Planetarium SS置き場

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□ 美奈×レイ □

桃缶とダッフルコート

受験シーズンの頃の話・・・かな
まえがき 




もぉぉっいい加減にしてよ!バカ!!」 
「バカとは何よ、バカとは!」 
「もう出てって!」 
「帰るわよ!帰ればいいんでしょ?帰れば!」 
 
  ☆
 
「最近さぁ、美奈子ちゃん来ないね」 
 何気なしにまことがつぶやいた言葉に、ピクリとレイの背中が震える。 
「亜美ちゃん何か聞いてる?」 
「ううん、あたしは何も」 
 チラリとレイの表情を伺いながら答える亜美。 
 あのケンカからもうかれこれ3日が経つ。 
 美奈からは謝りの電話も無ければメールもない。 
 でも絶対アレは美奈が悪い! 
 
  ☆ 
 
「あーツイてない!最悪!」 
 ベッドには頬を赤く上気させて、アイスノンを額に乗せた美奈がブツブツと誰にともなく文句をぶつける。 
 そんな美奈のベッドの上ではアルテミスが呑気に眠っている――のがこれまた美奈のカンに触った。 
「アルテミス!聞いてるの!?」 
 ばふっとクッションをぶつけられたアルテミスは迷惑そうに答える。 
「知らないよ全くぅ、3日前にぷんすか怒って帰ってきたと思ったら突然倒れるんだもん。びっくりしたぞ」 
「ふん――げほっごほっ」 
 激しく咳き込むと、もうしゃべるのも億劫になってばさっと布団を頭からかぶり、フテ寝を決め込んだ。 
「ったくぅ」 
 アルテミスがあきれた顔でため息をついたその時だ。 
 コンコンっと扉をノックする音と共に、この場に似つかわしくない明るい声が飛び込んで来た。 
「美ぃ奈子ちゃん?大丈夫かい?」 
「まこちゃん?亜美ちゃんも?」 
「風邪だって?お母さんに聞いたよ。あたしらさっきまでレイちゃんちにいたんだけどね、美奈子ちゃんいないからどうしたの?って聞いてもレイちゃん答えてくんないからさ、気になって来ちゃったよ」  
 ひょこんっとまことの背中から現れた亜美が心配そうな顔をのぞかせる。 
「大丈夫?知らなかったから手ぶらでごめんね」 
「いいのよ――レイちゃん何も言わなかったの?」 
 二人は同時にコクリと首を縦に振る。 
「そう・・・」 
 もそりと体を起こした美奈子の肩ががっくりとうなだれる。 
「あぁ起きなくていいよ!美奈子ちゃん、一体何があったんだい?」 
「ちょっと――ね」 
「またケンカしたの?」 
「またって・・・ま、ね」 
「知らせてないのかい?この状況」 
「うん、言ってない」 
「言わなくていいの?美奈子ちゃん?」 
「ん、いいわ」 
 まことの言葉に甘えて、再びごそごそと布団に手足と首を――亀のようにひっこめる。 
「えっと、お大事にね、レイちゃんには一応言っとくね」 
 まことの声に一言ボソリと言い放つ。 
「いい」 
「え?」 
「言わなくて・・・いいから」 
「美奈子ちゃん――わかったからとにかくゆっくり休みなね、お大事に」 
「美奈子ちゃん、体が弱ると心も弱るものだからとりあえず早く治してね、お大事に」 
 ぱたんと扉が閉まる。 
 二人が出て行った後の部屋は、何だか静かで少し温度が下がった気がした。 
「レイちゃんのばか」 
 
  ☆ 
 
「弱ってたなぁ美奈子ちゃん」  
「ん」  
「どうする?亜美ちゃん」 
「レイちゃんに知らせるわ、電話してみる」 
「だね、あたしだとまた余計なこと言っちゃいそうだからお願いするね」 
「うん」 
 
