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□ 静留×なつき □

手錠1

続きものです
 



 彼女に出会ぅたその瞬間から、うちがずっと手に入れたいと願っとった両手。
 地獄の底に落ちていくうちを、寸前で救いあげてくれた両手・・・。
 あんな酷いことをしたうちのことを一生懸命抱きしめてくれる優しい両手。
 それが今うちのそばにあるのは決して夢やない。
 でもうちは・・・この子の両手に手錠をかけてもうたんやないかな。
 『藤乃静留』ゆぅ手錠を・・・。

  ☆

「なつき?こんな時間にどこ行くん?」
 学校から帰った早々にバタバタと出かける用意をするなつきに、夕食を作りに来ていた静留は怪訝な顔で問う。
「奈緒のとこだ、今日アイツに不本意ながら120円借りてしまったからな、返しに行く」
「120円?」
「コーヒーを飲もうと思ったらサイフを忘れたことに気づいて、どうしようか悩んでいたらたまたまそこに奈緒が来て・・・120円入れてくれた」
「そうどすか」
「一緒に来るか?」
「遠慮しときます」
 結城奈緒・・・かつて勘違いで、というか仕掛けられた罠によってなつきと舞衣に恨みを抱き、あろうことかなつきに襲いかかった彼女。
 なつきを救う為とはいえ、うちが彼女にしたことは決して許されることやない。
 全部済んだことやゆーたらそれまでですけど、事実は消せまへん。
 やっぱり多少のわだかまりはあります。
 彼女の中でもきっと・・・。
 正直今はあんまり顔を合わせたいとは思わない。
 でもなつきはもう何とも思ってへんのやろか?
「じゃぁ行ってくる、すぐ帰るから」
 ぼんやりと考え事をしていた静留を後に、なつきはヘルメットを片手に出て行った。

  ☆

 待っている間に夕食を作ろうと台所に立って冷蔵庫の食材をチェックした。
 インスタントとマヨネーズ以外の食品は静留が買い揃えていたものだった。
 なつきは放っておくと、冷蔵庫の中身がミネラルウォーターとマヨネーズだけになってしまうから仕方がない。
「なつきにはちゃんとした食生活を送ってもらわんと、そのうち病気なりますさかいにねぇ」
 うちが作ってあげへんとちゃんと食べへんし・・・でもそれを口実になつきに会いにきてるんやないか・・・そう言われればそれまでなんやけど。
「甘やかしたらあかんねやろうけど、こればっかりはなぁ・・・」
 呟く静留は、不満なんぞ全然ないような極上の笑顔に鼻歌付で料理に取り掛かった。

  ☆

 が、いつまで待ってもなつきは帰ってこなかった。
 夕食の用意などとっくの昔に終わっていた。
「夕食冷めてしまいましたなぁ。何してはんねやろ?
 時計を見上げると、なつきが出て行ってからすでに1時間が経過しようとしていた。
 寮までバイクなら片道5分で着く距離である、往復10分、話をする時間を見積もっても30分あったら帰って来れるはずだった。
「何や話し込んではるんやろか?」
 掃除も洗濯も済ませてしまった静留は、仕方がないのでTVをつけて時間を潰すことにした。

  ☆

 それから更に1時間ほどしてドアに鍵が差し込まれるガチャガチャという乱暴な音。
 なつきが帰って来たのだろう。
「はぁ、ただいまぁ」
「おかえりなつき、えらい遅かったやないの?」
「あぁすまない、ちょっと舞衣と命に捕まってな」
「そうなん?」
「あぁ、ごめん、夕食待ってくれてたのか?」
 なつきはチラリと食卓に目を向けると、その向こうにある時計を見上げた。
 すでに2時間が過ぎていた。
「ん、すぐ帰って来る言いはったから」
「すまない、お腹空いただろう?食べよう」
「ん」
 二人は食卓につくと、いただきますと頭を下げてレンジで再び温められた食事をつつきはじめた。

  ☆

「ん?なつきどないしたん?」
「何が?」
「あんまりお箸進んではらへんみたいやけど」
「あぁ、そんなことはないぞ?」
 言いながらもなつきの箸が進んでいないのは一目瞭然だった。
「そうどすか?なつきの好きなモン揃えてみたんやけどねぇ」
「あぁ、ありがとう」
「・・・なつき?」
「ん?」
「あんたもしかして・・・食べてきはったん?」
「へ?な、何を?」
「何をって夕食どす」
 冷や汗を流し、ありありと動揺の色が見えたところを見ると間違いない。
 ホンマ嘘のつけへん子ぉどすなぁ。
「あ、いやっそのっちょっとだけ・・・うん、ちょっとだけだぞ!静留のご飯は別腹だし!」
「別腹って何どすのん」
 静留は笑ってツッコむと、コトンと箸を箸置きに置いてなつきの皿に手を伸ばす。
「え?あ、し、静留?まだ食べてる途・・・」
「あんまりよーさん食べてお腹壊されたらかなんからねぇ」
 言ってほとんど手をつけていないおかずに手早くサランラップをかけると、順番に冷蔵庫にしまっていく。
「あ、や、・・・ごめん・・・電話すればよかったな」
「ホンマにゆーてくれたらよかったのに、無理せんと」
 ニッコリと微笑むと、自分の分の皿にもサランラップをかけようとする。
「あれ?静留は食わないのか?」
「んーうちも作りながらつまんでましたさかいあんまりお腹空いてませんよって」
「ごめん」
「そない謝ることありまへんぇ、うちが好きでやってることやさかいね」
 よしよしと頭をなでると、静留はそのまま片付けに移行する。
 食器を洗い、流しを掃除し、テーブルの上が片付くまであっという間だった。

