Planetarium SS置き場

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□ 美奈×レイ □

大切なこと

色々話が飛んでるみたいやけど、思い出しながら読んでください(笑)




「うわーーーーーーーっ」 
「まこちゃん!まこちゃん!いやぁぁぁぁっつ」 
 上空にみるみると暗雲が広がったかと思うと、ビリビリっと稲妻が轟く。 
 亜美の叫びがシンクロする。イヤな予感。 
 次の瞬間、ドーーーンというとてつもない轟音が降り注ぎ、落雷。 
 メタリアの力が宿ってしまい、3人では勝てなかった妖魔の上に――必死に妖魔にしがみついているジュピターの上に。  
 アタシは変身も出来ずにただただ呆然とそばで立ち尽くすことしか出来なかった。  
 頭の中で、マーズの言葉がグルグルとリフレインする。 
 
 『あなたにリーダーの資格はないわ』 

「いやぁーっまこちゃん!」 
 悲鳴に近い亜美の叫び声で我に返る。 
 跡形もなくなった妖魔のそばに、瀕死のジュピターが横たわっている。 
 ピクリとも動かない。 
 亜美が、マーキュリーの変身が解けてしまっている亜美が、フラフラとジュピターの体に近づくとそっと抱き上げる。  
「まこちゃん、しっかりして、まこちゃん!」  
 亜美の悲痛な叫びが響き渡る。 

 ――アタシのせいだ…せめてアタシが変身できていれば 

『あなたは現世(今)から逃げているじゃない』 

 再びマーズの言葉。 
 
 ――ヤダ、もうやめて・・・
 
 アタシはブルブルとマーズの幻影を追い払うように頭を振ると、ジュピターとマーキュリーに視線を戻す。 
 ジュピターの体にはすでに力が残っているようには見えない。 
 アタシがあの時あんなことを言ったからまことは・・・。 
 命を捨てるのは、アタシだけでよかったのに・・・どうせアタシの命なんて残り少ないんだから、そんなこと今更言ってもしょうがないけれど。 
「まこと」 
 ピクリとまことの体がかすかに反応する。 
「まこちゃん?まこちゃん!しっかりして、起きて!」 
 亜美は必死で呼びかける、もう2度と寝かさないわよっというように。 
「亜美ちゃん、妖魔・・・は?」 
「消えちゃったわ、まこちゃん!すぐ!すぐ病院に運ぶからね!」 
「よかった亜美ちゃん・・・ごめん、あたしムリっぽいや」 
「何言ってるの?ヤダ!そんなの許さないからね!」 
「泣くなよ。あたしは使命のために戦ったんだから、さ・・・あ、こんな言い方したら、またレイに怒られる、かな」 
 まことは微笑を浮かべるとフッと一息つき、目を閉じる。 
「まこちゃん?まこちゃん!」 
「ヴィーナス・・・あたしカッコイイこと言ってるけどさ」 
「うん?」 
「死ぬのって・・・怖いな」 
 亜美の目から大粒の涙がこぼれると、まことの頬の上に伝い落ちる。 
「まこと!?」 
 アタシも思わず叫んでいた。 
「死にたくないな。まだ・・・やりたいことたくさんあるし。あぁ、でも・・・お母さんやお父さんに怒られるかな、来るの早過ぎるって・・・へへ」 
 意識が混濁しているのか、言葉に脈絡がなくなってきている。 
「ヴィーナス・・・手術しろ、生きろよ、みんなソレを望んでる」 
「まこと!アタシ…アタシだけでよかったのよ!命を捨てるのは!」 
「レイに怒られるよ・・・そんなこと言っちゃ・・・レイ、怖いんだから」 
 へへっと思いだし笑いをするまことの手を亜美はぎゅっと握ると  
 溢れる涙を拭うのも忘れてまことの体を抱きしめた。 
「亜美ちゃん、ありがと・・・ね」 
 ガクっとまことの体から全ての力が抜けた。 
「いやぁぁぁぁぁっまこちゃん!まこちゃん!まこちゃん!!」 
 アタシは泣き叫ぶ亜美を呆然と見つめ、自分の変身出来なかった憎き体を見下ろす。 
 もう立っている気力も残ってない。 
 ガクンっとヒザが折れ、体がその場に崩れ落ちる。 
「リーダー・・・ううん、戦士失格だわ」 
 自嘲気味に笑う。 
「マーズの言う通りだったわ」 
 