  ☆ 
 
 RRRRRR 
 
 ドクンっと鼓動が跳ねあがる。 
 ぱかんと携帯を開くと、画面が亜美からの着信を告げていた。 
 一瞬彼女じゃないかと思ってドキっとした鼓動を何とか静めると、通話ボタンを押す。 
「もしもし亜美ちゃん?どうしたの?」 
「あ、うん、さっきね、美奈子ちゃんの家に行ってきたの」 
 なんとなく予想していたとはいえ、いざ名前を出されるとやはり動揺する。 
「――で?」 
 自然と声のトーンが1オクターブほど下がる。 
「すごい熱出して倒れてたわ」 
「え?」 
「レイちゃんに知らせてないみたいだったし、ホントは知らせなくてもいいって言われてたんだけどやっぱり知らせなきゃと思って・・・”また”ケンカしたの?」 
「いつものことよ!」 
 あの時のことを思い出すと、ついつい語気が荒くなってしまう。 
 亜美ちゃんには関係ないのに。 
「どうしたの?聞いてもいいかな?」 
「美奈が勝手なことばかり言うから頭に来ちゃって――」 
「ん」 
「あたし――いつもいつもいいように遊ばれて、でもどうしても美奈の勢いっていうかそういうのに負けちゃって流されて、でもそういうのが続くと悔しくなっちゃって、つい怒鳴っちゃったの」 
「うん、わかる気がする、あの勢いにはかなわないわよね」 
「亜美ちゃんも?」 
「ん、だって相手がまこちゃんだもの、あたしが勝てるわけないわ」 
 くすくすっと楽しそうに笑う亜美が不思議に思えて聞いてみる。 
「悔しく・・・ない?」 
「うーん、まぁねぇ力とか勢いではどうやっても勝てないから、違うやり方で仕返しすることにしたの――。あたしも最初は結構悩んだんだけどね、悩んでるうちにこういう結論に達したの。まこちゃんにも苦手なものあるしね」 
 くすくすっと何を思い出したのか、受話器の向こうで再び笑い声を上げる亜美。 
「そっか、亜美ちゃんすごいね」 
「そう?美奈子ちゃんって根本はまこちゃんと似てると思うんだけど」 
「そう?」 
「うん、強引に押してくるところとか、実は結構単純なところとか色々」 
 さすが亜美ちゃん。的確なところを突いている。 
「まぁレイちゃん無理しなくていいんじゃないかしら?たまには反省してもらうことも大事だしね。あ、でも一応伝えたから」 
「わかった、ありがとう亜美ちゃん」 
「ん、おやすみレイちゃん」 
 レイは電源ボタンを押して電話を切ると、ハンガーからコートを引っ張り出してくる。 
 まだまだ夜は冷える。 
「仕方ないわね、全く世話が焼ける」 
 
  ☆ 
 
 コツン コツン 
 夢うつつの中で、頭に妙な音が響く。 
 コツン コツン 
 ―――??? 
 コツン コツン  
「美奈、レイが来てるよ」 
「へ?」 
 朦朧とした意識のせいかアルテミスの言葉を一瞬理解できないでいた。 
 アルテミスはカラリと前足で器用に窓を開ける。 
「レイ・・・ちゃん?」 
 心のどこか、いや全部で待ち焦がれていたその名前を改めて呟く。 
 その名前をシッカリと認識した瞬間、ガバっと布団から飛び起きた。 
 そっと窓から見下ろすと、寒そうに肩をすくめ、白い息を吐いて佇んでいるレイと目が合った。 
「何よ?」 
 やっぱり少し気まずいせいか、つい無表情で声をかけてしまう。 
「別に。熱下がったの?」 
 レイはプイっとそっぽを向きながら問う。 
 脳裏には夕方の二人の訪問者の顔が浮かぶ。 
「亜美ちゃん?まこちゃん?」 
「亜美ちゃんよ」 
「そっか。言わなくていいって言ったのに」 
「ふん」 
 レイがガサゴソとコンビニの袋らしきものを探ると、ポイっと何かを投げてよこす。 
「わっ、たっ、たっ何?」 
 レイの投げた物体を何とか受け取るとナンだろう?と見る。 
「桃缶?」 
 キョトンと缶のラベルを見つめる。 
「早く治しなさいよ」 
 クルリっと踵を返すとスタスタと歩き去ろうとするレイの背中を呆然と見つめる。 
「おいっ美奈!レイ行っちゃうぞ?」 
「え?あ、うん!」 
 あたしはアルテミスに言われて我に返ると、桃缶を握り締めたまま部屋を飛び出した。 
「ちょ、おい!美奈!そんな格好じゃまた!…たくぅ、また風邪ぶり返しても知らないぞ」
 アルテミスはふわぁとあくびをすると、再び布団の上で丸くなる。 
 
