Planetarium SS置き場

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□ まこレイ □

覚悟

基本はまこレイで、ちょっと亜美ちゃんが絡んで来ます。
最早始めに何を書きたかったのかわかんなくなってきたので(笑)
もうアップしちゃいます。
お気に召さなかったらすいません




「レイのあんなかわいいお嬢様みたいな服着てる姿なんて、貴重なもん見れたなぁ」
 まことは父親の元に連れていかれたレイを、誘拐と間違えて追いかけた先で見た話を、クラウンに集まっていた亜美やうさぎに向かって楽しそうに語っていた。レイのプライバシーには必要以上に触れないようにはしたが、あのお嬢様姿なレイを自分だけが見たというのが自慢でもあるかのように話す。
「へぇ?あたしも見たかったなーレイちゃんのお嬢様姿」
 少し羨ましそうに、うさぎが今日はまだ来ていないレイの席を見つめる。
 亜美はと言えば、ただまことの隣で黙って微笑んでいるだけだった。
 その時だ、ドアが開いて当の本人が顔を出したのをいち早く発見したうさぎが声を上げた。
「あ、レイちゃんだー」
「何?」
 いつものようなつっけんどんな物の言い方でジロリとうさぎを睨む。
「お嬢様なんだって?レイちゃん」
 いきなり言葉が微妙に足りないうさぎの問いに敏感に反応したレイは、すぐに誰の仕業か察し、今度はまことを睨む。
「まこと!!」
「はい?」
「くだらないこと言わないで」
「そうかなぁ?レイがかわいかったってこと説明したかっただけなんだけど」
 ニヤニヤといじわるそうに笑う。
「バカじゃないの?」
「バカって・・・ひどいなぁ」
 レイはツカツカとまことのそばに近づくと、腰をかがめて耳元に唇を寄せる。
 耳元にレイの吐息を感じ、心臓が早鐘を打ちはじめるが、次の瞬間まことの笑顔と心臓は凍りついた。
「あんたのかわいい物好きな趣味のこと・・・バラしていいの?カバンの中身ぶちまけるわよ」
「あうっ・・・」
「なになにーーー?ナイショ話なんてずるーーい!」
「な、な、なんでもないって!ちょ、レイ出よう!」
 グイっと今来たばかりのレイの手首を掴むと、強引に引っ張ってクラウンから連れ出した。
「何あれーーー?」
 イキナリの不可解なまことの行動に、うさぎは頬をふくらます。
「ねぇ亜美ちゃん?どう思う?あの態度」
「そうねぇ、仲良くなったわよね」
「ホントだよ!あんなに仲悪かったのにさ!まぁ仲良くなってくれたのは嬉しいけどぉ」
 羨ましいとか寂しいとか色んな感情の混ざった複雑な表情で二人が出て行ったドアを見つめるうさぎ。
 そしてそのうさぎをなぐさめながらも心中穏やかではない亜美だった。

  ☆

「ちょ、まこと痛いって!」
「あ、ごめん」
 我に返ったのかまことはパっと手を離すと、両手を上げて降参のポーズを取った。
 いつの間にかいつも帰る時に別れる公園にまで連れてこられていた。
「もう、何すんのよ!バカ力!」
「だってレイが!」
「まことが先に言ったんでしょ?あたしのいない所でベッラベラと」
 人差し指でまことの鼻の先を指差した。
「あうっ・・・ご、ごめん」
「ホンっと口軽いんだから!」
「や、でもお父さんのこととかは言ってないよ!うん!それにさーホントにかわいかったんだもんレイ」
「はい?」
「言いたいじゃん?」
 ヘヘっと嬉しそうに笑うまことを、これ以上怒るのもバカバカしく思えて、やり場のない怒りを吐き出すように小さな溜息をついた。
「で?こんなとこ連れて来てどうするつもり?」
 腰に手を当てて見上げる。
「え?あ、んっと・・・」
 きょろきょろと理由を探すように辺りを見回す。
「あ・・・クレープでも食べる?」
 おあつらえ向きに公園に来ていたクレープの移動販売の車を発見したまことは、これ幸いと指差した。
「クレープぅ?もちろんオゴってくれるんでしょうね?」
 ふっと少しだけ呆れたような笑顔で、だが上から目線で要求する。これくらいしてもらってもいいはずだとでもいうように。
「うん!オゴるオゴる!」
 コクコクコクっとそれでも嬉しそうに何度もうなづくと、じゃ行こう!っと再びレイの手を取った。
 もう今度はレイも文句を言わなかった。

