Planetarium SS置き場

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優しい空間2

もっかい続きます




「亜美ちゃんって普段ごはんとかどうしてるの?ママが作ってくれてるの?」 
 まことは台所に立つと、隣で買い物袋を開けていた亜美に話しかける。 
「えっと、作り置きしてるのレンジであっためて食べたり、外食したり・・・」 
 それ以上はなんとなくまことの前で口にしたくはなかった。 
 寂しい食生活が恥ずかしかったのかもしれない。 
「亜美ちゃんもっと栄養取らなきゃ!だからこんなに細いんだよ」 
 驚いたまことはくるりと亜美に体を向けると、亜美の腰を両手で包み込むように触れる。
「きゃっ」 
 ビクンっと一瞬亜美は体をよじって逃げ出そうとするが、まことは逃がしてくれない。 
「細っ!亜美ちゃんヤバイよ!今日はあたしがシッカリ栄養たっぷり愛情タップリ料理作るからね!ちゃんと食べなよ?」 
「う、うん、・・・まこちゃんくすぐったい」 
 亜美は頬を上気させて、苦笑いをする。 
 まこちゃんの気遣いが嬉しかったのと、触れられた部分がくすぐったかったのと、まことの手の心地よさに、亜美は妙に気恥ずかしくなってしまった。 
「あはは、ごめんごめん。じゃね、亜美ちゃん漬物切っててよ、あたしその間コッチで作るからさ」 
「うん」 
 
  ☆ 
 
 小1時間後、食卓に並んだ数々の料理。 
 かれいの煮付けに里芋の煮っころがし、ほうれんそうのおひたしに、味噌汁とおまけにコロッケ。そして漬物と白いごはんがほかほかと湯気を立てている。 
「おいしそう」 
 ひさしぶりの温かな食卓に思わず本音が洩れた。 
「そ?キライなものない?」 
「えぇ、大丈夫よ」 
「じゃぁ、いただきます」 
「いただきます」 
 2人はテーブルに向かい合わせにきちんと正座をすると、手を合わせてペコリとおじぎをする。 
 パクリと里芋を口に運ぶ亜美をジっと見守るまことに、亜美はニッコリと微笑みかける。
「おいしい!まこちゃんお料理上手ね、やっぱり!」 
 はぁ~っと息を吐くと、まことは緊張が解けたかのように微笑み返す。 
「よかった!亜美ちゃんの口に合ってさ、あたしも食べよっと」 
 コロッケをサクっと箸で割ると、ホクホクと湯気が上がる。 
 ほわんっと2人の笑顔が食卓の上を行き交う。 
 こんなに穏やかで温かな食卓を囲んだのは一体何年ぶりだろう? 
 ママとご飯を食べるなんてめったに無いし、あっても外食だったりするからこんなにゆったりとした食卓なんて、本当にパパがいた頃以来かもしれない。 
「亜美ちゃん?どうしたの?」 
「え?」 
 亜美は箸を止めたまま、ボーっとしていたらしい。 
「あ、え?な、何でもないわ、ごめんなさい」 
「ん?」 
「あの、こんな食事・・・久しぶりだったからつい」 
「あぁそうだね、あたしも久しぶりだよ、誰かと食卓囲むなんてさ」 
「うん、ごはんって・・・こんなにおいしいものだったのね」 
「あぁ、そうだね、やっぱり一緒に食べる人がいるのといないのじゃ美味しさが違うもんね、絶対!食べてくれる人がいると作る方も美味しく作ろうって張りきっちゃうしね」 
 コクンとうなづく。 
 そうだ、あたしはいつも一人だったから何でもいいやってなっちゃって、適当に済ませちゃう。 
 同じ一人でもまこちゃんはすごいわ、やっぱり。 
 