  ☆ 
 
 麻布十番病院。 
 まことは集中治療室に入れられているが、昏睡状態が続いている。 
 何とか一命は取りとめたが、危険な状態には変わりないとママが言っていた。 
 病院の廊下にはうさぎちゃん、レイちゃん、美奈子ちゃんがひたすら祈るように、無言で座っていた。 
「亜美、それにみんなも、とりあえず今夜はこのまま様子を見るしかないの。だからあなたたちももう休みなさい」 
 わたしは医者である母親の言葉にも、ただひたすら黙って首を横に振るだけだった。 
 ママの言葉に逆らうのは、あの時以来だった。 
 転校したくないって言ったあの時・・・。 
「亜美…気持ちはわかるけど…みんなもね、あなた達まで体壊しちゃうわよ」 
 それでもまだこうやって気遣ってくれるママには感謝しなくちゃいけない、でも今は・・・。
 うさぎちゃん、美奈子ちゃん、そしてレイちゃんも無言で俯く。 
「一体、何があったの?あなたたち何をしてるの?亜美がここまで必死になるってことは、あなたたちが大切な友達なのよね?」 
 無言のまま俯いている3人の代わりに、コクンと力なくうなづく。 
 ふぅーっとため息をつくと、やれやれとわたしの頭をなでる優しい手、大好きなママの手。 
「大丈夫だから、ね?亜美、ママに任せて」 
 ママを見上げる。 
 フラリと立ちあがると、ガラス越しにまことを見つめる。 
 たくさんのチューブやら呼吸器やらがつけられているまことを見て頑なに首を振る。 
「そう。頑固なところ、誰に似たのかしらね」 
 あきらめて立ち去ろうとするママを、振りかえって呼びとめる。 
「ママ!ありがとう・・・ゴメンナサイ」 
 ニコリと微笑むと、ギュっと抱きしめてポンポンと背中を優しくたたいてくれる。 
 あの遊園地でしてくれたように、ママはわたしに勇気をくれた。 
 