  ☆

 翌日、掃除当番で遅れるというレイと、補習を受けているうさぎが不在のクラウンに、亜美とまことだけがのんびりと過ごしていた。
 一応宿題のテキストは開いてはいるのだが、どうにも勉強に関しては集中力の欠けるまことはぼんやりとしていた。
「ねぇ亜美ちゃん?」
「ん?」
「ヒマだねぇ」
「そう・・・?」
「ヒマじゃない?」
 正直、亜美はまことと二人でこうして過ごせることが嬉しかったので退屈とかいう気が全くしなかった。
 だがまことは退屈だと感じているということが、自分の気持ちが一方通行だと言われてるようで少し寂しかった。
「ね、亜美ちゃん?」
「ん?」
「アイスクリーム食べたくない?」
「え?」
「ね?行こう?美味しいとこあるんだ」
 ガタンと椅子を蹴り上げて立ち上がると、まことは亜美の手を取って立たせた。時々こういう思いつきで行動するところがあるまことだったが、あまりにも強引な展開に驚いた亜美は顔を上げる。
 そこには太陽のような満面の笑顔があった。
 ドクンと心臓が跳ねる。
「まこ・・・ちゃん?」
「ん?何だい?」
 握られた手首が熱い。
 自分の感情を悟られそうで怖い。
 きゅっと目を閉じる。
「ううん・・・何でも無い」
 再び俯いてしまう亜美の、更に下にまで腰をかがめてまことが覗き込む。
「イヤだった?無理矢理誘っちゃって悪かったかな?」
 すまなそうに眉をひそめる。
「え?あ、ち、違うの!そうじゃなくてその・・・レイちゃんに悪いかなって・・・」
「へ?レイ?何でそこでレイが出て来るの?」
「だってまこちゃん・・・レイちゃんと仲いいし」
「そう?うさぎとも亜美ちゃんとも仲いいつもりだけど?」
「でも・・・」
「亜美ちゃんもしかして・・・あたしのこと怖い?」
 そう言って立ち上がるまことの表情はどこか寂しげで。
「え?」
 全くもって予想外の言葉に今度は亜美が呆然と見上げる。
「ごめんね亜美ちゃん」
 そっと繋がれていた手が離れようとするが、それを亜美は慌てて掴み直した。
「違うの!」
「え?」
「違うの・・・あたしはまこちゃんのこと好きだし、怖いなんて思ってないわ!」
「亜美ちゃん?」
「ごめんなさい、誤解させて」
「あ、いや、いいよいいよ。亜美ちゃんありがとう」
 よしよしと大きな手の平で亜美の頭を優しく撫でるまことの顔は、嬉しそうに微笑んでいた。
「んじゃさ」
「え?」
「行こう?アイス食べに」
「うん!」
 二人は仲良く手を繋いでクラウンを後にした。



「ね、一口もらっていい?」
 まことがあーんと口を開ける。
 自分のアイスをまことの口元に運んであげると、パクっと食いつかれた。
「おいしい!これもいいな。じゃあ今度はこれ」
 今度は自分のを亜美の口元に差し出す。
「いいの?」
「何で?あたしも貰ったもん」
「それじゃ」
 ペロリと遠慮がちに一口舐める。
「おいしいわね」
「だろ?」
 自分が作ったわけでもないのに自慢げに胸を反らした。