  ☆ 
 
「あーおなかいっぱい!もうムリ!」 
「あのねぇ、アイドルがこんなにカロリー高いもの食べて大丈夫なわけ?」 
「たまにはいいじゃない?節制ばっかりしてたら体もたないわ、アイドルって結構過酷な職業なのよ」 
 2人の前に広がっているピザの乗っていた数枚の皿。 
 あくまで過去形・・・今はスッカリ存在していたハズのピザは姿を消していた。 
「そうだけどさぁ」 
「とかゆって半分はマーズが食べたんじゃない!」 
「くすっ、まぁね」 
 その通りだった。 
 夕方になって朝から何も食べてなかったことに気づいた美奈子は、お腹が空いたとレイに訴えたところ、じゃぁっと目の前にあったイタリア料理屋に二人は入店した。 
 店長オススメだというピザを注文してみた所、思いのほかおいしくってついつい2人で食べ尽くしてしまったのだった。 
 胃袋も落ち着いてほっとしたところで、美奈子はもう一度尋ねる。 
「で?誰の家?」 
「何が?」 
「マンション!」 
 すっとぼけるレイにイラつく美奈子。
「あぁ。ふふっ、大事な人の家・・・かな?」 
 その言葉に益々ふくらむ嫉妬の渦。 
「わっかんない!」 
「ココ、おごってくれる?」 
「何でよ???」 
「普通の女子中学生ですから、おこずかいにも限界があるのよね」 
「だからって何であたしが??」 
「んー、ならあたしもう帰るわ」 
 カタンとイスを蹴って立ちあがろうとするレイに、美奈子は観念した。 
「う・・・わ、わかったわよ」 
「ごちそうさまぁ~」 
 再びイスに座りなおすとニコニコと微笑み、ヒラヒラ~っと手を振るレイにブーっと膨れる美奈子。
 まぁ中学生でも仕事してるんだからこれくらいの出費なんともないけどさぁ…なぁんか納得いかないわ! 
 
  ☆ 
 
「スッカリ食べきっちゃったね!お腹いっぱいになった?」 
「えぇ、もういっぱい、ごちそうさまでした」 
「亜美ちゃんは、もっと栄養取らなきゃダメだからね!あたしがごはん作ってあげるからさ、たまにはウチにおいでよね?」 
「迷惑じゃないの?」 
「もちろんだよ!一人分作るより2人分作ったほうが美味しくできるんだよね、それに一人で食べるより2人で食べるほうが美味しいもん」 
 極上の笑顔を亜美に向けると、麦茶をグラスに注ぐ。 
 カランと氷の崩れる音。 
 幸せで穏やかな空間と時間。 
 たわいもない話で盛り上がる二人。 
 いつしか時間は流れに流れて、気がついたら時計はもう夜中に近い時間を指していた。 
「もうこんな時間!大変!ごめんねまこちゃん!すっかり長居しちゃったわ」 
「え?あ、ホントだ!・・・ねぇ亜美ちゃん?亜美ちゃんさえよかったらさ、泊まってかない?こんな時間に外歩かすのも心配だし、さ?」 
「え、でも・・・いいの?」 
「いいよ、ね?明日日曜だし!」 
「うん、じゃぁ」 
 このまま帰るのも、このまま帰すのも寂しいなと思ってた二人は、お互い何となく目が合うと、えへへっと照れ笑いを交わす。 
 
  ☆ 
 
「ねぇ!ねぇったら!マーズ!ドコ行くの?」 
「ドコ行こうかしら?ドコ行く?んーもう7時か・・・帰ろうか?」 
「はぁ?まだ7時よ!・・・ってかそうじゃないでしょ!マンションの話は?」 
「あぁ、そんっっなに知りたいの?」 
 レイはズイっと美奈子の顔に寄るとニヤリと笑う。 
 珍しくガマンなどしていた美奈子にもさすがに限界がきていた。 
「あったま来た」 
 ボソリと呟く。 
「んーーーー?」 
「あったま来た!!いい加減にしなさいよ?人にさんざんオゴらせといて!」 
「さっすが社会人!一介の女子中学生のあたしにはマネできないわ」 
 美奈子はとうとう爆発した! 
「さいってーーーー!もう帰る!ばかばかしい!」 
 美奈子はレイに背を向けて、さっさと歩き出す。 
「まことよ」 
 その歩みを止めるかのように背後から声がかかる。 
 美奈子の足がピタっと止まる。 
「今、何か言った?」 
 ゆっくりと振りかえり、今の言葉をもう一度確認する。 
「まことの家よ、あそこ」 
 一瞬何を言われてるのかわからなかった。 
「マンションのこと?だって大事な人って・・・」 
「そうよ、仲間だもん、大事に決まってるじゃない。亜美ちゃんも一緒だったしね。ポストに名前がなかったみたいだけど、女の子の一人暮しは物騒だから名前入れてないみたいよ、前にそんなこと言ってた」 
 呆然と立ち尽くして何度もレイの言葉を頭の中で反芻する美奈子に、レイは自分のヒジを差し出す。 
「行くわよ、もういいでしょ?」 
「うん!」 
 タタっと駆け寄ると、勢いよくレイの差し出された腕に飛びついて自分の腕を絡めた。 
「ドコ行く?もう今日はドコにでも付き合うわよ!」 
「ゲンキンねぇ、明日仕事でしょ?あんまり遅いと寝坊するわよ」 
「全然大丈夫!若いからね!」 
「くすくす、尾行ばっかりで疲れたんじゃないの?やっぱり帰ろうか?」 
「ヤダ!帰ってもアルテミスはいないし一人じゃつまんない!」 
「だぁから!一緒に帰るかって聞いてるのよ」 
「え?」 
「オゴってもらったぶん宿代は取らないから」 
「い、行ってあげてもいいわよ!?」 
 ぷーっと膨らんでいた頬が一瞬にして笑顔に変わると、美奈子はレイの腕を引っ張って勝手知ったる場所、火川神社に向けて歩き出した。 
 
