Planetarium SS置き場

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安眠

なつき×奈緒です
結構好き、この二人




「最近夜遊びはだいぶなくなったけど、眠れないみたいなんだー奈緒ちゃん」
 そう小耳に挟んだのは、舞衣や命、千絵とあおいとランチを共にしていた時だった。
「奈緒ちゃんが?」
「ん、何だか時々うなされてるんだ」
 寮で同室のあおいが少し心配そうにそう言うと、小さなため息をついた。
「へぇ~何だろうね」
 ただの不眠症くらいに思っているのか、そういう時はあれがいいこれがいいと、どこで聞いた情報なのか怪しいものまで出て来たが、何となくいつしかその話題は終わっていた。
 なつきはそれに加わることが出来なかった。
 事情を知っていたから・・・。

  ☆
 
「奈緒!」
「あん?」
 めんどくさそうに振り返る奈緒は、相手を見てさらにうんざりした顔をした。
「あの・・・奈緒」
「何よ」
「えと、その・・・ちょっとつき合わないか?」
「は?なんであんたなんかに」
「あ、いや、なんでと言われても・・・」
 言葉を濁す。
 誘ったところで何をどうするかなんて全く考えてもいなかった。
「?」
「とにかく乗れ!」
 考えるのもめんどくさくなったなつきは、無理矢理タンデム用のヘルメットを押し付けるとバイクの後ろを指差す。
「ったく、なんだってーのよ」
 ブツクサ言いながらも、奈緒は渋々乗り込んだ。


 風を切って海沿いの道を疾走するなつきのバイク。
 どこへ行くつもりなのかさっぱりわからない。
 だが、風は気持ちよかった。
 どうしてなつきが自分を誘ったのかとか、そんな理由なんかもうどうでもよく思えて来た。
 クンっとアクセルが回る音と共に、少しだけスピードが上がる。
 振り落とされないようになつきの腰にしっかりつかまり直した。

  ☆

 いつしか再び見慣れた風景に戻って来た頃には、もう随分日が暮れ始めていた。
「着いたぞ」
「着いたってここ・・・」
「わたしのうちだ」
 あの事件で破壊されまくったマンションから引っ越しを余儀なくされたなつきが見つけた新しいマンションだ。
「何でよ!」
「まぁ上がっていけ」
「はぁ?」
「お茶くらいは出すぞ」
「わっけわかんない!」
 ブチブチ文句を言う奈緒の腕をつかむと、なつきはさっさとエレベーターに向かう。
「大体何であんたんちに来るのにあんな遠回りすんのよ!」
「気分転換にはなっただろ?」
「べっつに!」
 フンっとソファの端っこに座ると足を組んでそっぽを向く。
 そんな奈緒を横目に滅多に立つことがないキッチンになつきは立った。
 思いの他片付いているのは、なつきの身の回りを世話してくれる人が几帳面なおかげだった。
 うーんと何かを思い出そうとするように唸る。
「よし」
 そう言うと冷蔵庫を開け、おもむろに紙パックに入ったものを取り出した。
 こぽこぽとマグカップにそれを注ぐと、電子レンジに放り込んだ。
 ピっという音と共に回り出す回転皿。
 しばらく待つと、あたため終わりの合図が鳴った。
「お前にはこれがいいだろう」
「あん?何よ」
「ホットミルクだ、少し甘くしてある」
「なっ!?」
 子供扱いされた気がして奈緒の額にピキっと青筋が浮かぶ。
「あんたケンカ売ってんの?むかつくんですけど」
「は?そんなわけないだろう」
「あん?」
 奈緒の座っているソファの横になつきも座る。
「お前最近眠れてないって聞いたから」
「!?」
「・・・最近だけじゃないだろう?」
「え?」
「アノ時お前言ってたじゃないか・・・眠れなくなったって」
 奈緒の脳裏によぎったのは、幼い頃の忌まわしい記憶。
 そしてアノ祭りの記憶。
 祭りが終わったからといって消えることのない記憶。
 藤乃静留をおびき出すためになつきを拉致した時、思わず自分の生い立ちを口走ってしまったことを思い出した。
 自分を見失っていたとはいえなぜあんなことを言ってしまったのかと悔やまれる。
「お前は悪くないのにな」
「え?」
「オトナは勝手だからな、金さえ渡してればそれでいいと思ってるバカもいる」
 そう行ってチャリっとマンションの鍵を手の中で弄ぶ。
 このマンションが親の金で借りられているということだろう。
「わたしにはまだ一人で生活して行くほど甲斐性もないのも事実だから文句も言えないのだがな・・・悔しいけど黙って利用してやることにした」
 一人で暮らすには少し広すぎる気もしないではない贅沢な部屋を改めて見渡した。
「藤乃は?」
「静留?今日は来ないだろ」
「しょっちゅう来てるんだ?やーらしー、何やってんだか!」
「ばーかっ」
 ふふっと小さく笑うなつき。
 どこか余裕のある笑顔を浮かべるなつきが、何だか突然自分よりオトナに見えた。
 いつも普通に同じレベルでケンカをするので忘れがちだが、よく考えたら自分はまだ中学生で、なつきは高校生だ。
「わたしは父親に愛されて育った記憶がない」
「え?」
「母親は幼い頃に死んでしまった。父親はわたしを置いてとっとと女を作って出て行った、金だけは送ってくるけどな。それからはずっと一人だった」
「・・・」
「わたしも眠れなかった」
「玖我・・・」
「だが最近気づいたことがある」
「何?」
「とりあえず泊まっていけ」
「はい?」
 次から次へと話をはぐらかされ、突拍子もないことを言うなつきに奈緒の肩の力が抜けた。
 でもなつきの言う“最近気づいたこと”が妙に心にひっかかった。

