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□ 夏実×美幸 □

ひっさびさの逮捕です。









「美幸!暴走車!追いかけて!」
「オッケー!」
 美幸は一瞬で前後左右の確認をすると、暴走している赤いスポーツカーを追いかけた。
 夏実のナビにより、先回りに成功すると、それほど広くない道にトゥデイを横付けにして塞いだ。これ以上暴走を許すと怪我人が出るだけでは済まないかもしれない。
 2人はトゥデイから降り、夏実は両手を広げて向かって来る車に制止を要請した。
「そこの暴走車!止まりなさい!」
 キキキーーーーー!甲高いブレーキ音が響く。
 さすがに人を轢く気はなかったのか、急ブレーキを踏んで寸前で止まった車に油断した夏実は、ゆっくり運転席に近づこうと歩き出した。
「夏実!危ない!」
「え?」
 油断した夏実の隙をついて再び車が発進しようとした。
「夏実!」
 一瞬夏実の身体が空中に浮いた。次の瞬間、身体に軽い衝撃が走る。
「え?」
 ドンっという音に、夏実は恐る恐る目を開けた。
「み・・・ゆき?え?あれ?」
 状況がイマイチ掴めない夏実が目にしたのは、勢い余ってトゥデイの腹に頭を突っ込んだ暴走車が、バックで逃げようとしているところだった。
「ちょ、こら!」
 追いかけようと立ち上がりかけたところで、自分の上に乗っている重みに気づいた。
「あれ・・・美幸?」
 グッタリと弛緩した美幸の身体が、いつもより重く感じる。
「美幸!美幸?何?どうしたの?」
「な・・・つみ・・・大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
「どこも痛く・・・ない?」
「痛くなんかないわよ!それより美幸!大丈夫?」
「ん、夏実に怪我がなくて・・・よかった」
 そこでやっとこの状況の原因に思い当たった。
「あたしを・・・かばったの?」
「あんまり危ない真似、しないで」
 最後は呟くように力なく笑うと、再び気を失った。
「美幸!美幸!!」

  ☆

 気がつくと見知らぬ天井を見上げていた。
「美幸?気がついた?」
 心配そうに覗き込んできたのは、今にも泣きそうな夏実だった。
「なつ・・・み?」
「大丈夫?美幸、痛くない?」
「痛く・・・?」
 そう言われて初めて美幸の右足に鈍い痛みが走った。
「痛い・・・かも」
「骨折だって、車には当たってないけど打ち所が悪かったみたいでさ」
「骨折?」
「暴走車からあたしをかばったでしょ?」
「あぁ、うん」
 夏実が轢かれそうになったあの時、自分でも驚くくらい咄嗟に身体が反応してしまった。
「美幸のばか!危ない真似してんの自分じゃないの!」
「ん」
「しばらく入院だからね!」
 少しキツめに呵られたあと、夏実はついでのように報告した。
「あ、あとあの暴走車、中嶋くんたちがつかまえてくれたから」
「そう、よかった」
 安堵の息をつくと、目を閉じる。
 暴走車の逮捕も気にはなっていたけど、夏実に怪我がなかったことの方にホっとしている自分がいた。
「寝る?」
「ん」
「じゃあ着替えとか取ってくるからね」
「ん」

  ☆

「辻本!」
「はい?」
「小早川が復帰するまで葵と組んでくれ」
「あ、はい、わかりました課長」
「よろしくお願いしますね、夏実さん」
「あ、うん」
 葵の運転するミニパトのナビシートは快適だった。
 快適すぎるくらいだ。
 安全運転だし、ニトロは積んでないし、モトコンポも乗っていない普通のミニパト。
 これじゃあ暴走車も追えないよなぁと思いながら窓の外をぼんやりと見つめる。
 ぬるま湯に浸かっているような感覚。
「夏実さん?どうかしました?」
「え?あ、いや?何で?」
「ぼんやりしてるから」
「そか、ごめんごめん」
「美幸さんが心配ですか?」
「そりゃぁ・・・まぁ、あたしのせいだし?」
「そんなことないですよ。でも早くよくなるといいですね」
「うん、そうだね」
 ぽっかり穴が開いたような隣は、美幸じゃないと埋まらないよ。