  ☆ 
 
「亜美ちゃんお湯の温度どう?熱くない?」 
「大丈夫よ」 
「パジャマとタオルここに置いとくから」 
 脱衣所に入ると、湯気で曇った浴室のすりガラス越しに言葉をかける。 
 チャプンチャプンとお湯と戯れている音が聞こえる。 
 水に触れている時が一番落ち着くんだって、亜美ちゃんが前に言ってたことがあるなぁと思い出す。 
 産まれたままの姿の亜美を、ガラス越しに想像して呆っと立ち尽くす。 
「ありがとう、まこちゃん」 
 その言葉にフっと妄想の世界から現実に引き戻されると、亜美の声にまことの頬が緩む。
 家に人がいるって、いいな♪ 
 いつもは静まり返った部屋にTVの音だけが響くような寂しい部屋だったのが、今日は優しい気配でいっぱいに包まれている。 
 自然とまことの気持ちも優しくなれる。 
 お風呂上りには、何がいいかな? 
 まことは台所に立つと、亜美好みの飲み物を選びにかかった。 
 
  ☆ 
 
「お先に、まこちゃん」 
「あ、出た?亜美ちゃん・・・」 
 結局、アイスティーにすることにして氷とレモンの輪切りを用意していたまことは、振り返って目を丸くする。 
「ってちゃんと髪拭けてないじゃん!」 
 首にかけたバスタオルを亜美から奪うと、まことは亜美の頭にタオルを乗せ、勢い良くクシャクシャと滴り落ちてる髪の水分を飛ばす。
 亜美は子供のように目をギュっと閉じてされるがままになっていた。 
「風邪ひくだろ?ダメじゃん、もしかしていつもこうなのかい?」 
 コクンとうなづく。 
 手を止めたまことは少しだけしゃがんで亜美を見上げると、不思議そうに尋ねる。 
「何で?」 
「特に理由は・・・」 
「ふーん?でもダメだよ、夏でも風邪引いちゃうからね」 
 再び手を動かしはじめるまことに、素直にうなづくと亜美は小さく笑う。 
「うん、ふふっ」 
「どうしたの?亜美ちゃん」 
「気持ちいいなって・・・」 
「コレが?」 
「うん、気持ちいい」 
 ダーーーーっ!か、かわいい!亜美ちゃんかわいすぎ! 
 微笑んでまことを見上げる亜美を無性に抱きしめたくなる衝動に駆られる。 
 うーんと頭を悩ませ、ヨコシマな心と葛藤を続けながら手を動かしていると、ふいに亜美の体がまことの腕の中にスッポリと収まった。 
「え?」 
 驚いたまことは、ドギマギしながら腕の中に収まっている亜美と、自分の手の行方を交互に見やる。 
 両手は亜美の頭があった場所にタオルと一緒にちゃんと浮かんでいた。 
 ためしにわきわきと指を動かしてみるが、触れるものは何もない。 
 この状況は、まことが作り出したモノではない。 
「亜美ちゃん?」 
「ふふっ、まこちゃん気持ちいい」 
「え?へ?あ、あ、亜美・・・ちゃん?」 
 まことの腰に回される亜美の手にきゅっと力がこもる。 
「あのねまこちゃん、ホントに色々ありがとう」 
「え、あ、うん?」 
「あたしたち、自分のことばっかりで周りが全然見えてなかった。自分達ばっかり遊んで、ストレス解消しちゃって、まこちゃんが心配してくれてたことにも全然気づかなくて・・・お勉強がどれだけ出来てもそんなの意味ないわ。まこちゃんの方がずっと・・・スゴイわ」 
 亜美はそう言うと、まことの胸に顔を埋める。 
「スゴイって、何がだよ」 
 亜美の言葉に思わず笑ってしまったまことは聞き返す。 
「この家・・・ね、まこちゃんの優しさでいっぱいなの・・・すごく心地いいの」 
「そ、そうかい?」 
「うん、だからスゴイの」 
「あはっ、何だかわかんないけどホメられてるみたいだからとりあえず・・・ありがと」 
 まことは亜美の蒼い髪に優しく触れ、背中をあやして抱きしめる。 
 上目遣いでまことを見上げてうれしそうに笑う亜美の顔に、再びドギマギとまことの心臓が暴れ出す。 
 それを悟られないようにムリヤリ自分の感情を押さえ込むと、務めて平静を保ったままでその理由を教えてあげた。 
「あの・・・さ、亜美ちゃん?この部屋が心地いいって感じるのはね、亜美ちゃんがいるからなんだよ。いつもはもっと静かだし寂しいだけの部屋だもん」 
「あたしが?」 
「そう、亜美ちゃんが・・・」 
 ニッコリ微笑んだまことは亜美の髪にキスを送ると、もうすっかり渇いた亜美の髪をもう一度優しく梳く。 
 
