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□ 静留×なつき □

なつきのバレンタイン

チョコレートはあんまし好きやないけどなぁ~あたしは。

なつきらしいっちゃぁなつきらしいし、静留は静留でらしかなと思う。
「何だかえらく騒がしいな?何の騒ぎだ?」
 校内のあちこちで女子たちがきゃあきゃあ騒いでいるのを横目で見ながら、隣で並んで歩く舞衣に問う。
「あのねぇなつき、まさか明日は何の日か知らないってわけじゃないわよねぇ?」
 



 まさかねぇっ?と目を丸くして問う。
「明日?何の日だ?」
「・・・ホンキで言ってるの?」
「うっ・・・だから何の日だと聞いてるんだっ」
 知ってて当たり前でしょう?というような言い方に、何だかバカにされたようでカチンときたなつきの語気が思わず荒くなる。
「バレンタインデーでしょう?女の子が男の子にチョコレートと共に想いを伝える日じゃないの!」
「あぁそういえば・・・ばかばかしい!そんなことでみんな浮かれてるのか?」
 心底呆れたようにもう一度あたりを見回すと、やはり理解不能だというように首をふる。
「まぁね、なつきみたいに興味のない人にとっちゃぁどうでもいい日でしょうけどねぇ、世間一般常識としてどうなの?それ」
「ほっとけっ・・・舞衣は楯にやったりするのか?」
「まぁ、一応・・・ねぇ」
「ふーん」
「なつきは?静留さんに渡さないの?あ、静留さんにもらう方かなぁ?」
 ウリウリとなつきの頬にグーパンチを押し付ける。
「バカなことを言うな!!!」
「はいはい、ごめんごめん、じゃねあたし命迎えに行かなきゃいけないからっまたね」
「あぁ、またな」
 そういえば静留は毎年バレンタインになると山ほどチョコレートを抱えていたなぁ。
 神埼と二人だけで全校生徒分あるんじゃないかと思うほど、生徒会室にチョコが山ほど積まれていたこともあった。
 なぜ女が女にチョコなんぞをもらうのかよくわからなかったが、まぁそれだけ静留がモテたのだろう。
 食べ過ぎでニキビが出るくらいチョコレートの処理を手伝わされた記憶が蘇ると少し気持ち悪くなる。
 今年もまたアイツは大学でたくさんもらってくるのだろうか?
 アイツは断らない上に一人一人ちゃんと名前も覚えているから毎年お返しが大変だろうに・・・しかし一方的に渡されただけなのに、いちいちお返しを返さねばならんというのは不公平だなとなつきは思う。
 静留の場合は1対大多数だから、いくらこづかいがあっても足りないんじゃないかといらぬ心配までしてしまう。
 バカらしいイベントだよなぁ全く。
 そういえば・・・静留が誰かに渡しているのを見た事も聞いたこともないな。
 このわたしにさえ・・・だ。

  ☆

「なぁ静留?」
「何どす?」
「明日も講義があるのか?」
「ありますえ、あ、そういえば明日はバレンタインやねぇ?」
「まさかまたチョコレートの処分を手伝わすつもりじゃあるまいな?」
 ジト~っとふてくされたように睨むと、クッションをお腹に抱えてぷいっとスネるように顔をそむける。
「処分やなんて人聞き悪いどすなぁ、ちゃぁんと感謝してますしお返しもしとります。
 ただ一人では食べきらへんしもったいないからなつきにお願いしとるだけどす」
「うっ・・・」
「でも今年は・・・」
「ん?」
「程々にしときます」
「そうしてくれ」

