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□ 美奈×レイ □

名前~Side Mina~

美奈バージョン




《Side Minako》 
 
 
 掌に水滴が落ちる。 
 一瞬雨かと思ったが空は青く澄み渡り、およそ雨なんて降りそうにない。 
 じゃぁ一体・・・? 
「美奈?」 
 足元でアルテミスがアタシの名前を呼ぶ。 
 心配そうな顔をしてるようだが、何故だかボヤけててうまく見えない。 
 指先でそっと頬に触れる。 
 ソレの存在を認識した瞬間――驚いた。 
「涙なんて・・・あの時とっくに枯れてしまったと思ってたのに・・・」 
 あと数ヶ月の命だと聞かされたあの時に・・・。 
 アタシは自分の体を・・・病魔に冒された自分の体を抱きしめた。 
 いつまで存在するんだろう、この体は・・・。 
 
  ☆ 
 
「そんなんじゃなくて!…そゆことじゃなくて…あなたの今が問題なのよ」 
 前世なんてくだらないっと言い切る彼女。 
 前世からの使命なんてウンザリ? 
 そんなことよりもアタシの現在(いま)の方が大事ですって? 
 そんなわけナイじゃない! 
 地球がアブナイっていうのに、アタシの命の方が大事とか言ってる場合じゃない。 
「あ、あなたには前世の使命の重さがわかってないのよ!」 
 どう言ったら彼女はわかるのだろう?と考えたけれど 
 結局そんなありきたりの…今まで何度として吐いてきた言葉しか浮かばなかった。 
 このアタシが・・・彼女の勢いに押されていた? 
 どうして彼女はそんなにアタシ…ヴィーナスじゃなくって、愛野美奈子のことでそんなに必死になってるんだろう? 
 大事なのは残り少ない愛野美奈子の人生よりも、セーラーヴィーナスとして生きて、使命をまっとうすることだわ。 
 今日のことにしたって――そんなことがぐるぐる頭の中を駆け巡っていたとき、彼女が思考を遮った。 
「わかってないのはアンタの方よ!」 
「えっ?」 
 一瞬彼女の言ってる意味がわからなかったわ。 
「あたしはアイドルなんて全く興味ないし、アンタがどれだけ有名なアイドルかなんてうさぎがいなかったら一生知らないままだったわよ!でもね、そんなあたしでもわかるのよ」 
「何がよ?」 
 初めて会った時も思ったけれど、今時アタシを知らない女子中学生がいるとは思わなかった。ここまで興味がないとか言い切られちゃうと腹も立たないけど。 
 本当に彼女の言いたいことがわからない。 
 彼女に一体アタシの何がわかると言うのかしら。 
「歌、好きなクセに・・・」 
 その言葉に愕然とした。 
 歌が好き?アタシが? 
「歌、やめるって?残りの命を無駄にしたくないから?バッカじゃないの?」 
「なっ?」 
 呆然 
 バカ?このアタシが?アタシがどれだけ悩んで決めたと思ってるのよ? 
「あなたは逃げてるだけなのよ!使命のために戦って死ねたらカッコイイとか、本望とか思ってるんでしょ?そんなの生きられる可能性から逃げてるだけ、手術を怖がってるだけよ!」 
 プチっ。
 何かがハジけた。 
 アタシがどれだけ悩んだか、どれだけ泣いたか・・・。 
 アルテミスが表れて、アタシに前世を思い出させてくれたおかげで、残りの人生を生きる糧が出来た。 
 いつ死んでも思い残すことがないように・・・。 
 なのに彼女はアタシを責める。 
「あなたに何がわかるのよ!死ぬかもしれない手術なのよ?」 
「わからないわよ!残り少ない命とか言われたことないし・・・でもね、もうイヤなのよ、大事な人に先立たれるのは・・・」 
 人を射抜くような瞳。 
 動けない――頭だけはぐるぐるフル回転しているが、体は硬直する。 
 大事な人?アタシのこと?そういえば母親亡くしたって――。 
 アタシが死ぬのがイヤなの? 
「ねぇ、今日・・・楽しくなかった?」 
 突然振られた今日の昼の話。 
 彼女と社長が画策して行なわれた偽イベントに、うさぎやまことや亜美が参加して一緒に大暴れしたあの出来事。 
 アタシは楽しかった思い出に思わず笑ってしまうと、コクンと正直にうなずく。 
 彼女たちが4人でジャレてるのはよく見かけたけど、まさか自分がそこに入れるとは思ってなかったから・・・普通に受け入れてくれて楽しかったわ、確かに。 
「あたしはね、今のあたし達の生活を犠牲にすることないと思ってるの」 
 アタシ達の生活? 
 アタシの生活?アイドルのアタシ、中学生のアタシ、セーラーヴィーナスのアタシ? 
