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□ 静留×なつき □

手錠3

もいっちょ



 ピンポーン
 反応はない。
「静留」
 そっと名前を呼んでみる。
 隣近所のことがあるのであまり大声が出せないのがもどかしい。
 ドンドンドン
 拳でドアを叩く。
 何度も何度も。
「静留、いるんだろう?開けてくれ」
 カタン
 かすかだが中から物音がする。
 なつきはそっとドアに耳を当てると、物音の正体を見極めようと神経を集中させる。
 息を潜めてはいるが、気配はする。
 静留は中にいる!
「静留、開けてくれ」
 そう静かに告げると、やっとのことで細くドアが開いた。
 かかったままのチェーンが、まだなつきを拒否しているかのようで胸が痛む。
「静留!」
「・・・なつき?」
「話があるんだ」
「ん・・・」
 どこか憔悴しきった目の静留。
 あの戦いの時に何度か目にしたあの瞳。
 ゆっくりとチェーンが外され、やっとなつきを向かえ入れてくれた。

  ☆

「静留・・・すまなかった」
 なつきはソファに腰かけるとガバっと頭を下げた。
「何が?」
 ソファに座るなつきの前に湯飲みがコトンと置かれる。
 いつもならば隣に座ってうっとおしいくらいにくっついてくるハズの静留は笑顔を見せることもなく無表情のままお茶を置くと、その場に正座をしてなつきの言葉を聞く。
「お前に甘えていた、わたしはお前がいつも、どんなことがあってもそばにいてくれるもんだとタカをくくっていた。何もかも甘えて、好き勝手なことして・・・寂しい想いさせてすまなかった・・・ごめん」
「なつきが・・・謝ることやおまへん」
「だがっ・・・」
 二人を沈黙が包み込む。
「静留?」
「・・・」
「おい、静留?」
 もう一度呼ぶが相変わらず静留は言葉を発しない。
 沈黙に耐えられなくなったなつきは、ソファを降りると静留の顔を覗き込んだ。
「え?」
 ギョっと目を見張る。
「し、し、静留?」
 目を潤ませて唇をかみしめる静留に、なつきは言葉を失った。