  ☆

 珍しく授業を最後まで終えたなつきは、ぶらぶらとバイクを隠してある林に足を向けて歩いていると、なにやら校門付近に人の群れが輪を作っているのが目に留まる・・・しかも気のせいかそれがみるみると拡大していってる気がする。
「何だ?えらく騒々しいなぁ」
 それでも興味を示さず通り過ぎようとすると、その騒々しい場所の中心から思いがけぬ声がなつきの名を呼んだ。
「なつき!ここどす!」
 輪の中心付近から伸びた手だけが見えた。
「へ?あ、し、静留?静留か?」
 ズザザーーっと人の輪が割れ、そこに出来た道を悠々と歩いてくるのはまぎれもなく静留だった。
「待ってましたんぇ、一緒に帰りませんか?」
「どうしてここに?」
「たまには一緒に外で夕食でも食べへんかなぁ思て迎えにきましたんよ」
「あぁ、そうなのか?」
 ちらりと視線が静留の両手に下げられている紙袋に行く。
 中身は想像できるが今年もやはり程々には出来なかったようだ。
「えっと・・・いいのか?ヤツらは」
 きゃあきゃあ騒いでいる取り巻きの渦を、なつきはうんざりと指さして問うた。
 瞬間、しーんと一斉に黙り込む群集。
「あぁ、もうよろしいねん。いきましょうか?なつき」
「ん、あ、メットがないな・・・電車で帰るか」
「せやね、バイク大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だろう、ちゃんとロックかけて行く」
 なつきは何も言わず、静留の紙袋に手を伸ばす。
「なつき?」
「今年もほどほどに出来なかったようだな」
「えろぅすんません。やっぱりせっかくくれはるゆぅもん断るのは悪い気ぃしましてなぁ。
 みなさんのご好意ですさかい・・・ね?」
 くるりと二人を黙って見つめていた群衆を振り返ると、必殺の「静留スマイル」が炸裂した。
 あちゃぁ~また一騒動・・・。
「きゃーーーーっ静留さまぁ」
 その瞬間、今まで黙っていた群集たちから再び一斉に黄色い声があがった。
 やっぱり・・・
「あーやかましい!静留!帰るぞ!」
「はいな。そしたらみなさん、また」
 バイバイっと小さく手を振ると、肩で風を切って歩くなつきの背中を小走りで追いかけた。