  ☆ 
 
「ねぇ、何があったの?亜美ちゃん、美奈子ちゃん」 
 4人だけになると、ガマンできなくなったようにうさぎが口を開く。 
「まこちゃんが・・・まこちゃんボロボロじゃない!ねぇ?」 
 うさぎの問いは最もだ、あたしにも説明して欲しい。 
「どういうこと?」 
 絶対ヴィーナスが関わってるのは確かだと踏んで、あえて彼女に問う。 
「アタシのせいね・・・あなたの言うとおりだったわ、リーダーの資格どころか戦士の資格も無かったわ」 
 あたしは黙ってジっと彼女の話に耳を傾ける。 
「アタシの命が残り少ないってこと、まことが知ってしまったのよ。アタシが前世の使命のためなら命を賭けれると言ったら、あたしも覚悟を決めるって・・・」
 そばでただ一人、ヴィーナスの体の事情を知らなかったうさぎが驚愕の表情を浮かべている。 
 あたしは黙って先を促す。 
「アタシはでも、もう変身する力さえも残ってなかった。亜美ちゃんもルナも変身が解けてしまうほどのダメージを受けて、まことは・・・」 
 彼女はそれ以上言葉にすることが出来なかった。言わなくてもわかる。 
 あたしはツカツカと彼女に近寄るとグイっとTシャツの胸倉をつかみ、乱暴に引き寄せて手を振り上げた。 
 パシンっ 
 廊下に響く渇いた音。 
 あたしの右手がジンジンと痛む。 
「レイちゃん!?」 
 目を丸くしたうさぎがあわててあたしに駆け寄ってくると 
 Tシャツのスソを思いっきり引っ張って彼女から引き剥がす。 
「だから言ったのに!だから・・・」 
 左の頬を押さえて俯く彼女を見る。 
 ぼやけてよく見えないが彼女の肩が震えているように見える。 
 あたしの目にも涙が溜まっているのかあたしは続ける。 
「前世のためっていうのも確かに大事よ、でもね、あたし達は生まれ変わったのよ!前世の運命を変えるためにね!繰り返すためじゃないわ!」 
 あたしのTシャツを掴んでいた手を離すと、うさぎが半泣きのまま彼女に近づく。 
「そうだよ、美奈子ちゃん!あたしよくわかんないけどさ、あたしは信じてるよ。衛とあたしは絶対結ばれないって言われてるけど、そんなことないって信じてるから、だから戦えるんだよ!――あたしは救ってみせる、地球も!みんなも!」 
 つたない言葉で一生懸命、自分にも言い聞かせるかのように力説する。 
 こういう不器用だけど一生懸命なところが、彼女の良さなんだろうなと思う。 
 時々、この子を守らなきゃいけないハズなのに、逆に守られている気がしてしまう。 
「ヴィーナス、あたしたちが特別な力を持って産まれてきた理由は死ぬためじゃないわ。守るためよ、地球を、そしてみんなを・・・それはあたしたちも例外じゃないわ。あたしたちの誰かが犠牲になるってことは守れなかったってこと。あなたが命を投げ出したからって、何の解決にもならないわ」 
 あたしの責めるような視線を受け止めることが出来ないのか、俯いたまま黙って拳を握り締めている。 
 その拳がかすかに震えているのにあたしは気付いていた。 
 亜美がゆっくり近づくと彼女の手を取る。 
「・・・怖い?」 
 核心を突かれたのか、ハッと驚いて顔を上げるとまっすぐな亜美の視線とぶつかる。 
「でもね、美奈子ちゃん、まこちゃんは命がけで教えてくれたはずよ?そしてこう言ったわよね?『まだ生きたい』って。そんなまこちゃんの気持ちを無駄にするのは許さないから」
 どうやら亜美ちゃんも少し・・・いや、かなり怒っているみたいだ。 
 彼女のポーカーフェイスがみるみる崩れる。 
 その場にいた全員が、あたしもだけど初めて見る彼女のそんな姿に言葉を失った。 
 瞳からは大粒の涙が次から次へとこぼれていた。 
 あたしはみんなの前だということも忘れて、思わず本名を呼んでいた。 
「美奈・・・」 
「怖いわよ、あたしだって・・・」 
「・・・」 
「可能性が低い手術がもし失敗して、何も出来ないままただベットで死んでいくのが怖いのよ。みんなどうせあたしのことなんてすぐに忘れちゃうわ」 
 あたしは彼女の肩をガクガクとつかんで揺する。 
「ばかっ!美奈!怖いのはあなただけじゃないわよ!あたしたちだって・・・あたしだってあなたがいなくなるって考えただけで夜も眠れないのよ!痛くてツライ治療や手術に耐えなきゃいけないのは確かにあなた自身だけど・・・そばにいるから、お願いだから死ぬなんて考えないで」 
 そっと彼女を抱き寄せると、嗚咽を洩らして体を震わせる彼女の背中をそっとさする。 
「ごめん」 
「そうだよ、美奈子ちゃん!あたしに任せてよ、これでも銀水晶使いなんだよ!まだ使いこなせてないけどさ、がんばるよ!だからさ、美奈子ちゃんもがんばってよ!えへっ」 
 うさぎが空気を和ませようとおどけて見せると、張り詰めた空気が少し和らぐ。 
 こういうところもうさぎのスゴイところだわ。 
「まこちゃん?」 
 ふっとガラス越しにジッとまことを見つめていた亜美が、まことの異変に気付いた。 
 たくさんのチューブや呼吸器につながれたまことの目がゆっくりと開いた。 
 亜美の声にあたしたち3人も駆け寄る。 
 亜美は母親の来るのも待てず、部屋の扉を開けた。 
「ママを呼んできて!」 
 バタバタとうさぎが母親を呼びに走る。 
「ドコにいるのぉ~亜美ちゃんのママ~」 
 