「さて、今からどうしよっか?」
 ベンチに座り、アイスクリームを食べ終えた二人はぼんやりと空を眺めていた。
 まことの言った通り、そこのアイスクリームはホントに美味しかった。
 そんな余韻に浸っている時に現実に引き戻され、亜美はふっと腕時計に視線を落とした。
「あ!わたし塾に行かなくちゃ」
 いつものクセでその言葉が口をついて出た。
 一日くらい休んでもいいのにと思わないでもないのだが、やはりそうも行かない。
「え?そうなの?まぁ~塾じゃ仕方ないかっ」
「ごめんね」
「いーっていーって!送るよ」
「え?いいわよ大丈夫!」
 ぷるぷると首を振る。
 単純に悪いと思って遠慮しただけだ。
「いいからさっあたしが行きたいんだもん。行こう?」
 そうまで言われて断る理由が見つからなかったし、まだもう少し一緒にいられるのが単純に嬉しかった。
「・・・ありがとう」
「ん?」
「ううん」

  ☆

 亜美を送り届けた後、まことは何となしにプラプラと公園に戻って来た。
 もう今日はクラウンに行く必要もないかなと、ベンチに座ってボーっと紅く染まりはじめた空を見上げていた。
 その時だ
「まこと?」
「へ?」
 背後からの声に驚き、首をダランと後ろに仰け反らすと、制服姿のレイが呆れたようにまことを見下ろしていた。
「レイ?」
「何してんのよ?こんなところで」
「ボーっとしてた」
「一人で?」
「一人で。レイは今帰り?」
「そうよ、今日はもう遅いしみんなもうクラウンにはいないんでしょ?」
「うん、亜美ちゃんは塾に行ったし、うさぎは・・・わかんないけど」
「亜美ちゃんと一緒だったんだ?」
「あぁ、うん、アイスクリーム食べてた」
「そっか」
「何?」
「別に」
 フイっと顔を背ける。
 レイの様子がおかしいことに気づいたまことは、ぽんぽんと隣の空いた場所を叩いてここに座れと意思表示をした。
 有無を言わせないという視線。
 まことの視線の意味が伝わったのか、諦めたように小さく息を吐くと渋々隣に座ってくれた。
「どうしたんだよレイ?」
「別に」
 と、単調にもう一度同じ返事を繰り返す。
「もしかしてさー妬いてたりして」
 うりうりとレイの頬を突つくが、すぐに
「なぁんてなっ」
 とあははっと声をあげて笑った。
「ばか」
 言ってレイは立ち上がると、上から睨みつける。
「え?あ、や、冗談だって冗談!ごめん」
 別に驚きはしないし怖くもないが、さすがに冗談がすぎたかなとレイの肩をぽんぽんと叩いて謝る。
「あたりまえでしょ!」
「だよねぇ」
「じゃ、帰るから」
「ん、じゃ」
「ちょっと・・・まことは帰らないの?」
 まだ腰を上げないまことを怪訝な顔で見つめる。
「あぁ・・・ん、もう少しいる」
 ひらひらと手を振る。
「そう・・・」
 くるりと踵を返して背を向け、数歩足を進めたところでピタっと足を止めたかと思うともう一度振り返り、再びまことのそばに歩み寄った。
「あーっもう!一時間後に家に行くわ」
 つっけんどんな物の言い方。
 何を言われているのかわからず、きょとんとレイを見上げる。
「え?」
「だからもう帰りなさいよ」
「何で?」
「ほら、早く!」
「あ、うん」
 レイの勢いに押され、言われるがままに立ち上がるといつもの場所でバイバイと手を振った。