  ☆ 
 
「へぇ~マーズいつもこれで寝てるの?」 
 お風呂から上がった美奈子はレイの部屋で浴衣のスソをピラピラと捲り上げながら嬉しそうに舞う。 
「まーね、夏の間だけね」 
「ふーん、いいじゃないいいじゃない!気に入ったわ」 
 鏡台に座るレイの後でくるくるとモデルのようにポーズを取ってみたりする。 
「そう?それはよかった」 
 ドライヤーを片手に髪を乾かすのに忙しいレイは、美奈子の感動をおざなりな返事で流す。 
 適当に流されてかまってくれないレイの肩を、美奈子は背後からガクガクと揺する。 
「これ欲しい!ねぇマーズ!」 
「あーもう、わぁかったわよ、あげてもいいけど家とかホテルで着る気?」 
「んーそうかぁ、そうよね」 
 うーんっとアゴに指を当てて本気で考え込む美奈子にレイは、はぁ~っとため息をつくと一つの提案をした。 
「ココに置いといてあげるわよ、あなた用に。着たかったらいつでも来ればいいじゃない」
「ホント?言ったわね?」 
 ヒザをつくと美奈子は背後からブランとレイの肩に体重をかけてぶら下がる。 
「言ったけど?ちょ、苦しい美奈!」 
「・・・妙に優しいわね、今日のマーズ」 
 んーーー?とレイの顔をのぞきこんで怪しむ美奈子。 
「何考えてるの?マーズ」 
「別にぃ?まぁ今日はちょっと悪いことしたかなぁって」 
「反省してるんだ?」 
「うん・・・」 
 素直にうなづきながら、ふっと約3秒ほど考え込んだレイ。 
「ってちょっと待って!よく考えたらあたしが謝る必要ないじゃない!勝手についてきたのはそっちだしさ!そうよ」 
「ちっ気づいたかっ」 
 美奈子は舌打ちする。 
「やっぱやめ、はい脱いで脱いで」 
 レイはくるりと振り返ると、美奈子の浴衣に手をかけて脱がすマネをする。 
「いやん」 
 レイの手を振りほどいて浴衣の胸元を掻き合わせると、逃げるマネをする美奈子。 
「へ、ヘンな声出さないでよ、ばか!」 
「ヘンなことしようとしたのそっちじゃない!」 
「な、何よヘンなことって!?」 
「そういうことは電気消してからでしょう?」 
「ば、ば、ばか言わないで!」 
 やっと美奈子の言わんとしている意味を理解したらしいレイは、顔を真っ赤にして怒る。
「ふふっ、マーズって意外と純情よね?」 
「い、意外って何よ意外って!」 
「ううん、おもしろいなぁって。こんなウブなマーズに男がいるかもって疑ったあたしがバカみたいだわ」 
「あ、あたし、男にうつつを抜かしてるほどヒマじゃないからっ!」 
「へぇ?でもあたしのことには少しは興味持ってるみたいだけど・・・ね?」 
 美奈子はチラリとベッドの脇に目を向ける。 
 さっきから妙に気になってる、この部屋では微妙に違和感のある物体。 
 めったに音楽など聴かないと言っていたはずなのに置いてあるCDラジカセ。 
 そのそばに立てかけてある美奈子のセカンドアルバム。 
 中身は本体に入れっぱなしになっているのかケースは軽かった。 
「うっ、そ、そんなこと!それにそれあたしのセリフだから!」 
 怒りのためか、恥ずかしさのためか、頬を紅潮させたレイは必死で否定しようとする。 
「はいはい、そうそうあたしはぁ、マーズにぃ、興味津々ですぅ」 
 美奈子はレイの首に腕を回すと小さく首をかしげ、天使のような悪魔の笑顔でおどけてそう言う。 
 こういう所では美奈子の方が一枚上手らしい。 
「なんか・・・ムカつくわね」 
 こんなことでムっとするレイがかわいくてかわいくて、美奈子は思わず吹き出してしまう。 
「ぷっ、くすくす、好きよマーズ」 
「うっ」 
「わかってる?ホントに」 
「わかってる、わかったから、いい加減髪乾かして寝なさいよ、風邪引いたら仕事どころじゃないでしょ?」 
「はーい」 
 ストンと鏡台の前にレイと入れ替わりに座ると、はいっとレイにドライヤーを手渡す。 
「何?」 
「やって」 
「えぇ~?んもう、わがままなんだから」 
「へへっ」 
 逆らってもムダと悟ったレイは、渋々とクシを片手にドライヤーのスイッチを入れた。 
 