  ☆

「なつき、ほなうち帰りますわ」
 片付け終わった静留は早々に帰宅を告げる。
 いつもなら二人分のお茶を入れて一服して帰るか、もしくは泊まって行くのに。
「え?帰るのか?」
 なつきの驚きは最もだった。
「ん、明日は今日の分のおかずがあるさかい大丈夫やね?ちゃんと食べるんよ?」
「・・・送る」
 ヘルメットに手を伸ばそうとするなつきの手を止める。
「えぇよ、もう遅いしなつきも疲れてるやろ?」
「別に疲れてない、バイク出すから待ってろ」
「えぇから、今日はちょっと寄るとこあるさかいに一人で帰ります、ほなね」
 静留は有無を言わせないオーラと笑顔を発すると、なつきが一瞬たじろいでいた間に部屋を出て行った。
「静留のやつ・・・もしかして怒ってるのか?」
 突如不安がなつきを襲う。
 胸の中がもやもやする。
 チクンっと胃が痛む。
「追いかけ・・・るか?」
 静留のあの笑顔、あれは怒っている時か隠し事をしている時の・・・気持ちに嘘をついている時の作り物の笑顔だ。
 ・・・なつきの足がその場から動くことはなかった。

  ☆

 翌日、静留は大学から帰るとまっすぐに自分のマンションに帰った。
 よぉ考えたらこない早い時間に自分の家に帰るなんて久しぶりどすなぁ。
 いっつもなつきの家に寄ってごはん作ってましたもんなぁ、放っといたらなつき何しよるかわからへんもん。
 ・・・なつきにとってうちはご飯を作ってくれるだけの人なんかもしれへん。
 部屋の掃除をしてくれる、おいしいお茶を入れてくれる、そんな便利な存在。
 うちが欲っしてるようになつきはうちを欲っしてないんやないかな。

――うちの好きと、なつきの好きとはちゃうんです――

 かつて自分がなつきに抱いていた想い。
 なつきをこの手で抱いても、心までは決して手に入れることは出来へんかったあの頃。
 祭りが終わりを告げ、紆余曲折を経てなつきはうちのことを好きやゆーてくれるとこまでいったけれど、実際は何も変わっていないのかもしれない。

――お前と同じような気持ちは持てないが・・・――

 それが真実なのかもしれない。
「なつき・・・」

  ☆

「ただいま~」
 いつものように乱暴にドアを開けるとブーツを脱ぎ捨て、ドカドカとリビングに向かって歩を進めた。
 だが、いつものようになつきを迎えてくれる笑顔はなかった。
「静留?」
 家中の部屋という部屋を開けてみるが、どこにも静留の姿はなかった。
 浴室やトイレ、ベランダまで覗く。
 どこを除いても、静かで広々とした空間があるだけだった。
「この家・・・こんなに広かったのか?」
 静留の捜索を諦めたなつきは、今度は食料の物色を始めた。
 冷蔵庫を開けると昨日の残りモノがキチンと並んで収まっていた。
「静留・・・」
 なつきは皿を取り出すと一つ一つテーブルに並べた。
 どれもなつきの好物ばかりな上に、キチンと栄養バランスまで考えて作られている。
 なつきはガタンとイスに座ると、レンジで温めたごはんをもしゃもしゃと食べ始めた。
 少しずつつまんでいく。
「・・・美味くない」
 静留が聞いたら怒りそうなことを呟く。
 いや、味に間違いはない。
 静留はちゃんとなつきの舌に合わせて味付けをしてくれている。
 実際他人が食べても相当美味しいというハズだ。
 だが・・・
「一人で食べても美味くない」
 カタンとなつきは箸を放り投げた。
 今まで一人でずっと過ごしてきた。
 ご飯だって適当に一人で食べてた。
 今までとなんら変わりはない状況なのに、一度人の温かみを感じてしまうと、今までの自分の生活がいかに空虚なものだったのかが思い知らされる。
 静留がいないことがこんなに寂しいと感じるなんて、そばにいて当たり前の存在過ぎて忘れていた。
「静留・・・静留、静留・・・」
 なつきはイスの上で膝を抱えると顔を埋めて何度も何度も名前を呼んだ。
 呼んだところでどうにもならないのだが・・・。

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Date:2008/08/23
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