き達がいた。
 気が向くと静留はそのうちの一人を抱きしめてみたりして心も体も弄ぶ。
 従順な良い子だと思っていた子から遠まわしにキスを強請られ、それに対して何の感情もわいて来ることはなかったが、欲のままにそれに答える静留。
 誰でもよかった・・・。
 彼女が卒業してから、いつの間にか静留はまた元のように笑えなくなっていた。
 母親を亡くした直後の静留に戻っていた。
 相変わらず人受けのする笑顔は得意だったが・・・。

 ――彼女とは卒業以来一度も会うことはなかった――

  ☆

 そして記憶が風化を始めた頃、不意に彼女の言った通りの出会いを静留は経験した。
 『玖我なつき』
 それが彼女の名前だった。
 静留が中等部3年の頃に入学してきた彼女の噂は色々と聞こえてきていたし、時折一人でどこか遠くを見つめるような、寂しそうな瞳で佇んでいたところも何度か見かけることがある。
 そんな彼女にやっと話しかけることが出来たのは、静留が高等部に上がってからだった。
 わざと人を遠ざけようとするような鋭い声と、まっすぐ人を射抜くような瞳で睨まれた瞬間、静留の全身に衝撃が走った。
 そんなそぶりはおくびにも出さなかったけれど、静留の心もまた・・・揺れていた。

  ☆

 会うたびに気になっていく。
 会えないと会いたくなる。
 もっともっとなつきのことを知りたくなる。
 なつきを独り占めしたい。
 自我を失ってしまいそうになるのを必死で堪える。
 触れたくて抱きしめたくて・・・でもその感情を抑えて抑えて抑えて抑えて・・・。
 今まで誰に触れるのにもこんなに躊躇したことはなかった。
 来る者はよほどでない限り拒むことはなかったし、逆に去る者も追わなかった。
 どちらでもよかったから・・・寄ってくる人間など掃いて捨てるほどいる。
 そんな風にしか人のことを想えなかった。
 そんな自分がなつきに対しては慎重にならざるを得なかったのだ。
 簡単には踏み込ませてくれない、誰をも寄せ付けない尖った心。
 それでもいつかは心を開いてくれるかもしれないという淡い期待。
 そうやって少しずつ少しずつ努力をして縮めていった心の距離。
 これほどまでに一人の人間に固執するなど、今までの自分からは考えられなかった。
 その甲斐あってかなつきは少しずつ心を開いてくれるようになったように思う。
 だが、一歩づつ縮んでいく距離とはうらはらに、静留の心には不安が渦巻き始めていた。

 ――なつきのことが愛しい――

 その感情が恋愛のそれだということを自覚した時にはすでに、なつきは静留の一番近い人になっていた。
 そして想いの種類は違えど、なつきにとっての静留もまた一番近い人になっていた。

  ☆

 意地っ張りのくせに寂しがり屋で、尖ったナイフのようにささくれだった心とうらはらに
実は誰よりも普通の女の子らしさをちゃんと持っている照れ屋な彼女。
 表情や仕草やクセ・・・なつきのことを一つ知るごとにうれしくなる。
 自分にしか見せない姿なのだろうなと思うと、嬉しくて仕方がない。
 彼女といると、彼女を見ているだけで自然に笑みがこぼれる。
 そんな時にあの祭。
 聞かされた衝撃の真実に静留の中で何かがハジけた。
 初めてだった・・・自分の命を捨ててでも誰かを守りたいと思うことなど。
 それほどの激しい感情が自分の中に存在するなんて想像もしていなかった。
 なつきの為ならば自分の手を血で染めることなど雑作もない。
 自分がどれだけ傷つこうとかまわなかった。
 なつきを傷つけるモンは許さへん・・・全部排除したる・・・と、本気でそう思ぅてた。
 そうすることでなつきを守れると信じていた。
 今思えばどこか少し狂っていたのだろう。
 誰よりも何よりも大切な相手の為に。
 自分の醜いところも汚いところも全てをさらけ出してしまったというのに、それでも丸ごと受け止めてくれようと勝ち目のない戦いを挑んできて、そして静留と共に消滅することを選んだなつき。
 静留は初めてあの頃自分に想いを寄せていた彼女の気持ちがわかった気がする。
 なつきがまだ静留の気持ちに気づいてない頃、必死で抑えていた想いをどこにも吐き出せずにいたあの頃。
 彼女もまた自分に対して同じような想いを抱いていたのだろうかと思うと胸が痛くなる。
「でもうちは会長はんのようには思われへんわ・・・そんなに大人にはなれまへんわ」
 好きなコの幸せのためやったらそのコの想う相手がどんな人でも祝福する・・・うちは絶対そんなんゆわれへん・・・なつきがうちのそばにおれへんことなんかあって欲しくない。
 なつきが誰かのこと想ってるとこなんか絶対見たくない・・・そんなん見るくらいやったら死んだ方がマシや。
 祝福なんか絶対出来へん。
 絶対イヤや。
 考えるだけでも、それは恐怖だった。
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Date:2008/08/23
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