  ☆

 数日後、美幸は夏実が持ってきてくれた小説や雑誌を読みながら過ごした。
 思わぬ休日は退屈だった。
 夏実は仕事を終えると毎日面会時間ギリギリでも必ず来てくれる。
 だが、美幸は正直複雑な気分だった。
「みーゆき?」
「あ、夏実、おつかれさま」
「ん」
「今日はどうだった?」
 聞きたくもないのにわざわざ自分から尋ねてしまう。
 他に話題が思い浮かばないのだ。
 長いこと一緒にいて、こんなことは初めてだった。
「ん、パトロール中に葵ちゃんがすっっごいオトコマエに告白されてた」
「えぇ?」
「ホント、知らぬが仏ってヤツよね」
「そうね」
 葵ちゃんの性別を知ったらさぞ驚くことだろう。
「でも葵ちゃんと初めて組んだけど、かなり優秀よね、頼子にはもったいないわ」
「へぇ?」
「元は男だからそれなりに力はあるし、今は女だから気配りも出来る。一人で二度オイシイってヤツ?」
「失礼よ、夏実」
 言いながら苦笑する。
 でも問題がないとは言えないが、葵ちゃんが優秀なのはよくわかっている。
 あたしがいない間は葵ちゃんか頼子と組むだろうとは思ってたけど。
 正直最近葵ちゃんの話題が多いせいか、少し自分の居場所を失ったような孤独を感じていた。
 でもさすがにそれを言葉にするのは躊躇われた。

 そこはあたしの場所なのに・・・と。

  ☆

 夏実は毎日のように病院に顔を出す。
 検査の結果、幸いにも足の骨折以外は何事もなかったことにホっとしていた。
 自分の無茶のせいで美幸に何かあったらと思うと怖くて仕方がなかった。
 明日には退院して自宅療養になるそうだ。
「美幸~」
「夏実?お疲れさま」
 いつもの挨拶だが、違和感のある挨拶。
 普段はほとんど一緒に行動しているせいか、どちらかがどちらかを迎えるような挨拶を交わすことなどなかったから。
「うん、疲れたよ~今日は違反者続出でさ、追いかけまわしてたよ」
 ベッドの上に上半身を投げ出してダラける。
「そうなんだ?」
「全く~天下の公道で何やってんだってーのよ」
 ぶつぶつ愚痴を言う夏実に黙って微笑んでくれる美幸。
 それだけで今日の疲れなんかどこかに行ってしまいそうだ。
「ごめん、愚痴って」
「いいのよ」
「あ、そうそう美幸明日退院だって?」
「ん、骨折だけだから自宅療養でも大丈夫だろうって」
「そっか、じゃあ何時に迎えに来よう?あたし非番だから来るよ」
「じゃあ10時に」
「オッケー」
 親指と人差し指で○を作って答えた。
 やっと美幸が帰って来てくれることが、単純に嬉しかった。

