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□ 静留×なつき □

ずっとそばに・・・

続きです




――18日夜半―― 
 
 なつきは静留に一本の電話をかけた。 
「寝てたか?」 
 もう普通ならば寝に入る時間だった、にもかかわらず1度のコール音で静留は出た。 
「いいえ、まだ起きてます」 
「そうか、あの…今から行ってもいいか?」 
「はい、待ってます」 
 静留の快い返事を聞いたなつきは受話器を置き、そばに置いてあった大きな箱をがさごそと探った。 
 
  ☆
 
 30分後、なつきは静留のマンションのインターフォンを押していた。 
「なつき、どないしたん?こんな遅ぉに」 
「あぁ、悪かった」 
 すでに寝巻きに着替えていた静留は、それでも快く中に招き入れてくれる。 
「今お茶入れますさかい、ちょぉ待っててな」 
「あぁ、ありがとう」 
 言うなりさっさとなつきのためにすでに温められていたらしいコタツに足を突っ込んだ。
 静留はキッチンから急須と湯のみを2つ運んできた。 
 コポコポと注がれるお茶の香りが香ばしい。 
 なつきはそれをずずっとすする。 
 静留のお茶は相変わらず絶妙な温度で入れられていて美味い。 
 コトンとテーブルに湯のみを置くと、なつきは左90度の位置に座ってニコニコ自分を見つめる静留に向き直った。 
「えっとだな、し、静留明日…あ、もうこんな時間かっ…静留、誕生日おめでとう」 
「え?」 
「いつのまにか12時を過ぎてしまった。今日はお前の誕生日だろう?」 
「いやーなつき覚えててくらはったん?うち嬉しいわぁ」 
 湯のみを手にしたまま、小首をかしげ、目を細めてはんなりと微笑む静留。 
「あ、当たり前だ!…自分の誕生日は忘れてもお前のは…忘れない」 
「それ言いにきてくらはったん?わざわざ?」 
「誰よりも先に、直接顔を見て言いたかったから…それだけだ」 
 今更ながら頬を真っ赤に染めたなつきは、それでも一生懸命虚勢を張ろうとプイっとそっぽを向くが、静留の満面の笑顔の前にはそれも無意味だった。 
 と、突然なつきの視界がぐらりと揺れた。 
 ドサっ 
 一瞬何が起こったのか理解が出来ないまま、なつきの視線はなぜか天井に向けられていた。 
「え?ちょ、な?」 
「なつき…うちホンマに嬉しい。なつきがそないにうちのこと想ってくれてたんがホンマに嬉しいんどす。もうそれだけでうちは幸せどす。おおきに、なつき」 
 子犬のように飛びついてくると、瞳を潤ませて今にも泣き出しそうな…だけどかすかに笑みが浮かぶ静留の切なげな表情が、なつきの情を揺らせた。 
「あぁ」 
 ぎゅっと静留の背中を抱き寄せ、自分の上に乗せるとふわりと垂れる長い髪に顔を埋めた。 
「なつき?重いやろ?」 
 驚く静留の背中をぽんぽんと優しくあやす。 
「手袋よりずっと温かいな、静留は…それにいいニオイがする」 
「お風呂あがりやさかいね…なつきは冷たいね。寒かったやろう?」 
 両腕で絨毯に手をつくと、少し体を持ち上げてなつきを見つめる。 
 なつきの頬にそっと手を添えると、ひんやりとした肌が静留の体を震わせた。 
「まぁな。でも今は温かいぞ」 
 そう言って再び静留の頭を抱き寄せて自分の胸元に乗せる。 
「なつきの心臓の音が聞こえます、トクントクンゆぅて」 
「これでも緊張してたんだ、もっと鼓動は早いだろう?ドキドキだ」 
「そうどすか?」 
「あぁ、でももう…落ち着いた…静留の体温が心地いい…から」 
 なつきはそっと目を瞑るとあやしていた手を止め、かわりにその手に一瞬力を込めた。 
 耳元で囁く。
「静留…」 
「…はい?」 
「おやすみ」 
「えっ?」 
 瞬間、静留の疑問符に答えたのはなつきの安らかな寝息だった。 
「ちょ、なつき?こないなとこで寝たら風邪引きます。 
 ちゃんと布団敷きますよって寝るんやったらそっちで寝ぇ」 
「ん…」 
「なつきぃ?」 
 静留はなつきの腕を解いて起こそうとする…が、なつきの力が思いの他強く、脱出が不可能な状態だった。
 普段だったら喜んで甘んじる状態でも、ストーブとコタツ、ホットカーペットがついているとはいえこんな所で寝たら風邪をひいてしまいそうなこの状況では少しばかり悩んでしまう。 
「なつき…ちゃんと布団で…はぁ」 
 何度言っても何の反応もないなつきに、静留はとうとう観念した。 
「うちは抱き枕どすか?なつき」 
 呆れてそう言いながらも、きっちり抱き枕とついでに湯たんぽの役目をも果たす静留だった。 
 