  ☆

 きっかり一時間後にレイはインターフォンを鳴らした。
 行くと言ったら必ず時間は守るレイの為にまことはご飯を作って待っていた。
「相変わらずまことの料理はおいしいわね」
 一口食べたレイは素直にそう感想を洩らす。
 自分には出来ないことだと尊敬すらしてしまう。
「そ?レイに褒められると嬉しいなぁ」
 嬉しそうにふわりと微笑むまことの笑顔が眩しい。
「どうしてよ?」
「んー?だってあんま褒めてくんないじゃん」
「そんなこと・・・」
「あるよ?」
 テーブルに腕を寝かせ、その上に頬を寝かせて上目遣いで見つめられる。
「あたし怒られてばっかりじゃん」
「それは・・・」
「たまには褒めて?」
「うっ・・・」
 まことのおねだり視線に根負けしたレイは、そっと手を伸ばしてまことの頭をいい子いい子と撫でてやった。
「へへっ」
 気持ちよさそうに目を閉じる。
「寂しくない・・・?」
「え?」
 突然の、そして曖昧な質問にまことが目を開けた。
 言葉を続ける。
「一人暮らし」
「あぁ・・・慣れたよ」
 ゆっくり身体を起こす。
 目線がレイよりも高い位置に戻る。
「でも・・・たまには誰かにそばにいて欲しいと思うよ」
 トントントンっと人差し指で机を叩きながら踊るようにレイの手に近づく。
 触れると、人差し指をレイの人差し指に絡める。
 きゅっと引っ張ると、驚いたレイの身体がバランスを崩し、前のめりになった。
 その瞬間を逃さないようにレイの肩を抱き寄せ、耳元にふっと吐息を吹きかけた。
「きゃっ、な、何?」
「かぁわいい~」
「ば、ばかっ!」
「ね、泊まってけば?」
「イヤよ」
「え~?」
「まこと、何するかわかんないもの」
 ソロリソロリと今吐息を吹きかけられた耳を抑えながら逃げるように後ずさる。
「えーー?人をケダモノみたいに・・・ちぇっ」
 その時だ、テーブルの上に置きっぱなしになっていたまことの携帯が鳴り出した。
「誰だろこんな時間に」
 背面表示がチラリと見えた。
 亜美ちゃんだ。
 パカっと携帯を開くとカタカタとボタンを操作し始めるまこと。
「亜美・・・ちゃん?」
「あぁ、うん」
 それっきり無言で文字を追うまことの視線をレイの視線が追う。
 読み終えると手慣れた手つきで返信を返している。
 その様子をまだ黙って見つめるレイ。
 奇妙な空気が流れる。
「亜美ちゃんどうかした?」
 その空気に耐えられず、思わず聞く必要のない事を聞いてしまう。
「ううん大した用事じゃないよ」
 携帯に視線を落としたまま答える。
「じゃああたし帰るから」
「え?ホントに帰るの?」
 パカンとメールを打ち終わった携帯を閉じる。
「どうして?」
「どうしてって・・・まぁ用事があるんなら仕方ないけど・・・」
 次の言葉を黙って待ってみる。
 別に用事があるわけじゃない。まことが望むのなら泊まってもかまわない。
 だが・・・。
「なら亜美ちゃん呼んでみようかな・・・」
 ぽつりと呟くようにまことの口から洩れた言葉に愕然とした。
「メールしてみたらいいじゃないっ」
 捨て台詞だった。
 レイにしては冷静になれず、まことの無神経さに無性に腹が立ってカバンを掴み、さっさと立ち上がった。
「じゃね」
 背中に視線を感じながらも、振り返らずに玄関に向かう。
 無言で靴を履き、取手に手をかけたその時だ。
 いつの間にすぐ後ろに来ていたのかグイっともう片方の手を掴まれ、身体ごと引き戻されたその先はまことの腕の中だった。
「え?」
「ごめん、無神経で」
「何が?」
「レイにもっといて欲しくてイジワルしちゃった・・・ごめん」
 髪に顔を埋めるとゆっくりと何度も繰り返し梳いてくれるその手が気持ちよくて。
「さっきの嘘だから」
「何が?」
「ホントは寂しいよ、だからいてよ・・・今日だけでいいから」
「調子いいわね」
「何とでも言ってよ」
「・・・わかった・・・けど何かしたらすぐ帰るから」
「わかった」