  ☆ 
 
「まこちゃん!まこちゃん気がついた?」 
 
 ――誰かが呼んでる 
 
 ――あぁ、亜美ちゃんか。 
 
 亜美ちゃんの顔に触れようとしたんだけど何だかうまく手が上げられない。 
「まこちゃん、大丈夫?」 
 
 ――何だ?あたしは何してんだ?大体、ココどこだよ? 
 
 ――何で亜美ちゃん泣いてんだ? 
 
 ぐるぐる記憶を手繰り寄せる。
 あっ・・・ 
「亜美ちゃん・・・」 
 声に出したつもりだったけど、届かないのか亜美ちゃんが聞き返している。 
 ええいっジャマだな!何がついてんだよ! 
 口元の邪魔なモノを外そうと手を伸ばす。 
 亜美ちゃんがナゼかそれを阻止しようと手をしっかりと握る。 
 あたしは素早く反対の手で外す。 
「まこちゃん!ムチャしないで!」 
「だ・・・じょう・・・ぶ」 

 ――ん?声がうまく出せないな。 

「何?まこちゃん?」 
 
 ――そんなに泣かないでよ、亜美ちゃんごめん。 
 
「あたし・・・生きてんだ・・・」 
「ばか」 
 亜美ちゃんが泣きながら笑みを浮かべる。 
 こんな時になんだけど、やっぱり亜美ちゃんには笑ってて欲しいなって思っちゃう・・・てあたしのせいか? 
 
 ――ごめんな、亜美ちゃん。 

 あたしの記憶が再び途切れた。 
 
  ☆ 
 
 その時、廊下の方からバタバタやかましい足音が近づいてくる。 
「亜美ちゃん、連れてきたよ!」 
 バタンっと扉を開けて、ママが入ってくる。 
「亜美、目が覚めたの?」 
「うん」 
「見せて」 
 ママはまこちゃんの手首を取って脈を見たり、色々体をチェックする。 
 ふーーーーっとママは一息つくと、ゆっくり振りかえりわたしの頭をポンポンと叩く。 
「もう大丈夫よ、彼女の生きたいっていう思いが強かったのね」 
 それまでずーっとガマンしていたけれど、もう限界だった。 
 溢れる涙が止まらなかった。 
「ふっ、う・・・ん、よかった・・・よかったぁ」 
 ママにしがみつく。 
 こんなことも本当に久しぶりだった。 
「うん、よかったね亜美。さ、もう少し様子を見たら個室に移すからね、今度こそみんな休みなさい。彼女、また眠ったみたいだし」 
 わたしを部屋から追い出すと、みんなにもまことが目覚めたことを告げ、一旦帰るように言い渡す。 
「まこちゃん無事だったの?ね?亜美ちゃん?」 
「うん、もう大丈夫だって」 
「やったーーーーっ」 
 うさぎちゃんがわたしに思いっきり飛びついてくる。 
「ホントなの?亜美ちゃん」 
 レイちゃんがうさぎちゃんの後ろから確認するように尋ねる。 
 その手はギュっと美奈子ちゃんの手を逃さないようにつかんだままだ。 
「うん、もう少し様子見たら個室に移すって」 
「そう、よかった」 
 
