Planetarium SS置き場

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 美奈×レイ □

前夜

りんごのとこらへんが一番好きです




 畳の上にゴロンと寝転がると、レイはそろそろ暗くなる時間にさしかかろうというのにまだ役割を果たしていない電灯をボーっと見つめていた。 
 何だかこの部屋、こんなに広かったかしら?という錯覚に囚われる。 
 ムリもない、つい何日か前までほんの数日とはいえ居候がいたのだから。 
 その居候は、いよいよ明日に迫った手術に備えて入院していた。 
「はぁ~」 
 ため息をつくと、鳴るはずのない携帯をじっと見つめる。 
 と、その時だ。 
 
 RRRRRR 
 
 その携帯が突如鳴り出した。 
 最も電話なんて突然鳴るものなのだが、驚いて取り落としてしまった。 
「あ、ちょ、も、もしもし?」 
「マーズ?」 
「火野です」 
「レイ」  
「何よ?美奈」  
 レイは美奈子に「マーズ」と呼ばれるたびに、思い出させるようにイヤミを返すことにしていた。  
 「マーズ」と呼ばれるたびに自分たちの間に、何だか距離を感じてしまうから。 
 だから最近はみんなと同じように「レイ」と呼ばせるようにしていた。 
「別に、電話してみただけ」 
「ふーん、明日手術ね。しっかりやりなさいね、絶対大丈夫だから!」 
「その言葉、直接聞きたいわね」 
「え?」 
「面会時間は8時までよ」 
 そう告げるなり、いきなりガチャっと電話は切れた。 
「知ってるわよ、来いってことね」 
 はいはいっとゆっくり立ちあがると、出かける準備をした。 
 時計を見ると6時半をしめしていた。レイの顔には心なしか笑みが浮かんでいた。 
 
  ☆ 
 
 ガラリ 

「美奈?」 
「いらっしゃい、レイ」 
 ベッドで体を起こしてパソコンとにらめっこしていた美奈子が、顔を上げると微笑む。 
「まぁ~ったく、何よ?こんな時間に呼び出されてもゆっくり出来ないじゃない」 
「だって、あなた今日来なかったじゃない?みんな来てくれてたのにさ」 
「それは・・・」 
 レイはうつむいて言い訳を考えていたが、うまい言い訳が思い浮かばない。 
「冗談よ。ヒマだったの」 
 美奈子はくすくすっと笑うと手招きをして椅子をすすめる。 
「手術前日とは思えない余裕よね」 
 レイは椅子に腰かけるとベッドの上に頬杖をつく。 
「そうでもないわよぉ~?一人でいられないくらいには不安だもの」 
 サラっとそう言うと、レイを見て微笑む。 
 レイの眉間にシワが寄る。 
「ほぅら、またここにシワ寄ってる、美人が台無しよ」 
 美奈子はレイの眉間に人差し指を突きたてると、くすくす笑う。 
「んもう~あ、果物買ってきたんだけど、何か食べる?あ、それとも今食べちゃダメだったっけ?」 
「大丈夫、りんご食べたい」 
「はい」 
 レイは一つ取り出すとそのままポンっと手渡す。 
「え?」 
 呆然と手の上に乗ったりんごを見つめる美奈子。 
「普通さぁ」 
「え?何?」 
「普通さ、皮剥いてくれたりしない?」 
「うっ」 
 レイはポムっと少しだけ顔を赤くすると、そばのサイドテーブルにあったナイフを手にする。 
「や、やるわよ、貸しなさいよ」 
 りんごを奪い取ると、そっとナイフを入れる。 
 ザシュっ 
「もしかして・・・苦手?」 
「うっ、そ、そんなこと!そりゃまことに比べたら・・・」 
 ブツブツ言いながらも皮を剥く。 
「はい、これでいい?」 
「ありがと」 
 いびつな形に剥かれたりんごを受け取ると、ポイっと口に放り込む。 
 もう一つをフォークで刺すと、レイの口に持って行く。 
「な、何?」 
 意味がわからず一瞬たじろぐレイ。 
 そんなレイがおもしろいのか、美奈子がとびっきりの笑顔で一言。 
「あーん♪」 
「ば、ばかっ」 
 レイが顔を真っ赤にして後ずさる。 
「何よう~いいでしょ、ホラホラ、誰も見てないからさっ、はいあーん」 
「うっ、ん」 
 レイはあんっと口を開けるとシャクっと半分だけりんごをかじる。 
「おいしい?レイ」 
「おいしいに決まってるでしょ?あたしが買ってきたんだから!」 
「あ、そっか」 
 そう言うと残りの半分を自分の口に放り込むと、シャリシャリと小気味のいい音が聞こえる。 
 遊ばれてる!絶好調の美奈にはかなわないことを痛感したレイだった。 
 
