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LR様よりいただきました




『熱』


「どうぞ。」
 ドアの向こうで声がする。レイの心臓が少しばかり速度を増す。
 ドアを開けるとベッドに身体を起こした美奈子がいた。
 その姿は外からの逆光で髪は亜麻色に輝き、思わず前世の記憶の中のヴィーナスの姿と重なる。
「どうしたの?」
「別に」
 いつもの無愛想な顔で答える。
「また、倒れた・・・て?」
「うん。そろそろヤバいかも」
「やめてよ・・・」
 泣きそうな顔。マズいと思った美奈子はすぐに話題を変える。
「・・・ね、今ね、あたしのホームページ更新してるの。見る?」
「興味ないわ」
「そう言わずに。ちょっとはさあ、付き合いってのを学びなさいね」
「余計なお世話よ」
「ホラ、見てて。ここの部分をクリックすると・・・」
「え?どれ?」
 ベッドに手をつき、身を乗り出すレイ。その横顔の左頬にすかさず美奈子はキスをする。
「!ちょっと!」
 キッと睨んで美奈子の正面を向くレイ。逃げない所がまだ甘い。>br>
「何す・・・!」
 正面を向いて文句を言おうとするレイの顔を両手で包んで今度は唇に蓋をする。
 レイの頭の中がショートする。逃げるチャンスを失った身体はもう言うことをきかない。
 抗議のために開かれた唇に忍び込んだ美奈子はレイの言葉を奪っていく。
 絡められる熱い舌。吸われる舌。美奈子がレイの口腔内の支配権を握る。
 ゆるりと上顎を舌で撫ぜられ、ゾクリと背中が震える。
「あ・・・」
 思わず声が漏れる。(どこでこんなキス習うのよ!)意識は拒んでも、素直に反応する自分の身体が憎らしい。
 不意に美奈子から解放されたレイが目を開けるとうっとりと目を細める美奈子の顔があった。反撃の言葉が出ない。
(ヤバい・・・どうしよう)
 逃げればいいのに(笑)
 そして再び美奈子の吐息がレイの唇を掠めようとした―――――。
「こんちはーーー!」
 病室のドアが大きく開かれた。
 固まる2人。と、1人。
「だめだよ、うさぎちゃん。ちゃんとノックしないと」
「うさぎ、どうしたんだよ?あ、レイ。来てたんだ」
 後からやって来た亜美とまことの声がする。
「いらっしゃい」
 レイを解放した美奈子が何事もなかったように微笑む。さすがプロだ。
 ちょっとぎこちないのは素人目には見抜けない。レイは固まったままだ。
「いいなーー!」
 うさぎの声が乾いた病室にこだまする。レイと美奈子の心臓が跳ね上がる。
「え、うさぎ。何があったんだよ?」
「今ね、今ね、美奈子ちゃんがね、こうやってね、」
 うさぎは亜美の頬を両手で挟む。亜美が困惑する。
 その様子に美奈子は薄笑いを浮かべてはいるが動揺の汗を滲ませていた。
「レイちゃんにね・・・」
 レイは背中を向けたまま生きた心地がしなかった。
「レ・・・マーズの顔が赤かったから、熱があるかと思ったのよ」
 確かにレイの顔は赤い。見事な言い訳だ。
「あ、ホントだ」
まことがレイの顔を覗き込む。
「か、風邪かしら?」
 硬直が解けたレイが言う。
「レイちゃん、大丈夫・・・?」
 亜美も心配そうだ。
 うまくいったようで、内心ほっと胸をなでおろす。美奈子のナイスなアイデアに心の中で賛辞を贈ろうとした。
 が、はたと考えると、自分をこのような状況に突き落としたのは当の美奈子本人である。
「大丈夫よ、大丈夫」
 3人には気づかれないように美奈子をキッと睨むレイ。
 こちらも気づかれないようにニヤ、と笑う美奈子。
「ふーん。あ。コホン、コホン。美奈子ちゃん、あたしも風邪かもしれなーい」
 うさぎがわざとらしい咳をして甘ったれた声で美奈子に擦り寄る。
「「「うさぎ!」」ちゃん!」
「あは。やっぱダメか」
 いつものクラウンでのノリが病室で再現される。
 時折
「あ!レイちゃん美奈子ちゃんのこと美奈って呼び捨てにしてる~!」
 といううさぎの天然のツッコミと
「レイ、いつもこうして逢ってるんだ?ズルイよ」
 と、まことのこちらも天然のツッコミがレイを追い詰める。
 それに反論するレイを「仲いいのね」と他意の無い笑顔で勝手に場を締めてしまう亜美。
 美奈子も初めはレイに助け船を出していたが、そのうち困るレイをむしろ楽しむようになってしまった。
 レイは本当に頭痛がして熱が出てきそうだった。
 帰り際、美奈子は病室の入り口まで4人を送る。
「美奈子ちゃん、早くよくなってね!」
どさくさに紛れてしっかりと美奈子の手を握るのはうさぎ。
「美奈子ちゃん、無理しちゃダメだよ」
羨ましそうに後ろで付け足すのはまこと。
「また・・・お見舞い来ても・・・いいかな・・・?」
 遠慮がちに訊くのは亜美。
「じゃね」
 素っ気無く美奈子を一瞥して背を向けるのはレイ。
 そのレイの肘の服をつい、と引っ張るのは美奈子。
「?」
 今回のトドメ。
 振り向いた瞬間唇に舞い降りた3人の目を盗んだキス。
 速攻で後ずさり、叩こうとした手は3人の手前、握り締められる。
 ニヤリ、といつもの笑みの美奈子。
 レイが後をついて来ていないことに気づいた3人が振り返る。
「レイちゃーん、どうしたの?」
 踵を返し、真っ赤な顔をしてツカツカと追いつくレイ。
 その後ろで手を振る美奈子。手を振り返すうさぎ。
「レイ、大丈夫かい?」
「大丈夫よ!!」
「さっきより顔が赤くなってるよ?」
「何でもないわ!!」
 競歩の勢いで病院を後にしたレイ。そしてそのまま本当に熱を出して寝込んでしまったらしい。
 こっそりと病院を抜け出して美奈子がお見舞いに来たということは内緒。
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Date:2008/08/22
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