  ☆ 
 
 あたしは安堵の息をつくと、横目で彼女を見る。 
 彼女の瞳にも涙がうっすらと浮かんでいる。 
 責任感じていたんだろうな。 
「美奈、もうバカなこと考えるのやめなさいよね」 
 ボソリと彼女にあたしは耳打ちすると、ぎゅっと手に力をこめる。 
 珍しく素直にコクリとうなづく彼女。 
「一緒に帰ろう、今日はうちに泊まりなさいよ、アルテミスもいるから」 
「ん」 
「うさぎも、帰ろう」 
「え?うんそだね、ママ心配してるだろうし、亜美ちゃんは?どうする?」 
「あたしは、もう少ししたら帰るわ」 
「そか、んじゃあたしたち一旦戻るね、また明日」 
 うさぎがばいばいっと手を振るとあたしたちは一緒に病院を出た。 
 
  ☆ 
 
「アレ?ここ・・・?あたし何して?」 
 目を開けると飛びこんできたのは白い天井だった。 
 思考回路が働かないままジッと一点だけを見つめていると、突然目の前に人の顔が飛びこんできた。 
「わっ!・・・亜美ちゃん?」 
「目が覚めた?まこちゃん」 
「うん・・・ここは?イテテ」 
「病院よ、まこちゃん3日も眠ってたんだから」 
 亜美ちゃんがあたしの手を取ると、ぎゅっと強く握ってくれる。 
「3日???そっか…あたし追い返されちゃったんだ」 
「え?」 
「母さんたちにさ、あたしはまだ早いって」 
「そうよ、まだまだ早いわよ」  
 プクっと頬をふくらますと亜美ちゃんはプイっとそっぽを向く。 
 
 ――か、かわいい。 

「ごめんね、亜美ちゃん。あたしさ、いよいよヤバイなって思ったらすっごく怖くなってさぁ、走馬灯っていうのかな?初体験しちゃったよ、へへっ」 
「ばかっ」 
「ホント、ばかだよな…でも妖魔やっつけられてよかったよ…ヴィーナスは?」 
「毎日来てるけど、今日は帰ったわ。彼女手術受けるって」 
「そっか、よかった…あたし彼女の考え方にすっごい感動してさ、命をかけて使命をって思ったんだけど、イザ死んじゃうんだって思ったらさすごく怖かった・・・こんな思いを彼女は毎日してたんだな」 
 遠い目をしてあたしはあの瞬間のことを思い出す。 
「やっぱ生きられる可能性がある限り、全力で立ち向かわなきゃいけないんだなって・・・あの時初めて思ったんだ…ごめんなずっと…色々心配かけてさ」 
 亜美ちゃんは目に涙をいっぱいに浮かべると何度も何度もうなずく。 
「あたしがんばるから・・・一人じゃないからさ・・・ところでさぁ亜美ちゃん」 
「うん?」 
 あたしはおそるおそる、ある意味一番気になってたことを聞いてみる。 
「レイ、怒ってた?」 
 額にタラリと暑さのせいじゃないイヤな汗が流れたのは気のせいじゃないなっと思いながら。 
「怒ってるわよ」 
 と、突然どこからともなく亜美ちゃんのじゃない声が返事をする。 
「げっ!?」 
「げっじゃないわよ、いつまで寝たら気が済むのよ?全く」 
 亜美ちゃんがそっと体をずらしたその先に、部屋の入り口で腕組みをしたレイが、花束を片手に立っているのが見える。 
 眉間にシワを寄せて・・・。 
「目が覚めたら一発ブン殴ってやろうかと思ってたわ」 
 というなりツカツカと歩み寄り、バサっとベッドの上に花束を置く。 
 あたしは思わず目をつぶって肩をすくめる。 
「冗談・・・だよな?」 
「反省してるんなら許す、それに…美奈にちゃんと伝えてくれたから」 
「は?何を?」 
「大切なこと」 
「???ま、いっか、ラッキ♪」 
 心の底から安堵の息をつくと、なぜか亜美ちゃんとレイは2人して大きなため息をついた。 
 