  ☆ 
 
「あ、もう8時だわ帰らなくちゃ」 
 立ちあがろうとするレイの手首を、美奈子がギュっとつかむ。 
「何?」 
 思いがけず強く握られて驚いたレイはジっと顔を俯けている美奈子を見つめる。 
「帰らないで・・・」 
「え?」 
「一人にしないで」 
 レイは俯いている美奈子の顔を下からのぞき込む。 
「ここ・・・エキストラベッドある?」 
 美奈子が驚いてガバっと顔を上げる。 
 気のせいか何だか半分泣き出しそうな瞳でレイを見つめる。 
「あるの?」 
 言葉が出ないのか、美奈子はコクリとうなづいただけだった。 
「そう」 
 そう言ってレイはそっと美奈子の手をほどくと、部屋を出て行こうとする。 
「レイ!?」 
「電話してくるわ、あたしこれでも一応お嬢様だしさ、まぁた父親んとこ連絡されたらたまんないからね。こないだ警察にお世話になってからやかましいのよ」 
「あたし大丈夫だからやっぱり帰る?」 
「ばかね」 
 レイはドアのところから再び引き返してくると、仕返しにとばかりに美奈子の鼻をつまむ。 
「大丈夫って顔してないわよ、くすくす」 
「うっ」 
「待ってて」 
 それだけ言うと、今度は本当に部屋から出て行く。 
 
  ☆ 
 
「消灯何時?」 
「10時」 
「早いわね」 
「まーね、あたしには関係ないけどさ」 
「そう・・・みたいね」 
 改めて豪華な個室を見まわす。 
 アイドルだとプライバシーの問題もあるからか、こんな部屋に入れるんだなと感心する。
 よく見たらベッドも結構広い。 
「でも明日のこともあるから、あなたは今日は早く寝たほうがいいんじゃないの?」 
「ん」 
「眠れない?」 
 くすっと美奈子が笑みを浮かべる。 
「レイが手を握っててくれたら寝る」 
「はぁ?まぁったくワガママね、このアイドルは。あたしのベッドからだとそっちまで1mは開いてるのに・・・あたしが寝れないじゃない」 
「ここで寝たらいいじゃない?広いわよ」  
 美奈子がポンポンと自分の隣をたたく。 
「えぇ?でも・・・」 
「いいから!」 
 グイっとレイの手を引っ張る。 
「きゃぁっ」 
 ドサっと倒れこむと、一体ドコで覚えてくるのか、美奈子はスキをついてレイを素早くベッドに組み敷いた。 
「あははっ、いいじゃない、ね?」 
「んもう~しょうがないわねぇ」 
 観念したレイは、はぁ~っとため息をついて美奈子を自分の上から下ろすと、ゴソゴソと美奈子の方に体を向ける。 
 コツンとレイは美奈子の額に自分の額で触れると、2人からふふっと笑みが洩れた。 
 2人の手はごく自然にいつのまにかつながれていた。 
「ねぇレイ?」 
「うん?」 
「あたし、やっぱりおかしいかもしれないわ」 
「え?どっか苦しいの?」 
「キス・・・してもいい?」 
「はぁ???」 
「ダメ?」 
「ダメって・・・えぇ??」 
 抵抗する間もなく再び組み敷かれると同時に奪われる唇。 
 柔らかいく心地よい感触。 
 この人はいつも突然だ、次の瞬間何をしてくるかわかったもんじゃない。 
 油断出来ないわ、全く。 
 レイはそっと目を閉じた。 
 頭の中は結構冷静に色々考えていたのだが、それも長くは続かなかった。 
 美奈子の侵入をアッサリ許してしまうと、あっという間に意識が奪われる。 
 舌がレイの中を奥まで探る、なぞる、支配する。 
 呼吸が出来ない 
 でも逃げられない。 
 手をふりほどきたくても力が入らない。 
 受け入れるしか、すがりつくしか出来なかった。 
 美奈子の服をキュっと指先だけでかろうじてつかむ。 
「ん、んん」 
 くぐもった声だけが部屋に響く。 
「レイ?」 
「ん・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」 
 自由になった唇は、酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。 
「大丈夫?レイ」 
「じゃない・・・わよ・・・」  
 大きく深呼吸を何度か繰り返すとすと、絶え絶えに何とか言葉を発する。  
 ベッドに広がるレイのキレイな黒髪を優しく梳きながら、心配そうにのぞき込む美奈子の顔。 
 そんなに心配するならしなきゃいいのに。
「ばか・・・ね」 
 レイはそれだけ言うと、美奈子の背中をギュっと抱き寄せて肩に顔を埋める。 
 ふぅ、ん、と声にならない声を発して擦り寄ると、再び今度はレイが求める。 
「いいの?レイ」 
「何よ、今更・・・」 
「鍵、かけたっけ?」 
 コクンとうなづくレイ。 
 パチンと全ての光が消え、2人の影が一つに重なる。 
 