「あたし下に布団敷いてそっちで寝るからベッド使ってよ、狭いけど」
「え?いいわよあたしが下で寝る」
「いいって、レイはお客さんなんだから」
「いいわよ!」
 今更お客扱いされるのがイヤだった。
「それじゃ一緒に寝る?」
「え?」
「どうぞ」
 掛け布団を捲り上げると、おいでとレイのスペースを空けるように身体をずらす。
 何だかまことのペースに引きすられている気がしないでもないが。
「ん」
 それでも素直に布団に潜り込むと、くるりと掛け布団でくるまれた。
 空気が遮断され、お互いの体温が中にこもる。
「あったかぁい」
 きゅうっと抱きしめられ、すりすりと頬を寄せてくる。
「んもう、やめなさい」
 身体を捻って逃げ出そうとするが、まことの力に叶うわけもなく。
 だが、次のまことの言葉がレイを驚かせる。
「へへぇ、レイおやすみ」
「え?」
 そのまま髪に顔を埋めて眠ろうとするまことに、逆に拍子抜けした。
 別に期待していたわけでもないし、自分たちがそんな風になるなんて想像も出来ない。
 自分だけドキドキするのがバカみたいに思えてきた。
「まこと?」
 が、聞こえてきたのは安らかな寝息だけだった。
「バカ・・・」
 ごそごそと再び身体の向きを変えると、まことに向き合う形で顔をすり寄せてレイも眠った。


 カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて、レイは目覚めた。
 驚いた事に一度も夜中に目が覚めることもなく今まで眠っていたらしい。
 目の前にはまことの胸があり、背中にはしっかりとまことの腕が巻き付いていた。
「まこと」
「あ、起きた?」
 寝ていると思っていたまことがレイの呟きに即座に反応したことにまた驚いた。
「え?」
「いやぁ気持ち良さそうに寝てたから起こすの悪いかと思ってさ」
 よしよしと背中に回っていた手がレイの髪を撫でるとそのまま額にキスを落とす。
「ま、まこと?」
「ん?」
 ごそごそと今度はレイの身体を組み敷くように上になると、唇を近づけて来るまことにレイは素早く反応した。
「もう起きる!」
 ガバっとまことの腕を振り払うと逃げるように身体を起こす。
「何かしたら帰るって言ったわよね?」
「あぁ、言ってたね」
「帰る」
「本気?」
「本気よ」
「そか」
 拗ねたようにうつ伏せに転がり、枕に顔を埋めてしまうまことは、そのまま肘から先だけを上げてひらひらと手を振った。
「じゃね」
「ばか」
 レイは顔を真っ赤に染めたまま、借り物のパジャマを脱ぎ捨ててさっさと着替えると、今度こそ部屋を出る瞬間
「レイのばーか」
 と、まことがぽつりと呟いたのが聞こえた。

  ☆

 気分の落ち込んだまま惰眠をむさぼっていた時だ。
 ふと思いついてまことは携帯に手を伸ばし、カタカタとアドレスを呼び出し、発信ボタンを押した。
 相手が出た瞬間。
「おはよぉ~」
 名も名乗らずに挨拶から入った。
「まこちゃん?どうしたの?」
「んー?いや、亜美ちゃん何してんのかなぁって思ってさ。起きてた?」
「えぇ」
「さすがだねぇ~」
「何か・・・あった?」
「別に?昨日メールくれたからさ」
「まこちゃん、今から行っても・・・いいかしら?」
「え?」
「30分くらいで行けると思うけど」
「わかった・・・待ってる」
 電話を切った後も数分はそのまま寝転がっていたが、さすがにこのままじゃまずいと思い、着替えることにした。

 亜美が来る頃にはすっかり着替えも済ませ、布団も片付けていた。
 レイがいたという痕跡も残っていないだろう。別に隠すことでもないが、なんとなくバレたくない。
 すっかり目も覚め、紅茶でも入れようとキッチンに立った頃、亜美はやってきた。
「おはよ」
 紅茶のカップを片手にドアを開けて迎え入れる。
「あれ?」
 亜美の頬が若干紅潮している気がして顔を覗き込んだ。
「え?な、何?」
「走って来たの?亜美ちゃん」
「え?ど、どうして?」
「顔真っ赤だよ?」
 そっと空いた手で亜美の頬に触れる。
 ビクンと身体を硬直させる亜美に、逆にびっくりして思わず手を引いてしまった。
「大丈夫だから」
「そ?紅茶入れるからどうぞ。あ、朝ご飯食べた?」
「ううん」
「一緒に食べよう」
「いいの?」
「大歓迎」
 大げさに両手を広げて歓迎の意を表するとキッチンに立ち、作りかけのフレンチトーストを再び焼き始めた。