 ――泣かせてしまった!――

 その事実が衝撃となってなつきを襲った。
 あまりのことに一瞬たじろぐなつきだったが、うまく言葉にならないまま気がついたら思わず静留を抱きしめていた。
「・・・!?」
「静留・・・すまなかった」
「ホンマになつきが・・・悪いんやおまへん」
「でもっ!・・・静留を泣かせてしまった」
 きゅっとなつきの背中に回され、しがみつく両手。
「堪忍な、なつき」
 なつきの胸元がうっすらと湿る。
「うちな・・・ちょっと寂しかっただけなんよ」
「うん」
 そっと柔らかな静留の髪を撫でながら先を促す。
「なつきに友達がよぉさん出来て、昔みたいに寂しそうな顔せぇへんよぉなったんは嬉しいんどす。心開く相手が出来たんもえぇことどす。学校もちゃんと行くよぉになったのもえぇことなんどす・・・せやけどそしたらもう・・・うちは必要ないんとちゃうかなって思ってもうたんよ。なつきにとってうちはご飯作ってくれたり、お茶入れてくれたり、掃除してくれたりっていうだけの存在なんちゃうかなって思ったらなんや切のぉなってしもて・・・。こないだ学校行った時、なつきが奈緒はんや命ちゃんや舞衣さんと楽しそうに話してるん見てたらうちの前ではせぇへんような楽しそうな顔しはるから・・・堪忍な、ただのうちの嫉妬なんよ」
 驚きを隠せないなつきの表情は、しかし段々と笑顔に変わっていった。
「何だ、そっか」
 アッサリと流すなつきの言葉に、静留は驚いて顔を上げる。
 なつきはふふっと笑うと静留の両頬をそっと包み込んだ。
「ばかだな、静留は」
「え?」
「いや、ばかはわたしだな。静留がそんな想いでいたことに気づかないんだから」
 そっと涙の跡に唇を寄せると、なつきはぺろりと舐める。
「あのな、わたしがこうして今ここにいるのは、お前のおかげじゃないか。お前がいなかったらわたしはずっと誰にも心を開くことはなかったし、寂しいっていう感情を知ることもなかったんだぞ」
「なつき?」
「学校だって行かなきゃその・・・お前が在学中に一緒に大学に行けないじゃないか・・学年で2コ離れてるんだから、これ以上留年してお前と同じ場所にいる時間が減るのはかなわんからな!だからそのぉ・・・学校なんかめんどくさいけど・・・」
 ごにょごにょと語尾をごまかすと、上気した頬を見られたくないのかぷいっと顔をそむける。
「なつき?」
「た、確かにそのぉ・・・うん、アイツらといるのはキライじゃないんだ。
 それはその、静留とは全然違う意味で居心地の良い場所で、それは大事にしていきたいんだ・・・初めての友達だから」
「・・・うちは?」
 初めての友達、という言葉に反応する静留は少し寂しそうな顔で問う。
「静留は友達じゃないだろう?」
「え?」
「お前はもっとこう・・・ん、そうだ、そんなの超越するくらい大事な存在だ。だから友達じゃない」
 再び抱く腕に力を込めると、言葉がうまく紡げない分想いの強さを伝えようと必死だった。
「なつき・・・痛いわぁ」
「あ、す、すまん!」
 ぱっと体を離すと、慌てて両手を背後に回した。
 またあの言葉を思い出して動揺する。
「うそ・・・」
「へ?」
「堪忍なぁ、なつき」
「え?」
 キョトンと首をかしげるなつきに静留は、はんなりと微笑む。
 そしてなつきの体を抱きしめるようにして背後に隠れた両腕をつかんで前に回す。
「うちはなつきのこの手にえらい頑丈な手錠かけてもぅたんかもしれへんなぁ」
 愛おしそうに自分の両手で包み込む。
「手錠?」
「藤乃静留・・・ゆぅなぁ・・・これがある限りこの先アンタを苦しめるかもしれへん・・・窮屈な思いさせるかもしれへん・・・せやけど離したくないんどす、堪忍してなぁ」
 目を伏せると苦しそうに言葉を吐き出す。
「なんだ」
「え?」
 そんな苦しい声を吹き飛ばすかのような明るい声。
「そんなのお前のことを好きになった時から覚悟してるさ。それにお前の両手にもかかっているんだろう?“玖我なつき”という手錠が」
 お互い様だろう?っと微笑むなつきの表情は何か吹っ切れたのか晴々としていた。
 包まれていた手をそっと解くと、今度はなつきの両手が静留の両手を優しく包み込んだ。
「わたしはこれからも時々・・・だと思うがその、心配かけたりヤキモチ焼かせたりするかもしれない・・・だけどお前にそばにいて欲しい。ワガママと取られてもいい、自分勝手だと怒ってもいい。だけどわたしはお前と同じ時間を過ごしたい。お前と繋がっていたいんだ」
 必死で、想いの全てをぶつけるように思いつく言葉を全部吐き出す。
 まっすぐに静留の目を見つめた。
 嘘じゃないぞっと信じてもらえるように、目を逸らさずに見つめ続けた。
 見つめられた目にはうっすらと涙が浮かぶが、今度のは寂しい涙じゃない。
 ふわりと、涙を浮かべたまま静留は微笑む。
「おおきに、なつき」
「あぁ」
 なつきも同じように柔らかな笑顔で答えると、再びその両手を静留の首に巻きつけて抱きよせた。
 いつもは自分からすることなんて滅多にないことなのだが、なつきは静留の額に、頬に、瞳に、そして唇にと何度もキスを繰り返した。
 柔らかな、優しいキス。
 静留の体がなつきを感じるたびにビクンと震え、頬が上気する。
「な・・・つき」
 なつき、なつき、なつき・・・と何度も何度も呟くように繰り返し呼び続ける。
 会えなかった時は届かなかった声も、今は届く距離にいる。
 それがありがたかった、それが嬉しかった・・・そばにいたい、と心の底からそう思う。
 再び流れ落ちようとする涙をなつきが親指で拭う。
「もう泣くな」
「ん」
 なつきは静留に泣くヒマを与えないかのように深く、長く唇を塞いだ。

  ☆

「こないだの夕食な・・・お前の作った料理なのに美味くなかった・・・お前の料理はうまいハズなのに・・・だ。お前がいないだけで美味しくなくなるなら意味がない。カップラーメンの方がナンボかマシだ」
「失礼やね。でも・・・嬉しいわ」
「お前の作った料理をお前と一緒に食べる・・・だから美味しいんだなきっと」
「愛どすぇ、隠し味は」
「そっか・・・なぁ静留?さっきの今であまり甘えたこと言いたくはないんだけどな・・・」
「ん?」
 キョトンとかわいらしく見上げる静留にドギマギしながらなつきは言った。
「お腹・・・空いた・・・なぁ、とか」
 ふわりと笑顔が浮かぶ。
 ほころんだ口元を押さえてくすくす笑う。
「ほなすぐ何か作るさかい、ちょお待っといてな、なつき」
 答えるかわりになつきのお腹が、きゅるるるる~と返事をした。
 最期までキまらへん子ぉやね、と笑いながらキッチンに消える後姿をなつきは嬉しそうに見つめていた。
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Date:2008/08/23
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