  ☆ 
 
 あたしは亜美ちゃんと並んで病室を出るとゆっくりと廊下を歩く。 
 亜美ちゃんは花瓶の水を替えに、あたしは美奈の様子を見に家にそれぞれ向かう。 
「ね、美奈子ちゃんあれからどう?」 
「あの日からあたしの家にいるわ、ほっといたらあの人まぁたドコに逃げるかわかんないしね」 
「くすっ、リーダーもレイちゃんにかかったら形無しね」 
「とっとと病気治してもらわないとね、全国の愛野美奈子ファンに悪いじゃない?」 
 ふふっと笑みをこぼす。 
「なぁに?レイちゃん」 
「ううん、2人ともばかよねぇて思ってさ・・・思いこみ激しくてまっすぐで、バカだわ」
 あたしは最後の言葉に想いを込めてくすくすと笑う。 
「誰も忘れないわよねぇ~あんな強烈な人」 
「ホントにね」 
 あたしたちは顔を見合わせると再び笑いだす。 
 
  ☆ 
 
「ただいま~」 
 あたしはいつものようにまっすぐ自分の部屋に向かうと、いつもは真っ暗な部屋に明かりがついているのを見てホっとする。 
「おかえり、マーズ」 
 パソコンとにらめっこしたままの彼女の声が出迎える。 
「もうね、そろそろマーズって言うのやめなさいよね」 
「あ、ついクセでね」 
 悪びれずにアッサリそう言うと、再びパソコンに没頭する。 
 しばらく止まっていたHPの更新をサクサクと行っているらしい。
 あたしはパソコンなんて使えないからわけわかんないけどね。 
「ね?検査どうだった?」 
 麦茶を入れて彼女に出してやりながら問う。 
「んー?あー再来週にでも手術したいって、体力があるうちにした方がいいってさ」 
「あ、そう」 
「まことは?」 
「あぁ、目が覚めて亜美ちゃんが看病してるわ」 
「そっか」 
 心なしかホっと安堵の息をつく彼女。 
「そうよ、一発殴ってこようかと思ったけどやめたわ」 
 彼女の背中がビクっと震える。 
「そ、それはそうとさ、レイちゃん?」 
「なぁによっ、美奈子ちゃん?」 
 あたしはその呼ばれ方が妙にカンに触った。 
 亜美ちゃんやうさぎにはそう呼ばれてるから慣れてはいるハズなのに・・・思わずイヤミを含めた返事を返してしまう。 
「アタシまた入院なのね?」 
 そんなあたしを無視して話を続ける。 
「うん、いつから?」 
「明日からでもって」 
「そう・・・でもしょうがないわね」 
「寂しい?」 
「はぁ??」 
「寂しいかってき・い・て・る・の」 
 ズイっと彼女の顔が至近距離に迫る。 
「はぁ~、はいはい寂しいですよ~意地っ張りな誰かさんがいなくなっちゃったら寂しいですよ~」 
 あたしはこういう彼女の態度にだいぶ慣れたので、適当にあしらう術を覚えていた。 
「むっかー、もういつまで怒ってるのよ、あのことは謝ったじゃないの」 
 ぷくーーっと頬を膨らませてスネる彼女。 
 まだまだ許してやんないけどね、くす。 
「はいはいそうね、寂しいわ。家に帰ったら電気がついてるってことももうナイのかと思ったらね・・・がんばりなさいよ美奈」 
 最後に、少しだけ本音を混ぜる。 
「うん、ありがとレイ・・・ね?今日一緒に寝ていい?」 
「は?いつも一緒に寝てるじゃない?」 
 ここ3日いつも隣に布団を敷いて寝ていたのに何言い出すのかしら。 
「一緒に・寝ても・い・い・か?って聞いてるの!」 
 真剣な彼女のまなざしにやっと意味が理解出来た。 
 あたしの体温が心なしか1~2度上がった気がする。 
「か、勝手にしなさい」
 ふふっと彼女が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。 
 こんな表情の彼女を久しぶりに見たな、と思うけどさ・・・ふと思い出す。 
 こんな表情をする時の彼女が、危険だってことを。 
「ちょっ、美っ、ナニ?え?っや」 
 速攻で押し倒された。 
 ジタバタと必死に抵抗してみるけれど、ナゼだか力が入らない。 
「レイ」  
 彼女の視線に射すくめられる。 
 手術をするって決めたあとからコッチ、前の強気な彼女が復活しつつあった。 
 やっぱこの性格は演技でも何でもない素なんだなと…気付いたのはここ最近。 
 あたしは抵抗をあきらめた。 
 