「おいしいわ!」
「ホント?」
「うん!やっぱりまこちゃんお料理上手ね」
「嬉しいな!これくらいしか自慢出来るものないからね」
 いつもコンビニ等で済ませてしまう自分には真似出来ない。
 褒められたのがよほど嬉しかったのか、ぱぁっとまことが明るく笑った。
「そんなことないわ、まこちゃんすごく女の子らしいもの」
「そっかなぁ?あ、そういえば亜美ちゃん何か用事だった?」
「え?」
「や、こんな朝早くにさ」
「迷惑・・・だった?」
「いやいやすっごい嬉しいんだけどさ、どうしたのかなって」
「まこちゃんの・・・」
「あたし?」
「声に元気がなかった気がして・・・」
「あぁ!」
 思い当たることがあるのか、一瞬黙ってしまう。
「ごめんね、心配させちゃった?」
「大丈夫?まこちゃん」
 亜美にはまことが少し無理して笑っているように見えた。
「ん、大丈夫だよ。でも嬉しい」
「え?」
「亜美ちゃんが来てくれたのがすごく嬉しい」
 今度は本当に嬉しそうに見える。くるくる変わるまことの表情に戸惑いを覚える。
 いくら勉強が出来てもこういう時にどうすればいいのかという答えをすぐに出せるほど人と付き合った経験も少なく、悩んだ末に亜美は自分の席を立ち、まことの隣に立った。
「亜美ちゃん?」
 座っている分亜美よりも少し低い位置に来たまことの頭に手を伸ばすと、ぎゅっと抱き寄せた。
「え?」
「まこちゃんは一人じゃないから」
「亜美・・・ちゃん?」
「いつでも呼んで?わたしでよければいつでも来るか・・・え?」
 まことの腕が亜美の腰に巻き付き、ぎゅうっとしがみつくように抱きついて来た。
「ありがと、亜美ちゃん」
「うん・・・」
 腕に力を込め、亜美の身体を力一杯抱きしめた。
「亜美ちゃん大好き」
 ドクンと亜美の鼓動が早まる。
 まことの言う「大好き」が、自分のそれとは違うのだろうなというのはわかっているが、それでも嬉しかった。
 まことを独り占めしたいという気持ちが強くなるが、理性を総動員させてそれを抑える。
「まこちゃん?」
「ん?」
「痛いわ」
「うあっご、ごめん!」
 慌てて離れるまことの手を握った。
「何があったかは聞かないけど、無理はしないでね」
「・・・うん」
「今日はクラウンに来る?」
「うーん、わかんない。ちょっと出かけるから」
「そうなんだ?それならわたしそろそろ帰るわね。無理しないで何かあったらホントに呼んでね?」
「ん、ありがとね亜美ちゃん」

  ☆

 亜美が帰った後、しばらく窓の外をぼんやりと眺めていたが、ふっと机の上の写真立てに視線を送る。
「さってと」
 ゆっくりと腰を上げると、でかける用意をしてまことは家を出た。

  ☆

「父さん母さん、久しぶりだね」
 まことは両手を合わせると話しかける。
 相手は両親の眠るお墓だった。
 何も答えてはくれないが、それでも話し続ける。
「やっぱさ、この時期になるとダメだね、寂しくてさ・・・どうにかなっちゃいそうだよ」
 泣きそうな顔で笑う。
「どうして連れてってくんなかったんだよ」
 今度は悔しそうにそう呟く。
「ねぇ、あたしどうしたらいい?」
 答えてくれるハズもない墓石に問いかける。
 そして案の定返事が返って来ることはなかった。
 ふらりと立ち上がると、まことは無言で両親の元を去った。

