Planetarium SS置き場

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小さな彼

なぁにを血迷ったのかこんな話(笑)
まこ亜美要素含んでるけど、ちょっと違う。
まこちゃんの話なので、ここに入れちゃいます。
子供ってあれでも結構色々考えてんだよねー・・・という話(笑)
ではでは
 



 『ごめーん!今日の勉強会行けなくなった!』

 突然入ったまことからの一報を、亜美はとりあえず、すでに火川神社に集合していた面々に伝える。
「ふーんそっかぁ、まこちゃん来ないんならオヤツは期待できないわね」
 美奈子が言うと、隣でレイとじゃれていたうさぎがピタっと動きを止めて振り返った。
「えーーーーっまこちゃん来ないのぉ?何でー?」
「理由は何も言わなかったからわからないけれど、とても急用みたい。用件だけ言って切っちゃった」
 正確には亜美への用件が別にあったのだが、あえて伝える必要はないので黙っていた。
「ま、まさかまこちゃんオト・・・コもがっっ」
 最後まで言い終える前にガバっとレイに口を塞がれた美奈子は、モガモガと息苦しそうにもがく。
「ま、まこちゃんにも色々あるんでしょ、さ、勉強勉強!」
 レイがその場をサクっとまとめると、ぶーたれている美奈子とうさぎを無視してさっさと教科書を開いた。

  ☆

 ピンポーン

 インターフォンが鳴ると同時に、バタバタっとまことの元を走り去る少年。
「こぉらぁぁぁぁっ!ケンタ!そんな格好で外出るな!」
「うるさい!ぶーす!」
「何おぉぉぉっ世話になっといてなんて言い草だ!」
「世話してくれなんて言ってねーぞ!」
「何だとぉぉ?」
 アカンベーと舌を出してパンツ一枚の格好で飛び出そうとする少年を追いかけてドアを開けられる寸前で捕まえると、ヘッドロックして脇に抱えたままドアを開けた。
「いらっしゃい亜美ちゃん」
「今日はどうしたの?まこちゃ・・・ん?」
 まことの脇に抱えられている見知らぬ顔に、亜美の視線が止まった。
「誰?コイツ」
 ジタバタと暴れるのをやめて、キョトンと亜美を見上げるとまことに問うた。
「コイツって言うな!水野亜美お姉さんだ!」
 コツンと脳天にそんなにキツくないゲンコツをくらわしながらまことは亜美を招き入れた。
「とりあえず亜美ちゃん入ってよ、説明するからさ」
「あ、うん」

  ☆

「えっとね、コイツはケンタ。このマンションの人の子なんだけど、ちょっとワケアリでしばらく預かることになったんだ」
 ものすごく簡潔な説明しか出来なかったが、それ以上言いようがないから仕方がない。
 まことはコトンとアイスティーを2つとオレンジジュースを置くと、亜美の前の席に座る。
「そうなんだ」
 言うと亜美はまことの横に座るケンタに微笑みかける。
「水野亜美です、よろしくねケンタくん」
「あ、お、おう!」
 頬をうっすら染めて、照れ隠しのようにズズーーーっとジュースをすする。
「なぁにテレてんだよ!10年早いっつーの!」
 ニヤリと笑ってケンタの頬をツンツンっと突く。
「うっ・・・7コしかちがわねーじゃん!ばーか」
「7コもちがうっつーの!」
「ちくしょー!」
 バタバタとキッチンに走り去ると、冷蔵庫を開け閉めする音が聞こえた。
「寝る前にジュースばっかガブ飲みしてるとオネショするぞー」
「しねぇよ!」
「くっ・・・生意気な・・・」
 そんな二人のやりとりを亜美は楽しそうに笑ってみつめていた。
 あまり見ることのできないまことの別な一面を見た気がする。
「7つ違うっていうと・・・3年生?」
「9歳」
 まことは亜美と一緒に飲むために入れたアイスティーをコクリと喉に流す。
「お母さんと離れて寂しくないのかな」
 ふと自分の幼い頃を思い出したのか、亜美がぽつりと呟く。
「あぁ、うん・・・まぁすぐに帰ってくるとは思うんだけどね」
「寂しくなんかねー!勝手に人のウワサ話すんなよな!」
 キッチンから顔を出すと、ジュース片手にビシっと二人を指差して言い放った。
「ったくぅ子供はもう寝る時間だぞー」
「おまえも子供だろ!寝ろよ!」
 言われたまことはニヤリと唇の端を上げて笑う。
「はっはーんさては、寂しいんだろう?一人で寝れないかぁ?」
「ちょっとまこちゃん」
 少し調子に乗りすぎているまことをいさめるように袖をツンっと引っ張る。
 表情を失ったようにぷいっとそっぽを向くと、ジュースの入ったグラスを流しにつけて黙ってその場を去るケンタ。
「あちゃぁ・・・言いすぎたかな。ちょっと行ってくるわ・・・寝かしつけたら戻ってくるからごめんね」
「うん、遠慮しないで」