  ☆

 さすがに重い紙袋2つを持ったままうろうろする気にはなれず、二人は一度家に戻ることにした。ドサっとテーブルに紙袋を2つ置くと、ガタンと椅子を引いて座り込んだ。
「堪忍なぁなつき、重かったやろ?」
「こんなもの別に何ともない」
 コキコキっと首を回し、右肩を自分で揉みながらもあえて強がる。
「今年は頑張って自分でどないかしますから、なつきは気にせんといて」
「別に・・・手伝ってやってもいい・・・ぞ」
「え?」
「チョコ、嫌いじゃないしな」
「おおきに」
「でも、ホントにモテるんだな、静留はマメだからな」
「そうどすか?でも嬉しいものどす、かわいいおなごはんから好かれるのは悪い気ぃしませんし」
「ふーん」
 何だか少し腑に落ちないような表情で生返事をする。
「静留は今までに誰かにその・・・チョコをやったことはあるのか?」
 チョコレートを一つ手にしながら、なつきの素朴な、それでいて結構重要な疑問をぶつけてみた。
「そういえばありまへんなぁ」
 人差し指をうーんと顎にあててあっさり答える。
「そうか、だよなぁ?静留と神崎が付き合ってるとかいう噂も流れてたことがあったが、そういう場面を見た事なかったしな。まぁ静留と神崎のことはデマだったとしても、静留にアタックしてきたヤツは一人や二人じゃなかったろう?」
「せやねぇ・・・そないでもないとは思いますけど?」
「え?そうなのか?」
「えぇ、おなごはんからはよぉゆわれましたが、男の方からはほとんどありませんでしたぇ?」
「そ、そうなのか?」
「えぇ、それにうちはなつきに出会ってからはなつき一筋ですから、全部丁重にお断りさせてもうて来ましたんよ」
 ふふっと微笑むとちょんっとなつきの頬を人差し指でつつく。
 瞬間、なつきの頬がぽむっと朱に染まる。
 なつきには中々口に出来ないような言葉を静留はサラっと直球でぶつけてくる。
 それが本当は嬉しくて仕方がないのだが、それも素直に言えない・・・
 そんな自分をごまかすように、なつきはゴソゴソと紙袋を漁り始めた。
「えと、今年はどんなのがあるんだ?」
 バラバラとテーブルの上にぶちまける。
「あらあら、そない乱暴に扱わんでもええのに」
「あ、す、すまん」
 謝罪の言葉を述べながらも視線は数々のチョコレートをチェックする。
「あれ?」
 ごそごそと探る。
「何してますのん?」
「え、あ、いや・・・」
「なつき?」
 ひたすら2つの紙袋の中身をごそごそ探るなつきを、静留は不思議そうに眺める。
「毎年必ずあったんだけどなぁ」
「何が?」
「チョコレート」
「それはわかってます、どんなん?」
「んと、藤色の包装紙に包まれたシンプルなものなんだが・・・」
 どれだけ探しても見つからず、とうとう諦めたなつきはハァ~っとため息をつく。
「それがどないしましたん?」
「それだけいつも何も書いてないんだ。カードも入っていないし誰のだかわからないのだが
、わたしが中等部の2年の頃からだから3年間ずっと毎年必ず同じ包装紙で届いていた。でもそれが一番うまかったんだ、手作りだしな。静留には悪かったがそれだけは毎年わたしが食べていた」
「せやったんですか?」
「あぁ、もう諦めたのかもな。どれだけ想っても静留が振り向くことはないだろうから」
 テーブルに頬杖をつきながら、なんとはなしにまだチョコをいじくりまわしていた。
 どんなヤツが静留に想いを寄せているんだろう?
 と、まぁ名前を見たところで学校を自主休校気味のなつきにはわからない名前ばかりなのだが、なんとなくそれらを眺めていた。
 静留はこれら全員の名前と顔を覚えているらしい。
 改めてスゴイやつだなと感心してしまう。
「そういえばなつきは誰かにあげたことありますのん?」
「ない」
「ホンマに?」
「あぁ、興味もなかった、ただ静留が持ってくるチョコをたくさん食べられる日だという程度にしかな」
「ほしたらこれ・・・いらん?」
「へ?」
「これ」
 静留の差し出した箱を見てなつきは目を丸くした。
「こ、これ?」
 それは藤色の包装紙に包まれた、先ほどからずっとなつきが探していたまさにその箱だった。
「え?な、どうして静留が?」
 混乱したなつきは受け取りながらも静留と箱を何度も何度も見比べる。
「うちが愛するなつきのために毎年作ってたんどす」
「え?でも・・・」
「うちの気持ちなつきに伝えるつもりはあの頃はありまへんでしたけど、でもなつきがおいしいゆぅて食べてくれたら嬉しいおもて」
 ニッコリと満面の笑顔を浮かべる。
「それでおまえのもらったチョコレートを食べさせるって口実で呼び出しては、これを一緒に食べさせていたのか?」
「ふふっ、でもなつきが覚えてくれてたとは思えへんかったから、うちホンマに嬉しかったわぁ。ちゃぁんとうちの愛はつたわってたんどすなぁ」
 ガサゴソと包装紙をなつきにしては丁寧に開けると、やはりいつもと同じ箱にいつもと同じようになつきの好きなクランチのかかった、まんまるのチョコレートが6つ並んでいた。
 相変わらず店で売ってるのと変わらないくらいの出来栄えだ。
 一つつまむと、ポイっと口に放り込む。
 このサクサクの食感がなつきは大好きだった。
「うん、うまい」
「そうどすか?」
「静留だったんだな、どうりでわたしの好みを知っていたはずだ」
 ははっと笑うともう一つ放り込む。
「なつきにうちの気持ちバレてしもたし、もう隠してることもありませんから今年は直接渡したかったんどすが気持ちがはやりすぎて学校まで迎えに行ったらあないな騒ぎになってしもてねぇ堪忍な」
 なつきの隣に座り、静留もテーブルに頬杖をつくとなつきの幸せそうにチョコを頬張る横顔を見つめる。
 その静留の頬もまたこれ以上ないというくらい幸せそうに緩みきっていた。
「でも幸せやわぁ、こうしてなつきがちゃんとうちのんやてわかって食べてくれるん見てるの」
「ほうか?」
 もぐもぐと次々に口に放り込まれていく。
「えぇ、世間のおなごはんもこんな気持ちであげはんねやろうねぇ」
「あぁ、そうかもな、でも静留はこのお返し大変だな、一人一人に渡しているんだろう?」
「えぇ、まぁしょおおへん、気持ちは嬉しいですさかいね」
「ふむ、でも今年はわたしも何かお返しをしなきゃな。静留、何がいい?」
「うーん、せやねぇ・・・ほななつきでよろしいわ」
「は?」
「なつき♪」
 顔はしっかり笑顔だが、何の迷いもなく、悪びれもせず、ましてや冗談なんかではない口調でキッパリと言ってのけた。
 どう返していいのかわからず戸惑っているなつきにトドメの一言が突き刺さった。
「お返しは3倍返しが相場どす♪」
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Date:2008/08/23
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