  ☆

「まこちゃん」
 マンションの前まで帰ってきた時だ、暗がりからいきなり声をかけられた。
「え?亜美ちゃん?どうしたの?」
「やっぱり・・・少しまこちゃんが心配で」
 はにかみながら俯く。
 ホントにいい子だなぁ。
「ありがと」
 嬉しくて少し泣きそうになる。
 こんな時に優しくされたら縋りたくなる。
 でもそれはしちゃいけないことかもしれないと、理性が必死でそれを止める。
「まこちゃん?」
「あ、うん、大丈夫だよ?だいじょう・・・ぶ・・・え?」
 言い終わる前に、まことの身体は亜美に抱きしめられていた。
 もちろんまことの方が身体が大きい分、抱きつかれたと言った方が正しい感じだが。
「亜美・・・ちゃん?」
「無理してない?」
「ちょっとしてる」
「どうして?」
「あたしが乗り越えなくちゃいけないことだから」
「一人で?」
「一人で」
 言いながらもまことの腕は亜美の背中をきゅっと抱いていた。
「ごめんね亜美ちゃん」
「ううん、まこちゃんが決めたことだもの」
「ごめんね」
 二回目のごめんには、この先亜美を傷つけることになるかもしれないという予感から出た言葉だった。

  ☆

 亜美と別れ、手の中で鍵をチャラチャラと弄びながら部屋に向かう。
 ドアの前に人影がうずくまっているのが見え、思わず声を荒げてしまった。
「誰だ!?」
「今日どうしてクラウンに来なかったの?」
 ゆらりと立ち上がると、俯いたまま呟くように問う。
「何だ、レイか。ちょっと用事だって亜美ちゃんに言っといたんだけど」
 そっけなく言うと鍵を差し込んで回す。
 ガチャリという渇いた音が合図かのようにレイが顔を上げた。
「怒ってるの?」
「怒ってるのはレイだろ?」
「あたしは!・・・別に・・・」
 言葉を濁しながらもまことを追うように玄関に入る。
「何?じゃあ今夜も泊まる?でも今夜はあたし何もしない自信ないよ」
「まこと!」
 ダンっ
 閉めたドアにレイを追いつめ、両腕で逃がさないように囲む。
「今帰らないともうどうなっても知らないからな」
 だがレイの瞳はキッとまっすぐ睨み上げてくる。
「何だよ?」
 レイの踵が浮く。
 その両手に両頬を包み込むようにして引き寄せられたかと思うと、柔らかな唇が触れた。
 一瞬の出来事だった。
「んんっ?」
 さすがに少し動揺を見せたまことだったがすぐに頭を切り替えた、というよりレイの唇の柔らかさに頭が真っ白になっていた。
 唇が離れた後も少しの間呆然としていたくらいだ。
 この唇が自分の唇を塞いだことが夢なのか現実なのかわからず、確かめるようにジっと見つめる。
「ふざけないでよ?何よキスくらい!こんなの何でもないわよ」
 その声で我に返り、視線を少しだけ上げた。レイの顔は言葉とは裏腹にすっかり紅潮していた。絶対平気じゃないって顔だ。
「な、え?いや、でも・・・」
「まことが望んだことでしょ?」
「うっ、それはそう・・・だけど」
「で?後は?何が望みなの?」
「もういい・・・」
「え?」
「もういいよ!」
 くるりと振り返りついて来いとでも言うように背中を向けた。