  ☆

「さてと、寝るかな」
 ゴソゴソとすでに膨らんでいるベッドに潜り込むと、わざとケンタに背中を向ける。
 いつもより柔らかく感じるベッド・・・そう、亜美ちゃんと一緒にいる時の感覚に似ているな。
「な、何だよお前向こうで寝ろよ」
「うるさいなぁ、あたしのベッドだろ」
「うっ・・・あの姉ちゃんほっといていいのかよ」
「いいからっ、早く寝ようよ」
 心の中で、ごめんね亜美ちゃんと呟く。
「まこっ・・・と?」
 うーんっと一つ唸ったまことは、寝返りを打つと同時にケンタの体を抱きしめた。
 そして聞こえてきたのはまことの安らかな寝息だった。
「マジ・・・かよ」
 至近距離に迫るまことの顔にドキドキしながらも、ケンタはぽすっとどこか嬉しそうにまことの胸に顔を埋めた。
「しゃーない・・・一緒に寝てやるよ」

  ☆

「まこちゃん?」
 まことの部屋に足を踏み入れた亜美は、ベッドを覗き込むとふっと笑顔を浮かべた。
「気持ち良さそうに寝てる・・・今日は帰るわねまこちゃん」
 聞こえるか聞こえないかの小声で起こさないように声をかける。
「おやすみ」

  ☆

「おいまこと!今日はあの姉ちゃん来なかったな?」
 ケンタが来てからの3日、散々振り回されたまことが、今日もドロドロになったケンタを何とか風呂に入れようと捕まえた時だった。
 あれから毎日様子を見に来てくれてた亜美ちゃんが、今日は姿を見せなかったことが不満だったのか突然そう言うとまことを見上げた。
 実は結構亜美ちゃんのこと気になってるのか?とかちょっと思ってみたり。
 亜美ちゃんは結構年下キラーだからなぁ。
 ふと、うさぎの弟の進吾君を思い出した。
 かつては彼も・・・多分ライバルの一人だったであろうことを思い出す。
「え?あ、うん今日は亜美ちゃんお父さんのところに行くからってさ」
 夏休みだからたまには会いに行くんだと、昨日の帰りにそう言っていた。
「お父さんに・・・会いに?」
「うん、亜美ちゃん事情があって今お父さんと暮らしてないんだ、お母さんと二人で暮らしてる」
「もしかして・・・リコンってヤツか?」
「え?あ、うん」
「そか・・・」
 しょんぼりと俯くケンタの頭をまことはぽんぽんと優しくなでる。
「ケンタが落ち込むことないだろう?」
 今にも泣き出しそうな顔でまことを見上げる。
「なぁまこと・・・お前の父ちゃんと母ちゃんは?なんで一人で暮らしてんだ?」
「あたしの?あたしの両親はあたしがケンタくらいの時に天国に行っちゃった」
「え?」
「飛行機の事故でさ」
「そう・・・なのか・・・それは寂しいな・・・」
 さらにしょんぼりと落ち込むケンタを、苦笑したまことはしゃがんで抱きしめる。
「なーんだよ、ケンタらしくないな。あたしはもう慣れたから大丈夫だよ、友達たくさんいるしさっ一人じゃないよ」
「カレシは?」
「たくぅ、痛いとこ突くなよ」
「いないのか?」
「いいだろ別に!」
 亜美の顔をぽんっと脳裏に浮かべながら、彼女ならいるけどね・・・という言葉はコクリと飲み込んだ。
 が、次の瞬間のケンタの言葉を聞いたまことの頭は真っ白になった。
「俺がなってやるよ」
「・・へ?」
「俺がお前のカレシになってやる」
 キョトンとみつめるまことの頬を、ケンタの小さな手が優しく包む。
「俺くらいの年で彼女いるヤツ結構いるんだぜ。ちょっとだけ俺のが年が下なだけじゃん。背だってすぐに追い越すぞ!」
「ケンタ・・・」
 ヘヘンっと自慢げに鼻の下をこすっているケンタを、まことは再びガバっと抱きしめた。
「イタっちょ、おま、この怪力女!」
「イイ男に育ちそうだな、ケンタ」
「うっ・・・当たり前だ」
「うん!ありがとね」
 チュっとケンタの額にキスをする。
「な、何だよ、寂しがりやだなまことは」
「ん、そうだよ」
「俺が守ってやる」
「くすっ、なーまいきっ」
「うっせー!」
「ははっ!よし!ドロドロだし風呂入ってきな!」
「・・・一緒に・・・入ろうぜ」
「・・・へ?」
 沈黙が流れた。