  ☆ 
 
「ん・・・」 
 朝、いつもの日課で人より早く起きるクセのあるレイは、今日も早くに目が覚めた。 
「ドコ?」 
 見なれない天井が目に入り、一瞬混乱しながらもゆっくり記憶を手繰り寄せる。 
 頭がうまく働かない。 
 ふと手の中にある温かいものに気付く。 
 ゴソゴソと確かめるように握ってみる。 
 柔らかい・・・手?誰の!? 
 ガバっと飛び起きた。 
 思い出した! 
「美、美、美奈!?」 
「んん~うるさいわね~何ぃ?今何時よぉ?」 
 隣で美奈子がムニャムニャとつながれた手とは反対の手で目をこする。 
 こんな姿全国のファンには見せられないわね、と。
 レイはあわててるハズなのに頭の片隅でそんなことを考えている。 
「6時よ、美奈!起きなさいよ」 
「まだいいじゃないよぉ、眠いんだから」 
「もう!どうしてそんなにノンキなのよ!ダメよ、起きて!」 
「んもぅ~何なのよぉ?」 
 美奈子の腕がレイを引き寄せる。 
 レイの腰に腕を巻きつけると、スリスリと頬を寄せる。 
「ば、寝ぼけないで!美奈!んもう、ホント愛野美奈子がこんなに寝起き悪いなんて全国のファンのみなさんは知らないんでしょうね、とても人に見せられる姿じゃないわね」 
 と美奈子を引き剥がしにかかる・・・が。 
「人に見せられない姿をしているのはそっちもでしょぉ?」 
 美奈子の言葉にへ?っとレイの頭に???が飛びまわる。 
「何?」 
 美奈子がニヤリと笑みを浮かべると、ゴソゴソと布団の中から何かを取り出す。 
「はい、これ」 
 美奈子の手にあったのは、昨日レイが着ていたハズのTシャツだった。 
「え?」 
「服、着たら?」 
 ニヤニヤと笑ってレイを見上げると、美奈子は布団を一人占めしようと思いっきり引っ張る。 
「えぇ??ちょ、や、美奈ぁ?」 
 レイは自分の姿を改めて確認すると、全身の血液が瞬間沸騰した。 
「○×△□??」 
 言葉にならない声を発する。 
「んもう、レイうるさい!いい加減に慣れたらどうなのよ?」 
「か、帰る!帰るからね!」 
 レイはあわてて服を着ると、ベッドから飛び降りた。 
「美奈!あ、後でまた・・・く、来るから…手術…がんばりなさいよね」 
「わぁかってるって」 
 ヒラヒラとベッドから手だけを出してふる。 
 レイは鍵をかけてたことも忘れて、開かないドアをガチャガチャやる。 
「鍵」 
「わ、わかってるわよ!」 
 鍵を開ける手が震える。 
 やっとのことで開けることが出来ると、レイは逃げるように走り去った。 
 くすっ、レイってば…かわいいところあるんじゃない。 
 アタシ、まだまだ死ねないわ。 
 アタシを必要だっていってくれる人がいる限り、ね。 
 ふぁぁ~とあくびをすると、美奈子は再び眠りについたのだった。 
  ――手術まであと9時間。 
スポンサーサイト

* 「美奈×レイ」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2008/08/31
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://moetetsu7.blog59.fc2.com/tb.php/170-84952acf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。