  ☆

 電気の消えた寝室で、ふたり並んで天井を見上げる。
「それで何よ」
「ん?何が?」
「最近気づいたことって?」
「あぁ・・・」
 ごそごそとなつきは寝返りを打つと、ふわっとそのなつきより少しだけ小柄な体を引き寄せた。
「はぁぁぁ?ちょ、な、玖我!離しなさいよ!」
 ジタバタ暴れて何とか逃げ出そうとするが、そんなもの意にも介さずなつきは黙って奈緒の頭を優しく撫でた。
「玖我っ・・・何・・・」
「いいからっ」
「は?」
「ゆっくり眠れ」
「こんな状況で眠れるわけないでしょ!」
 ドンと拳でなつきの肩を叩く。
「いいから」
 ぽんぽんと今度は背中を優しくあやす。
「何よ・・・何なのよ・・・」
 はぁ~っと奈緒は諦めたように力を抜いた。
 なつきの胸に子供のように丸まった体を埋める。
 トクントクンと鼓動が聞こえた。
 懐かしい音。
 ふと目を閉じてみる。
 鼓動の音に合わせるようになつきの胸元が揺れる。
 その動きに合わせるように奈緒の頭も規則正しく揺れた。
 ゆりかごに揺られているような安堵感が奈緒の意識を奪うのにそう時間はかからなかった。
 そしてストン、と突如として意識は寸断された。

  ☆

「ん・・・」
 目を開けるとそこには見知らぬ天井があった。
 一瞬自分がどこにいるのか認識出来ずに、視線を彷徨わせた。
「ん?何だ、起きたのか」
 思いがけないところからの声に奈緒はビクっと飛び起きた。
「な、え?あ、く、玖我?」
 全く状況がつかめずにきょろきょろ部屋中を見渡す。
「ん・・・朝から騒がしいヤツだなぁ、日曜日なんだからゆっくり寝かせてくれ」
 もぞもぞと奈緒に背を向けて再び布団に潜り込もうとするなつきの肩をつかむと、叩き起こしにかかった。
「ちょっと!起きなさいよ!」
「あぁん?うるさいなぁ」
 寝起きの悪いなつきはめんどくさそうに片目を開けた。
「何これ?どういうこと?」
「何が」
「どうしてあたしとあんたが・・・!」
 そう言った瞬間、昨夜の記憶がフラッシュバックを始めた。
 言葉を切って呆然と視線を空に彷徨わせる奈緒の顔を見上げてなつきはニヤリと笑みを浮かべた。
「眠れたみたいだな」
「はぁ?」
 言われて見れば・・・。
 奈緒は自分がいつも見るイヤな夢の記憶も、起きた時の不快感も全くないことに気づいた。
「・・・何で?」
「どれだけ意地を張って一人でも大丈夫だって言い聞かせても、人は一人では生きて行けないんだ」
「は?」
「わたしが最近気づいたこと・・・人のぬくもりは人を安心させるってことだ」
「・・・」
「わたしも眠れなかったという話はしただろ?
 でもマンションが破壊されて、行くところもなくて寮の静留の部屋に泊まってたんだ」
 そのことは奈緒も知っていた。
「その時にな、一人部屋のせいでベッドの空きがなかったから仕方なく静留の横で眠ったんだ。そうしたらさ、久しぶりによく眠れたんだ・・・アイツはどうだったか知らないけどな」
 始めは緊張していたなつきだったが、気づいたら不覚にも爆眠してしまっていたのだ。
 まだ静留の気持ちを受け入れきれてない時期だったので、静留には辛い想いをさせただろうことは容易に想像出来たが、それは黙っていた。
「それで?ノロけたいわけ?」
 ムっとして奈緒が言い放つ。
「ん?だから・・・眠れただろう?」
「わっけわかんない!」
「そうか?でもお前の寝顔、思ったよりかわいかったぞ?」
 思い出したようにくっくっくとかみ殺すように笑う。
「ばか!!!!さいってー!帰る!」
 ガバっとなつきの布団ごとはぎ取ってベッドから飛び降りると、枕を想いっきりなつきめがけで投げつけた。
「いてっ、わっ、こら!布団返せ!」
「ふん!」
 一刻も早くここから逃げ出したいとうように素早く制服を身につけながら、ベッドの上のなつきを睨みつけた。
 なつきはごそごそと布団を引き上げながらもう一度ふふっと笑う。
「眠れなくなったらまた来いよ」
 まだ少し眠そうな目でなつきがそう言うと、奈緒の頬がサっと赤く染まった。
「誰が来るもんか!」
 奈緒が去った後のドアを見つめて、なつきは再びくっくっくっと笑い出した。
「さて、もう一眠りするか」
 奈緒がちゃんと眠るまでずっと頭や背中をあやし続けていたので、なつきはまだまだ眠かった。
 もぞもぞと布団に潜り込み、まだ奈緒の温もりの残った枕を抱きしめてなつきは眠った。
 昼に待ち合わせをしていたが、いつまでたっても来ないなつきを迎えに来た静留に叩き起こされるまで・・・。
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Date:2008/08/29
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