  ☆

「ホラこっち向いて!」
 風呂場でゴシゴシとケンタの体を洗ってやるまことの姿も、ケンタと同じ姿だった。
 ま、相手は子供だし・・・ね。
「くすぐってぇ!」
「文句言わない!ハイ頭出してーお湯かけるよー」
「ん」
「目つぶってなよー」
 言われるがままギュっと目をつぶるケンタの頭から勢いよくお湯をかける。
 ザバーーーっ
「うわっ」
「はい終わり!」
 ふるふるふるーっと頭を犬のように振ると、飛沫を散らす。
「わっ、ちょ、ケンタ!」
「よし、じゃあ今度は俺が背中洗ってやる」
「えー?ホントにー?サーンキュ」
 背中を向けたまことは、ゴシゴシと一生懸命洗ってくれるケンタの小さな手を感じていた。
「おっうまいじゃん、気持ちいいよ」
「そか?俺時々こうやって母ちゃんの・・・」
「うん・・・」
 その後の言葉を二人ともなぜか発することが出来なかった。

  ☆

「さすがにちと狭いな」
「なぁまこと?」
「んー?」
 心地よい温度のお湯がまことの体を癒す。
 ふにっ
「へ?」
 妙な感触に自分の胸元を見下ろす。
 ピキっと凍りつく時間。
 ケンタの手がまことの胸をふにふにと何かを確認するように触れていた。
「ちょ、ま、ケ、ケンタ?」
 バシャっとお湯を掻くと、まことは思わず両腕で胸を隠す。
「やわらかいな」
「ばか・・・」
 突然のことに動揺したまことだったが、ふっと息をつくと、諦めて腕を開放する。
 抱き寄せながらふっと問う。
「なぁケンタ?・・・お父さんとお母さん・・・」
「何でもない」
「そっか」
 まことの手はくしゃくしゃとケンタの頭をかきまぜた。