  ☆
 
「ん…ん?ア…れ?なんだ?どこだ?ここは」 
 胸に妙な圧迫感と温度を感じたなつきは、ぼんやりとした頭で状況を確認しようと頭を巡らせた。 
「…し…ずる?」 
 スヤスヤと自分の胸の上で安らかな寝息を立てて眠る静留の寝顔をぼんやり見つめる。 
「…静留ぅ?」 
「ん…なつきぃ?起きたん?」 
「どうして?あれ?ここは…」 
「なつき、うちを抱きしめたまま寝てしもたんやないの」 
「あぁ…そういえば」 
「風邪引いてへん?大丈夫?」 
「あぁ」 
「まだ寝るんやったら今度はちゃんと布団敷きますからそっちで寝ぇ」 
「あぁ、いや、ワタシはもう起きる。すまない」 
 ゆっくりと体を起こすと、床で眠ったせいか背中や腰がギシギシと悲鳴を上げた。 
「いっててて」 
「あらあら、大丈夫どすか?」 
「あぁ、すまなかったな。ちょっとここんところ夜が遅くてな。ついつい…静留の体温が気持ち良くて寝てしまった」 
「ええんどすけどな、毎日何してましたん?どっか行くゆーてましたなぁ?」 
「あぁ、そうだ!静留に渡すものがあったんだ」 
「え?」 
「着替えろ静留」 
「はい?」 
「そんな格好で外には出れんだろう?」 
「はぁ」 
 言われるがままに静留はとりあえず外に出られるように着替えた。 
「外にいるからな」 
 
  ☆
 
 いつものマンション専用のバイク置き場になつきはいた。 
「なつきぃ、どないしましたん?こんな早ぉからどっか行きますのんか?」 
「色々考えたんだ」 
 バイクのシートを愛しい人に触れるかのように優しくなでながらぽつりと呟く。 
「ん?」 
「静留の誕生日プレゼント」 
「?」 
「でも中々思い浮かばなかったんだ」 
「なつき?」 
「これくらいしか思い浮かばなかったんだ…ワタシには」 
 ん、と静留の手に渡されたのは、白いフルフェイスのヘルメットだった。 
「これ?うちに?」 
「あぁ…」 
 よく見ると、真っ白ではなく側面には藤の花が鮮やかに描かれていた。 
「これは…お前のだ。それとこれも…」 
 なつきはそっと体をずらすと、今までなつきの体に隠れて静留からは死角になっていたドゥカティの全体を披露した。 
「これ…?」 
「タンデムシートを積んだんだ…静留の場所だ」 
 それだけ言うとなつきの頬はものすごい勢いで真っ赤に染まった。  
 が…予想に反して静留からは何の反応も返ってこなかった。 
「静留?」 
 気に入らなかったのか?と少し不安になっておそるおそる静留の表情を伺う。 
 だが、静留はなぜかヘルメットを抱えたまま俯いていた。 
「おい、静留?…気に入らなかったか?」 
 ぶんぶんと無言で首を横に振る。 
 髪がばさばさっと揺れるくらいに勢いよく。 
「じゃぁどうしたんだ?」 
 おろおろと静留の顔をのぞきこもうとするが、なつきの視線から逃れようとするように静留は顔をそむける。 
「なんだ?」 
 そうこうしているうちに、とうとう静留は背中を向けてしまった。 
「なつき…」 
「ん?」 
「おおきに」 
「へ?」 
「うち、嬉しすぎてなつきの顔よぉ見れません」 
「静留?」 
「なつきにとってその子は分身みたいなモンやろ?そこにうちの居場所も作ってくれたん?そんなんええの?」 
「ばっ…そんなこと気にしてたのか?」 
「せやかて…」 
 ぐいっと静留の肩をつかんでムリヤリ自分の方に向けさせると、なつきはじっと静留の目を見つめた。 
「ワタシは、静留と肩を並べて歩くのも好きだけど、でも夜とかその…一人で歩かせるのも心配だし…バイクなら少しでも長く一緒にいられるだろう?電車の時間とか気にしなくてもいいし…ま、冬は少し寒いがな」 
「なつき」 
「お前ならコイツも喜ぶと思うぞ」 
「おおきに…おおきになつき」 
 静留はなつきの肩に顔を埋めると、何度も何度も繰り返し囁いた。 
「わかったから、静留もう泣くな」 
「泣いてまへん」 
「あーはいはい」 
 ぽんぽんと背中をあやす。 
 どうも静留はこうされるのが好きらしく、少しづつ落ち着きを取り戻していく。 
「静留?落ち着いたか?」 
「ん」 
 腕の中でコクンとうなづくと、少しだけ顔をあげる。 
「静留?じゃぁもう少しだけ暖かい格好してこい。でかけよう」 
「どこ行きますのん?」 
「せっかくだからな、それとこれ…試して見よう」 
 ぽんぽんっとタンデムシートをたたく。 
「ん、ちょぉ待ってておくれやす」 
 静留はそっとなつきの腕から離れると、ヘルメットを抱えたまま部屋に戻る。 
「ヘルメット置いて行けばいいのに」 
 なつきはぽつりと呟くとクスリと微笑んだ。 
 