 隣に美幸がいない生活は寂しかった・・・。

  ☆

「ただいま」
 夏実に荷物を持ってもらい、松葉杖をつきながら玄関に足を踏み入れた。
 部屋の中には誰もいないのに、ついそう言ってしまう。
「おかえり、美幸」
 隣で夏実が微笑む。
「ん」
 荷物を部屋に放り込むと、ドサっとベッドに倒れ込んだ。
「・・・疲れた」
「おつかれさま」
 夏実がペットボトルの水を持って入って来た。
 聞かれていたのだろうか。
「ふふっ、何もしてないのにね」
「ううん、やっぱり怪我してると不自由だもん、疲れるよ」
 はいっと水を差し出される。
「ん」
 上半身を起こしてそれを受け取ると、一口含む。
「あたしが出来ることは何でもするから、ちゃんと言ってね」
「大丈夫よ、気にしないで」
「するよ!」
 思いがけず真剣な目でそう答える夏実に驚く。
「え?」
「するに決まってんじゃん!あたしのせいでこんな・・・」
 しょぼんと頭を垂れる夏実。
「あたしのせいじゃん」
 無茶するな!と呵っておきながら、実は夏実がこれほどまでに美雪の怪我に責任を感じていたことに驚いた。
「違うわよ、あたしがそうしたかったんだもの、それを言うなら悪いのはあの暴走車・・・でしょ?」
「それはそう・・・だけどさ」
「ありがとう、何かあったらお願いするからそんな顔しないでよ」
「うん」
 まだ少し落ち込んだ様子の夏実。
 クスっと笑って夏実の顔を覗き込むと、美幸はその頬に手を伸ばし、撫でる。
「夏実」
「ん?」
「好きよ」
「へ?」
 きょとんと美幸を見つめる。
「好き」
 もう一度繰り返す。
「え、あ、うん」
 美幸は頬を撫でていた手でその唇に触れると、親指でそっとなぞる。
「夏実に何かあるほうが、あたしはずっと辛かったと思う」
「ん」
「だから夏実が気にすることないわ。でも・・・気持ちは嬉しかったわ。それに夏実に怪我がなくてホントによかった」
 ニッコリ微笑む。
「あたし頑丈に出来てるもん」
 強がる夏実。
「そうかもしれないけど・・・」
「美幸がいないと寂しいよ」
「ホント?でも葵ちゃん優秀なんでしょ?やりやすいんじゃない?」
 チクリと突ついてみる。
「葵ちゃんは優秀だけど、それとこれとは別だよ、やっぱりあたしの隣は美幸じゃなきゃ、さ」
 嬉しかった。
 あたしが望んでいたのはまさにその言葉だった。
 夏実の隣は誰にも渡したくない、そう思ってた。
 たとえそれが葵ちゃんだろうと頼子だろうと、だ。
 美幸はもう片方の腕も伸ばし、そっと夏実の首に回して抱き寄せた。
「美幸?」
「寂しかった・・・自業自得だとはいえこんなことで夏実の隣のシートを誰かに譲るなんて堪えられなかった」
「ん」
「葵ちゃんの話をする夏実がどんどん離れて行くみたいで・・・このまま葵ちゃんがいいって言われたらどうしようって不安だった」
「まさかでしょ?」
「そのまさかよ」
 自嘲気味に笑う。
「あたしの隣、美幸以外誰が座れるのよ」
 よしよしと下ろされた長い髪を優しく梳く。
「全くぅ、トゥデイも待ってるんだよ?ホントにアイツも強情っていうか、頑固っていうか・・・」
 小さく溜息をつきながらふるふると呆れたように首を振る。
「トゥデイ?」
 少し身体を離し、ここにきて何故トゥデイの話になったのか不思議そうに夏実を見上げる。
「あれからこっち、突っ込まれたボディは直ってんのに動いてくんないんだってば!美幸じゃないときっと動いてくれないんだよね、アイツ」
「そうなの?」
「心配すると思って言わなかったけど、誰も触ってないからさ、早く元気になって動かしてやってよ」
 嬉しかった。ちゃんとそこに自分の居場所はあった。
 トゥデイのシートも、夏実の隣も。
 美幸はそっともう一度夏実を抱き寄せると、唇に触れるだけのキスをした。
 耳元で囁く。
「夏実の隣は指定席にしておいてね」
「年間パスポートでも発行しようか?」
 夏実がニヤリと笑う。
「更新が面倒だから、永久パスポートでいいわ」
 それに対してキッパリと真正面から笑顔で返す。
 驚いて目を丸くした夏実が次の瞬間、ふわっとどこか泣きそうな笑顔を浮かべる。
「ずっと・・・一緒にいてくれるんだ?」
「あたりまえでしょ?夏実の相棒なんて他に誰が出来るのよ?」
「あれぇ?さっきまであんなに不安がってた人の言葉とは思えないなぁ」
 美幸の変わりようにクスクス笑う。
「んもう、バカっ」
「でも・・・ずっといてよね」
「ずっといさせてよね」
 2人は顔を見合わせて笑い、もう一度そっと唇を合わせた。






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Date:2010/01/21
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