  ☆

「ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ」
「ん・・・」
「ちゃんと出来たらアイスクリームだ!」
 俯いてしまったケンタにまことはしゃがんで下から覗き込むと、ニカっと笑う。
「ケーンタ!元気ないじゃん?」
「だって・・・」
「ん?」
「俺・・・俺・・・のせいかも」
「何が?」
 ぐすっと鼻をすするケンタを抱き寄せて、後頭部を撫でながらまことが優しく問う。
「俺泣かないって・・・決めてたのに男だし俺・・・」
「でもまだ子供だろ?」
「でも・・・」
「ケンタが泣いても笑わないよ誰も、少なくともあたしは絶対笑わない」
 まことの言葉に安心したのか、堰を切ったように話し出す。
「父ちゃんと母ちゃんがリコンするって・・・俺・・・邪魔で置いてかれたのかな?俺、どっちと一緒に暮らしたいかって言われて、でもどっちも好きだから選べなくて、だから・・・」
 ぐすっと溢れる涙を腕でゴシゴシとこすりながら、小さくチクショーと何度も呟く。
「俺・・・のせいかな?俺が・・・」
「バカバカバカ!バカケンタ!」
 パシィっと今まで撫でていた優しい手が、イキナリ頭をはたいた。
「イテっ、なっ?」
 優しかった手が一変して厳しい叱咤になったことに驚いて
 ケンタは抱きしめられていたまことの腕から少し離れて見上げる。
「そんなわけない!お前が何したって?何にもしてないだろ!ケンタは、そりゃちょっとやんちゃだけど、でもいい子じゃん!お父さんのこともお母さんのことも大好きな・・・バカっ」
「まことぉ・・・」
 再びぎゅっとまことのTシャツをつかんで抱きつくケンタ。
「強かったなケンタ・・・男の子だなやっぱり」
 その背中をぽんぽんと優しく何度も何度も、ケンタの呼吸が落ち着くまであやす。
 あやしながらまことの目にも涙が溢れてくる。
 まことには両親を亡くす以前の記憶は、幸せに暮らしていた記憶しかない。
 亜美ちゃんや、ケンタみたいに両親がいてもこんな寂しい想いをした記憶はない。
 家族が一緒に暮らせないことほど寂しいことはない。
 特にまだこんなに小さな頃に・・・。
 色々思い巡らせていると、まことも泣けてきた。
「何でまことが泣くんだよぉ」
「だって・・・」
「お前のこと守るって言ったばっかなのに、もう泣かせちゃったのかよぉダメじゃん俺」
「バカ」
「ごめん、もう泣かないから、だからまことも泣きやめ」
 ゴシゴシっと思いっきり腕で涙を拭いて強がると、まだ涙の跡が残る目でまっすぐまことを見つめた。
「泣いたらいいじゃん」
「いや、もう泣かない!」
 強い瞳。
「そか」
 まことはふっと微笑むと、そっとケンタの目元にキスをした。
「おまじない」
「・・・ん」
 今更ながら真っ赤に染まったケンタの顔は、それでも嬉しそうに笑っていた。

  ☆

「さ、寝るよーケンタ」
「おう!」
 昨日よりも少し近づいた二人の距離は、クーラーの利いた部屋では丁度よい体温だった。
「あったかいな」
「うん、そうだね」
「お前初めて一緒に寝た日・・・っていうか毎日あっという間に寝ちゃうんだな!びっくりするぞ」
「あはは、毎日ケンタと遊んでるからさ」
「たくぅ」
 くすくすっ
「何だかさ、ケンタの体温が気持ちよくてさ、安心しちゃった」
「ふーん」
「ホラ、早く寝よう?」
 肩を抱くとコツンと額を寄せ合い、おやすみと言うなりすーっと二人同時に眠りに落ちていった。