  ☆ 
 
「ね、亜美ちゃん?」 
「ん?」 
 まことのベッドはセミダブルなので、小柄な亜美となら充分寝れる…ということで、一緒に寝ることにした。 
 まぁ?理由はそれだけじゃぁないけど・・・さ。 
 まことがふっと枕元に置いてある目覚まし時計に目を向けると、すでに日は代わっていた。 
 部屋に響くクーラーの音。 
「クーラー大丈夫?寒くない?」 
「うん、大丈夫」 
「あんま冷やすとよくないから、温度は上げてあるけど寒くなったら言ってね」 
「くすっ、まこちゃんがいるから大丈夫よ、丁度いいわ」 
 そう言うと亜美はその言葉を証明するかのようにまことに擦り寄り、胸元に埋まる。 
 まことのパジャマの胸元をキュっと子供のように握り締める亜美の手。 
「うっ、あ、あ、亜美・・・ちゃん?」 
 ヤバイって!カワイイって!亜美ちゃん!あたしにどうしろって? 
 やり場のない手、ドギマギと踊る心臓、上ずる声。 
「うん?」 
 上目遣いで見上げながら返事をする亜美の唇が、不意にまことの首筋に触れる。 
 その柔らかな唇の感触に、益々心臓の暴走に拍車がかかり、落ち着きがなくなるまことの心臓。 
「や、あの、さ」 
「なぁに?」 
「えっと、さ・・・いいの?・・・かな?あたし」 
 抱きしめちゃっても・・・さ。 
「ん?何が?」 
「えっと、あの・・・や、何でもナイ、おやすみ亜美ちゃん」 
 天然純粋培養で育ったらしい亜美のきょとんとした視線に、まことのヨコシマな心は再びノックアウトされた。 
 ぽんぽんとまことの手は、泣く泣く亜美の背中を優しくあやすだけに留まった。 
「うん!おやすみ、まこちゃん」 
 極上の笑み。 
 悩殺モード全開! 
 まさかわざと・・・じゃないよ・・・な?亜美ちゃん。 
 あたし・・・眠れないじゃんよ、今晩。  
 ふと気がつくと、亜美の背中が規則正しい動きをはじめていた。  
 寝つきよすぎだよ、亜美ちゃん…徹夜決定だなこりゃ。 
 
 『蛇の生殺し』 

 こうしてまことの脳には一つの諺(?)がしっかりと刻みつけられることになった。
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Date:2008/08/29
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