「何があったのよまこと?」
「・・・命日なんだよね」
「ご両親の?いつ?」
「今日」
「お墓参り行ってたんだ?」
 無言で机の上の写真立てを手にするとうなづく。
「あたしさ、まだ小さかったんだけど、一人ぼっちになるのが耐えられなくて何度も死のうとしたことがあったんだ」
「え?」
 今のまことからは全く想像できない話に心の底から驚く。
「まぁ死ななかったから今ここにいるんだけどさ」
 カタンと手にしていた写真立てを戻すと、窓の外を見つめる。
「でもどうしてもこの時期になると情緒不安定になっちゃって、誰でもいいから一緒にいて欲しいって思うようになって・・・」
 くるりと視線をレイに戻す、その瞳は少し寂しげだった。
「誰・・・でも?」
「うん、誰でも。あたしのこと抱きしめてくれる人なら誰でもよかったんだ。男でも女でも・・・亜美ちゃんでもレイでも・・・さ」
 自嘲気味に笑う。
「亜美ちゃんにもレイにも想ってもらう資格、あたしにはないんだけどね」
 ツカツカツカと歩み寄ったレイがまことの目の前に立ちはだかると、パシンっと小気味のいい音が響いた。
 まことの頬が赤く腫れた。
 何が起こったのか理解する前にいきなりレイがキレた。
「資格って何?ふざけないでよ!」
「レイ・・・?」
「確かにあんたのそのハッキリしないとことか、自虐的なとことか、そのくせ人にはおせっかいなとことかホントに腹が立つこといっぱいあるけど、それ以上にまことのいいところいっぱい知ってるわ!あたしも・・・亜美ちゃんも。そうじゃなきゃこんなにあんたのこと気にならないわ!」
 頬を押さえて黙り込むまこと。
「あんたのことわかってあげられなかったあたしもあたしだけど、ちゃんと言いなさいよ!わかんないじゃない!」
「言ったら抱きしめてくれたのか?」
「当たり前でしょ!」
「言わなきゃ抱きしめてくれないんだ?亜美ちゃんは抱きしめてくれたのに」
「じゃあ亜美ちゃんにそばにいてもらいなさいよ!」
「出来るわけないだろ!」
「何でよ!」
「レイがいいからに決まってんだろ!」
「!!!」
 凍り付いたように言葉を失う。
「そばにいてよ・・・もう一人はイヤだ!」
 半ば叫ぶように声を上げた瞬間、全身の力が抜け、崩れ落ちるまこと。
 慌ててその身体を支えるようにしっかりとレイが抱きとめる。
「ばか!」
 腕の中にすっぽり収まるレイの身体から体温が伝わって来ると、それがまことの心を落ち着かせた。
「そばにいてよ、レイ」
 もう一度、今度は呟くように言う。
「わかったから」
「ホントに?」
「うん」
 ポンポンと背中をあやすように優しくたたく。
「そのかわり、あたしを選んだからには覚悟した方がいいわよ」
「覚・・・悟?」
 レイはまことの身体をしっかり支え起こし、ドンっと窓に押し付けるとまっすぐ射抜くような視線をぶつけ、そしてキスをした。
「誰でもいいとか・・・今度言ったら許さないから」
「・・・ん」
「あたしより先に死ぬのも許さない」
「・・・ん」
「そばにはいる。抱きしめてもあげる。でもまことにその覚悟がないうちはあなたがあたしを抱けるとは思わないで」
「レイには・・・あるの?」
「なきゃこんなこと言わないし、しないわ」
 カプっとまことの首筋に強く吸い付くと唇の痕をつける。
「痛っ」
「忘れないで、あたしの覚悟」
 やっと覚悟が決まったのか、まことの腕がレイの背中をぎゅっと抱きしめ、髪に顔を埋めてしゃくり上げるように言葉を絞り出した。
「絶対・・・忘れない」
 ちょっとだけごめん、父さん、母さん。
 まことは机の上の写真立てをそっと伏せる。
 それを合図に二人はどちらからともなく唇を求めたはじめた。
 飽きるまでそれは何度も繰り返された。
 一瞬まことの脳裏に亜美の顔がよぎったが、打ち消すようにレイを求めた。
 まことの覚悟を受け取ったのかレイはまことのしたいように、されるがままに身を任せた。






「まこと・・・」
「ん~?」
「あんたねぇ」
「ん~?」
「もういい加減にしなさい」
「へ?」
「疲れたわ」
「え~?やだぁ」
 ダダっ子のようにすりすりと甘えるように寄って来るまことを、呆れたようにレイは受け止める。
「レイ~」
「あぁ~わかったわかったってば」
 ちょっと・・・早まったかもしれないわ。
 心の中で溜息をつきながらも、もう手放せない予感をレイはひしひしと感じていた。






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Date:2009/06/07
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