  ☆

 3日後

 ぴんぽーん

「あ、迎えかな?」
 二人はパタパタとスリッパを鳴らして玄関に向かう。
 昨夜、い週間ぶりに迎えに行きますとケンタの母親から連絡が入った。
「ケンタ」
「母ちゃん!」
 一週間ぶりに姿を見せた母親に飛びつく。
「いい子にしてた?ごめんなさいね木野さん」
「や、全然いいんですよ!楽しかったもんねケンタ?」
「まぁな。母ちゃん、父ちゃんは?」
「ごめん・・・ケンタはお母さんと一緒にお母さんの田舎で一緒に暮らすことになったわ」
 薄々予想はしていた言葉だった。
「え?それじゃあ・・・」
「うん、許してねケンタ・・・一緒に来て・・・くれるわよね?」
「ヤダ・・・」
「え?」
「俺・・・これからもまことのそばにいてやるって約束したんだ!コイツ寂しがりやだから俺がいなきゃ・・・」
 不安そうにぎゅっとまことの手を力いっぱい握り締めながら見上げる。
「離婚の・・・理由は?」
 ぎゅっと勇気づけるようにケンタの手を握り返してまことは問う。
「すれ違い・・・仕事仕事で全然帰ってこないし、ケンタのことも全然かまってくれないし・・・」
「俺は大丈夫だよ!気にしてない!」
「母さんがダメなの・・・弱くてごめんね」
 ぽろぽろと涙をこぼして、呆然と佇むケンタをぎゅっと抱きしめると、何度も何度もごめんねと繰り返した。
 ケンタの手と引き離された手をぼんやり見つめて、まことは少し寂しさを感じた。
 でも・・・
「ケンタ・・・お前はまず母さんを守ってあげなきゃいけない」
 しゃがんでケンタとまっすぐ目線を合わせると、キッパリ言った。
「え?」
「男の子だろ?」
「でも・・・」
「あたしは強いから大丈夫!さ、な?」
 力こぶを作るように腕をぐっと曲げると、あたしは大丈夫!と言い聞かせた。
「・・・」
「大丈夫だからさ!」

  ☆

「木野さん色々とお世話になりました」
「あ、いやいやそんな」
「ケンタったらあなたと顔を合わすとお別れできなくなりそうだからって・・・」
「そっか、じゃあ元気でって伝えてください」
「えぇ」
 あれから引越しの準備が整うまであっという間だった。
 その間一度もケンタがまことに会いに来る事はなかった。

  ☆

「なぁ母ちゃん」
 引越し屋のトラックを見送りながら、それまで俯いていたケンタが顔を上げた。
「ん?」
「俺、ちょっと行って来る」
「え?」
「まことに・・・黙ってこのまま行っちゃうなんて男らしくないよな!俺行ってくる!」
 ニッコリと微笑むと
「いってらっしゃい」
 と、ここ数日で急に大人びた顔をするようになった息子を送り出した。

  ☆

「まこと!まこと開けろ!まこと!」
 ドンドンとドアを叩くケンタの声に驚いてドアを開ける。
「な、ケンタ?」
 どうしたんだ?としゃがんで見つめる。
 走ってきたせいで乱れた息を整えながら、一生懸命言葉を紡ぐ。
「オレ・・・オレはまだ今子供で、母ちゃん守ってやんのが精一杯で・・・でもオレいつかお前も母ちゃんも守ってやれるくらい強くなって迎えに来るから・・・だからその・・・ウワキすんなよな!」
「ケンタ・・・」
 ぶわっとガマンしてた分、ケンタの言葉で堰が切ったように涙があふれ出した。
「泣くな!泣くなってばぁ」
「ごめんごめん、あんまりケンタが男らしいこと言ってくれちゃうからびっくりしちゃった」
「オレはもう泣かない!おまじないが利いてるからな」
「そっか」
「だから今度はオレがお前にしてやるよ」
 言うなりまことの頬を包んでいた手に力がこもったかと思うと、唇に柔らかな感触が舞い降りた。
「もう泣くな」
「ケンタっ・・・」
 相手は子供だとわかってはいても、本気の告白に真っ赤に染まった頬をまことは隠せずにいた。
「オレのファーストキスだ、責任取れよな!」
「え?」
「じゃあな!バイバイ」
 勢いよくドアを開けた瞬間、そこには出会った頃と同じように亜美が立っていた。
「あっ・・・」
「亜美ちゃん?」
 目を丸くしていた亜美だったが、すぐに笑顔に戻って
「もう・・・行くの?」
 と、亜美もしゃがんだ。
「うん!色々生意気言ってゴメンな」
「くすくすっ気にしてないわ」
「そっか?なぁお姉ちゃん」
「ん?」
「父ちゃんも母ちゃんも好きか?」
「えぇ、大好きよ」
「そっか、オレも」
 ふわりと笑う二人。
「あ、そだ耳貸して」
「ん?」
 こしょこしょと何やらケンタが亜美の耳元で囁いている。
「何だよぉあたしにナイショなの?」
 ふふっと二人は顔を見合わせて笑う。
『ナイショ』
「じゃな」