「うさぎやまことや亜美ちゃんたちに出会って、しょっちゅうバカ騒ぎしてみたり、ケンカしたり家出したり色々やらかしたけどでもね、毎日楽しくて、飽きなくてあの子たちに会えてよかったって、初めて仲間っていいなって思ったの・・・こんな現世(いま)があってもよくない?」 
 まっすぐ見つめられる。 
 アタシは思わずいつものように彼女の名前を呟いてしまう。 
「マーズ――」 
「違うわ」 
 即座に否定される。 
 何が? 
「火野レイ・・・それがあたしの現世での名前・・・そしてあなたは」 
 アタシ?アタシの名前? 
「愛野・・・美奈子?」 
 語尾が上がる。 
 プっと吹き出す彼女は続けてアハハっと声を上げて笑う。 
「どうして疑問系なのよ?でもその通りよ。トップアイドルのクセにド素人のド新人に仕事取られそうになってムキになって勝負!とか言っちゃうような負けずキライで、歌が好きな、普通の女子中学生の・・・ね」 
 普通の女子中学生?アタシ・・・が? 
 そうなのかな?それでいいのかな? 
 アタシの心に疑問が沸く。 
 わけがわかんない、もう何を言われてるのかも理解できない・・・泣きそう 
 突然、アタシの体がフワリと抱き寄せられる。 
「え?」 
 ビクっ 
 アタシの体が硬直する。 
 心肺停止・・・しそう。 
 何が起こってるのか状況が把握できない・・・でも・・・。 
 アタシの背中をゆっくりなでる手が心地いい・・・優しい手。 
 次第に呼吸が落ち着く。 
 気持ちいい・・・アタシはゆっくりと目を閉じる。 
「ねぇ、美奈?」 
「何?」 
 名前を…前世の名ではなく今の名を呼ばれて驚いていた。 
「正直に言うわ…あたしにとって今一番大事なのは、たいして覚えてない前世よりも、使命よりも、プリンセスよりも・・・あなたとの時間なのよ・・・怒られるかもしれないけどね・・・」 
「マー・・・レイ」 
 アタシはいつもの呼び方で呼ぼうとしてしまい、あわてて改める。 
「それともあたしじゃ・・・あたしの存在くらいじゃ手術を受ける理由にはならないかしら?」 
 そっとアタシの体に回されていた腕が解かれる。 
 彼女の額がそっとアタシの額にそっと触れた。 
 いちいち人を動揺させる瞳に、アタシの視線が泳ぐ。 
「こっち見て、美奈」 
 頬を両手で挟まれると、むりやり視線を戻される。 
 そして一瞬で奪われる唇。 
 思考が停止する。 
 脳の奥が、ビリっとしびれる。 
 やだっ・・・やだっ・・・。 
 そうは思いながらあたしの手は必死で彼女の体を押し返そうとする。 
 力が入らない。 
 目を閉じる。 
 窒息死しそうなほどの長い時間。 
 あぁ・・・。 
 唇が離れたとき、目の前に見えたのは心配そうにのぞき込む彼女の顔だった。 
 瞬間、再びその腕に包み込まれる。 
「泣き言言いたかったら言いなさいよ!泣きたかったら泣けばいい!あたしたちはみんな、あなたのためだったらいつだって飛んでくるし、そばにいるわよ!」 
 ダメ―― 
 そんなこと言わないでよ…そんなこと言われたらアタシ・・・。 
「・・・あなたも?」 
 素直じゃないアタシの言葉。 
 彼女のちょっと怒った顔。 
「当たり前でしょ?誰よりも真っ先に飛んで行くわよ!約束する」 
 目の前にスっと差し出される右手小指。 
「何?」 
「ユビキリゲンマンよ!」 
 無理矢理絡められる小指。 
 ブンブンと振りまわされる指。 
 痛いってば。 
 アタシは思わず笑ってしまう。 
 マーズ・・・。 
「あなたはこの世に未練を残したまま死ぬほどバカじゃないでしょう?」 
「未練?」 
「あたしに負けたままでいいの?いいならいいけどさ。ま、あなたがいなくなったあとの芸能界はあたしが背負ってあげるから心配いらないしね」 
 カチン 
「あなたにはムリよ!それに負けた記憶もないしね!」 
「そうだったかしら?」 
「そうよ、何だったら何回でも勝負するわよ!」 
 長い間芸能界でがんばってきたアタシに挑戦しようなんて10年早いわよ! 
 でも彼女の顔に浮かぶのは余裕の笑み。 
「そうね、何回でも受けて立つわ、だから逃げないでよね」 
 カッチーーン 
 あったまきた! 
 誰が逃げるって?アタシが?アタシを誰だと思ってるの? 
 セーラーヴィーナスよ?愛野美奈子よ? 
 信じられない!このアタシにケンカ売ろうなんて! 
 マーズくらいよ!そんなの。 
 でも、とりあえず・・・あなたのために生きたいって思うのもアリかも・・・ね。     
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Date:2008/08/31
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