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□ 夏実×美幸 □

距離

念願の(?)美幸視点です(笑)
大人なだけに?って感じ過去・現在・未来の続きです
 



 踏み越えるのは結構簡単だった。
 いや、簡単というよりもアッサリという方が正しいかも。
 ひょんなことで相棒でただの同居人から、かけがえのない相手になってしまった。
 夏実があんなに自分のことを想ってくれているとは夢にも思っていなかった。
 もちろんずっと望んでいたことではあったのだが、あんな夏実を目の当たりにすると、もう何もかも・・・段階とかそういうのが全部どうでもよくなってしまった。
 美幸の性格からして、きっちり全部清算して、キレイな状態で始めたい・・・といつもならそう思っただろう。
 でも・・・全てがどうでもよくなった。
 ただ夏実を・・・夏実の気持ちを受け入れたくなった。
 自分の気持ちをわかって欲しかった。
 それだけだ。

  ☆

「美幸?」
 夜中に喉の乾きを覚えた美幸は、電気もつけずに冷蔵庫からミネラルウォーターをグラスに注いでいた時だ、声をかけられたのは。
 チカチカと電気がつく。突然の光に目が慣れずに細める。
「夏実?」
「どうしたの?」
「ん。喉がかわいちゃって」
 コクンっと一口水を流し込む。
「あたしもちょうだい」
「ん」
 食器棚からもう一つグラスを出そうと振り返る。
「あぁ、これでいいって」
 美幸の手からグラスを取ると、飲みかけの水を一気に流し込んだ。
「ねぇ・・・夏実?」
「ん?」
 後悔してないの?
 喉から出かかったその言葉を飲み込む。
「何?どうしたの?」
「あ、ん、何でも無い」
「・・・そう?」
 あれから一週間、なぜかずっと寝室はいつものように別々だった。普段の生活も、いつもと何ら変わることはなく、普通過ぎるくらい普通だ。一線を踏み越えたのだから、もう少し何かが変わるのかと思っていた。だからといってこちらからアクションを起こすことも出来ずにいた。

――もっと一緒にいたい――

 その言葉をも飲み込む。
「明日も早いんだから、もう寝ましょ」
 代わりに出たのは、そんなたわいもない言葉だった。

  ☆

 ベッドに戻った後も、美幸の目は妙に冴えてしまって、もう眠れるとは思えなかった。
 ぼんやりと真っ暗な天井を見上げる。壁を隔てた向こうにいる夏実。そのたった一枚の隔たりが遠く感じる。
 その時

 トントン

 小さく、遠慮がちなノックの音が聞こえた。
 気のせいかと思ってドアを見つめていると、もう一度聞こえる。
 気のせいじゃない。
「夏実?」
「ん・・・起きてる?」
「ん」
 ドアを開けて夏実を迎え入れる。
「どうかしたの?」
「目が冴えちゃって」
 テヘっと舌を出して笑う。
「そう、わたしもなの」
 部屋の電気をつけようとスイッチに手を伸ばす。その手を寸前で止めるのは、夏実の手。
「ん?」
「つけなくていいよ」
「え?」
「一緒に寝ても・・・いい?」
「え?」
 ドクンと心臓が跳ね上がる。
「い、いいけ・・・ど?」
 美幸の返事に、よかったぁと硬かった表情が一気に崩れた。

 身を寄せ合うようにしてベッドに潜り込む。
「ねぇ美幸」
「え?」
「後悔してない?」
「・・・!!!」
 一瞬言葉に詰まった。
 まさに自分が夏実に問いかけたかった言葉だったから。
「あたしと・・・あんなことになって」
「してないわ」
 天井を見上げたままキッパリと答える。
「夏実はどうなの?」
「してないよ、でも・・・」
「でも?」
「思ったよりアッサリだったなぁと思ってさ」
「そうね」
 一瞬の沈黙。
「でも、そんなものかもしれないわね」
「うん、そだね」
「ホントはね」
「ホントはさ」
 二人の声が重なる。
「な、何?」
「美幸こそ何?」
 再び沈黙。
 先に口を開いたのはやはり夏実だった。
「ホントはさ、この一週間、もっと一緒にいたいなって思ってたんだ」
「うん」
 自分もだ。
「でも何かその・・・アッサリ越えちゃったから逆にどうしていいかわかんなくなったというか・・・ね」
 その気持ちはわかる。美幸もそうだったから。
「美幸?」
 無言で聞いていた美幸の反応に、自分の声が聞こえているのかと不安そうに名を呼ぶ。
「あ、うん、聞いてる」
 ごそごそと夏実の方に身体を向けると、そっと頬を撫でた。
「ごめんね」
「え?」
「わたしも同じ事考えてたの」
「え?」
「一緒にいたいって言葉が中々言えなくて・・・不安だった?」
「不安っていうか・・・何だろう」
 自分の気持ちをうまく言葉にできないらしい夏実。
「自分が情けないって感じかな」
「ふふっ」
 きゅっと夏実の胸に顔を埋める。
 お互いそれなりに経験を積んだ大人なだけに、下手に相手との距離を計ろうとしてしまったのかもしれない。
「お互いさまね」
「そ?」
「そう」
 きゅっと夏実の腰に手を回す。
「もう寝ましょ、明日も仕事よ」
「はぁい」


 二人の距離はこうしてまた少し縮まった。


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Date:2008/10/02
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