  ☆

「行っちゃったわね」
「ん・・・ね、亜美ちゃん?」
「なぁに?」
「亜美ちゃんは、お父さんとお母さんが離婚したのって、自分のせいとか思っちゃった?」
「・・・今でも少し思ってるわ」
 その言葉に衝撃を受けたまことは、驚いて亜美を見下ろした。
「そうなの?」
「ん、事実だと思う、半分くらいは・・・少なくとも理由の一つではあると思うわ」
「・・・そうなんだ」
「大人には大人の事情もあると思うけど」
 まだ大人と呼ぶには少し早いけれど、子供と呼ぶにはふさわしくはない、丁度中間。
 でもそろそろ理解しないといけない年齢なのかもしれない。
「でも、もしわたしが原因だったとしても、両親がわたしを愛してくれてるのは間違いないと思ってるから・・・わたしは大丈夫よ」
「そっか・・・うん、そうだよね」
 そっか、と何度も呟きながら空を見上げた。
「だよね!」
 と言うと、晴れ晴れとした表情でまことは思いっきり伸びをする。
「寂しい?まこちゃん」
「まぁね、やかましいのがいなくなって静かになっちゃったしね」
「泣いてもいいのに」
「・・・え?」
「泣けばいいのに」
「でも・・・泣かないって約束だからさ」
「おまじないしてもらったし?」
「・・・見てた?」
「聞いてた」
「えーっとその、あれはね」
 カァっと頬を染めるとまことはしどろもどろになり、頭をぽりぽりと掻く。
 何か必死で言い訳を探すかのように。
「あたしもしてあげる、まこちゃん」
 そんなまことを心底おかしそうに口元を押さえながら笑い、大胆な発言をする亜美。
「うっ、あっ、え?・・・」
 ちゅっと背伸びをするとまことの頬にキスを送る。
「今日ののとこはほっぺたでガマンしてあげる」
 柔らかい唇がまことに元気を取り戻してくれた。
「・・・あの、亜美ちゃん?」
「なぁに?」
「さっきケンタと何話してたの?」
「ナ・イ・ショ・・・よ」
「えー?何だよそれぇ」
「ケンタくんとの約束だもん♪」
 くるりと振り向くと、イタズラっぽく笑う。
「ちぇーっ何だよ二人してー」
「ふふっまこちゃん」
「ん?」
「よしよし」
 ぽんぽんと背伸びをしてまことの頭を、お姉さんが妹を、お母さんが娘を褒めるように撫でる。
 とうとうガマンできなくなったのか、まことはきゅっと亜美の体を抱きしめた。
 肩が震える。
 嗚咽が洩れる。
 ぽんぽんと亜美の手が、頭から背中に滑り降りる。
「アイツいい子だったんだ・・・男だから泣かない!って必死に泣くのガマンして、自分も辛いのに家族いないあたしのことも守ってくれるって・・・」
「うん、ケンタくんにとってまこちゃんはトクベツだったんだね」
「ん」
「少し・・・ヤケちゃうわ」
「?」
「一週間もまこちゃん独り占めされちゃったもん、今度はわたしの番・・・」
「うん・・・うん、ごめん」
「・・・もうおまじないの効果なくなっちゃったの?」
「ちがうよ、嬉しいからだよ」
「そう、でもいつでもあたしはそばにいて、まこちゃんが寂しい時はおまじないしてあげるからね」
「うん・・・ありがと」
 ケンタくんとの約束は必ず守るわ。


――まことは寂しがりやだから、オレがいなくなったらお姉ちゃんそばにいてやってくれな
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Date:2008/08/29
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