  ☆ 
 
「レイちゃん!」 
 あたしはスタスタと――競歩か!っとツッコミたくなるくらい早歩きのレイに追いつくと呼びとめる。 
「ん?ちょ、美奈ぁ?」 
 振り返って目を丸くしているレイを、ガバっと抱きしめた。 
「な、何?」 
「ごめん、レイちゃん」 
「うん」 
 レイの手があたしの背中を優しくなでる。 
「会いたかった、抱きしめたかった…レイちゃんごめんねぇ」 
「くすっ、ホントにえらく弱ってるのね」 
 レイは自分のコートを脱ぐと、あたしの肩にかける。 
「そんな格好で出てきたらまた熱がブリ返すでしょ?バカねぇ」 
「ばかって言わなくてもいいじゃん、ぐすっ」 
 鼻をすする。 
「早く家に入りなさい」 
「ん、レイちゃん――寂しかったよ?」 
「そうね、あたしも・・・何だかもの足りなかったわ、だから早く治しなさいよね」 
「わかった、ぐすっ」 
「ほらぁ、泣かないの」 
 目元の涙を親指でそっと拭ってもらうと、あたしは鼻をすすりながらコクンとうなづく。
「ねぇ、レイちゃんちょっと待ってて!」 
 あたしはレイの格好に目を止めると、ふと走って家に戻る。 
「うん?」 
 レイは自分の両腕で自分の肩を抱きしめる。 
 ぶるっ 
「ごめんレイちゃん!」 
「うん、何?」 
「はい、帰り寒いからコレ」 
 戻って来るなり差し出されたのは見覚えのある美奈のダッフルコートだ。 
「これは?」 
「レイちゃんのコート貸しといて?」 
「何で?」 
「今晩レイちゃんの身代りにするの。寂しいんだもん。えへへお守り♪」 
「お守りって・・・まぁいいけどさ」 
 コートを受け取るとソデを通す。 
 美奈とは体型がほとんど変わらないからちょうどいい。 
 あったかい。 
 美奈の匂いがする。 
「じゃぁ帰るからね、美奈」 
「うん――くしゅん」 
「ほらほら、早く戻りなさい」 
 体を反転させられ、背中を押される。 
「うん、じゃぁね――レイちゃん。ありがと」 
 首だけ振り返ると、ニコリと微笑む。 
「ん、あ、美奈?」 
「へ?何?・・・!?」 
 呼びとめられ、腕をつかまれて振り返った瞬間、あたしの唇に触れるやわらかな感触。 
「すっかり冷たくなってる」 
 あたしがあまりにも突然の出来事に呆然としている耳元でレイが囁く。 
「レイちゃん、風邪・・・移るよ?」
「あたしが少し・・・風邪もらったげるわよ」 
 そう囁くレイに、再び今度は深く長いキスを送られる。 
「レイちゃん・・・うん、ありがと」 
「おやすみ美奈」 
「おやすみレイちゃん」 
 
  ☆ 
 
 二日後 
 
「レっっイちゃぁぁぁん!」 
 パシンっと勢いよく障子が開け放たれたかと思うと、久しぶりに元気(すぎる)声が響き渡る。 
「え?み、美奈ぁ?」 
「あ、美奈子ちゃん!もういいのかい?」 
「ほぉっほっほっーー愛野美奈子!完全復活よ!」 
 ガバっと背後から勢いよく抱きつく美奈のあからさまな愛情表現に、ピクリとレイの眉間にシワが寄る。 
「ちょっと!離れなさいってば!」 
「いいじゃない~久しぶりなんだもん」 
「ばか!みんないるでしょ?」 
「みんながいなきゃいいの?」 
 レイの顔がみるみる紅潮する。 
「ばかっ美奈!!」 
 いつものやりとりにまことと亜美ははぁっとため息をつきつつも、苦笑いで顔を見合わせる。 
「アレ?美奈子ちゃんの着てるコート、レイちゃんのじゃない?」 
 ふっとコートに視線を止めた亜美の鋭い指摘に、美奈が微笑む。 
「そうよ、レイちゃんの」 
「あれ?そういえばあそこにかかってるのは美奈子ちゃんのだよねぇ?」 
 今度はまことが壁に目を向ける。 
 壁にかけられているのは、あの時貸した美奈のコートだった。 
「うん」 
「ふーん、まぁいいけどね、仲直りしたんならさ、大体今度の原因は何だったんだい?」 
「別に、たいしたことじゃないわ。あまりにも美奈がバカなこと言うから」 
「バカなことって!キスしたい、抱き・・・んぐっ」 
 レイが美奈の口を両手で思いっきり塞ぐ。 
「ば、ば、ばかっっっ!」 
 美奈が顔を真っ赤にして酸欠を訴えるように手足をジタバタさせる。 
「あの・・・まこちゃん、そろそろあたしたち帰りましょうか」 
「だね、付き合ってらんないよねぇ」 
 さっさと参考書やノートを片付けると、二人は立ちあがる。 
「じゃね」 
「またね」 
 
  ☆ 

「まぁぁぁったく!風邪ひく前と何も変わってないじゃない!」 
「風邪引く前より、ずっとレイちゃんのこと好きよ?」 
 抱きついたまま背後からレイの頬にそっとキスをする。 
「・・・ばか」 
 振り返るとそっと美奈の唇にレイは自分のソレを重ねた。 
 
  ☆ 
 
「ところでさ、どうして『桃缶』だったの?」 
「あぁ、あたし好きなの」 
「は?」 
「風邪といえば桃缶なのよ!昔ママが生きてた頃、良く食べさせてもらってたの」 
「へぇぇぇぇっそうなんだ?えへへそっか♪」 
「ちなみに白桃限定」 
「そ、そうなんだ、覚えておくわ」 
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Date:2008/08/29
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