  ☆
 
「いいか?ちゃんとつかまってろよ?」 
 エンジン音にかき消されないように大声で叫ぶ。 
「はい」 
 ギュっとなつきの腰に手を回すと、振り落とされないように、なつきの運転に支障のない程度にしがみついた。 
「よし」 
 なつきはアクセルをいつもよりそっと開けた。 
 いつも走る海沿いの道をずっと飛ばす。 
 冷たい風を切って走るドゥカティのエンジン音は相変わらず絶好調を告げていた。 
「静留―大丈夫か?」 
 信号で止められた際になつきが、一生懸命しがみつく静留を振りかえる。 
「大丈夫か?」 
 シールドを上げてもう一度声をかける。 
 コクンとうなづく静留に、なつきもうなづき返して、もうすぐだから…と告げると再びシールドを下げた。  
 もうすぐだからと言ってから随分走ったところでなつきは少しづつスピードを緩め、エンジンを切った。  
「ここは…」 
「あぁ」 
 なつきはそう言って静留に降りるように促すと、続いて自分もシートを降りた。 
 途切れたガードレールの前に広い海が広がる。 
「ここは…静留も知ってると思うが、母さんが、そしてワタシが落ちたところだ」 
「えぇ」 
「幸いワタシは一命を取りとめたが…母さんが守ってくれたのかもしれないな」 
「そうどすな、きっと」 
「おかげで静留に出会えた」 
「え?」 
「大事な人を亡くして、信じるべき親にも置いていかれて、ワタシはずっと人を信じることが出来ずにいた。人に関わるのが怖かったのかもしれない…また失うのが怖くてな」 
「なつき?」 
「それでも静留はワタシに関わろうとしてくれた…そばにいてくれた…チャイルドが倒されたら自分の大切な人を失うと聞かされた時も、静留はワタシを守るために…ムチャをしてくれた」 
 ははっと今だからこそやっと笑って話すことが出来るというように笑む。 
 なつきはガードレールに腰をかけて静留を見上げると、黙って話を聞いていた静留の腕をぐいっと引っ張った。 
「きゃっ」 
 そのまま静留の首に両手を回すとぶらさがるように抱き寄せ、耳元に触れるか触れないかの距離で囁く。 
「なつき?」 
「これからもずっと…そばにいてくれ、静留」 
 くすぐったそうに肩を竦めると静留ははっきりと 
「なつきがイヤやゆうてもそばにいます」 
 と今度は静留がなつきの耳元に唇を寄せて囁いた。 
「そうか…ありがとう。今日は母さんに報告も兼ねて来たかったんだ」 
「なんのどすか?」 
「ワタシには大切な人がいるって…だからもう大丈夫だからってな」 
「ウチ?」 
「今この会話の流れでお前のほかに誰がいるんだ?」 
「嬉しい…おおきになつき」 
 静留はなつきの背中に手を回すと、ギュっと力を込めた。 
「い、痛いぞ静留」 
「あ、ごめんなつき」 
 慌てて離れる静留を笑って見上げるなつき。 
「なつき?」 
「ん?」
「お返しどす」 
 ニッコリ笑うと、少しだけ腰をかがめてなつきの唇に静留は自分のそれを重ねた。 
「約束します、ずっとなつきのそばにおるって」 
「あぁ」 
 2人を見つめるヘルメットが仲良くドゥカティのそれぞれのシート並んでいた。 
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Date:2008/08/22
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