  ☆ 
 
「レイ・・・」 
 キュっと目を閉じて構える彼女が、愛しくてしょうがない。 
 今までとは少し違うこの状況で彼女に踏み込むのが怖いのか 
 ただ単純にアタシが怖がっているだけなのか…判断ができない。 
 何度も繰り返される自問自答。 
「怖い・・・?」 
「別に」 
「アタシは怖いわ」 
 素直に弱音を吐くと、アタシは彼女の隣にゴロンと転がる。 
「美奈?」 
「――怖いわ、手術も…あなたもね」 
「あたしも?」 
「そうよ、あなたの言葉、しぐさ、表情、全てがアタシの心を支配しようとするから」 
 彼女が体を起こすと、不思議そうにアタシを上からのぞき込む。 
「あたしが?」 
 コクリとうなづく。 
「でも、離れられない、忘れられない・・・あなたのことに関しては感情のコントロールがきかないの」 
 真上から見下ろす彼女の目をアタシは真っ直ぐ見つめる。 
 彼女の視線が一瞬たじろぐ。 
 アタシはグイっと首に腕を回すと彼女の体を引き寄せた。 
 支えていた手がガクンと折れてアタシの上に覆い被さる。 
 キャっと短い悲鳴。 
「好きよ、レイ」 
 彼女の重みと体温が心地良い。 
「アタシ・・・生きられるかしら・・・」 
 抱きしめたまま素直に弱音を吐く。 
 顔を見ると言えなくなりそうだから。 
「ばか」 
 彼女は顔を上げると、悲しそうに、寂しそうに眉をひそめる。 
「ごめ・・・」 
 アタシが最後まで言い終わらないうちに、ふっと唇に柔らかな感触が降りてくる。 
「ん・・・」 
 舌がアタシの中を支配する。 
 アタシの頭の中が真っ白になると、全身に電流が走る。 
 脳も体も彼女の支配下に置かれるのは時間の問題だった。 
 息が苦しい、呼吸困難になりそう。 
 
 ――もうやめて・・・レイ。 
 
 長い間塞がれていた唇に、フっと突然自由が戻った。 
 はぁ、はぁっと空気を取り戻すかのようにアタシは何度も荒い呼吸を繰り返した。 
「ばかね、生きられるに決まってるでしょう?生きてよ・・・ばか」  
「うん」 
「もうばかなこと言うと今度はホントに許さないから…水でもかぶって反省しなさい」 
「・・・亜美ちゃんじゃん」 
「亜美ちゃんも怒ってたもん、言っとくけど亜美ちゃん怒ったらウチの誰よりも怖いんだからね」 
「反省」 
 アタシはコツンと彼女の額に自分の額を当てると、フフっと自然に笑いがこぼれた。 
 くすくすっとレイも笑う。 
「今日はずっと手、握っててあげるからもう寝ましょ、明日から入院なんだしさ」 
「うん、アタシ全部終ったらちゃんと戦うから、大切なモノを守るために・・・死なないために・・・だから待ってて」 
「うん」 
「運命は変えるためにあるんだから・・・でしょ?」 
「そうよ、わかってるじゃない」 
「うん・・・おやすみレイ」 
「おやすみ」 
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Date:2008/08/31
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