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□ まこ×亜美 □

役得

珍しく電車に乗った時に思いついたのだ




「うーん、スゴイ人だねぇこりゃ」
「ホント、私たち滅多にこの時間に電車に乗ることがないから知らなかった」
「だぁね」
 まことと亜美は、人でごった返した駅のホームで困惑していた。
「よく考えたら平日のこの時間って、出勤・登校時間と重なってるもんなぁ」
「創立記念日は全国共通のお休みじゃないものね」
 二人は十番高校の創立記念日に、少し遠出をしようと勇んで出かけてきたのはいいが、ラッシュに遭遇するという不運に見舞われていた。
 いや、少し時間をズラせば回避できた事態なのだが、目的地まで少し距離があったので、早く行ってたくさん楽しもう!という想いが招いた、当たり前の不運だった。
「ピクニックまでに疲れちゃいそうだな、こりゃ」
 言ってまことは亜美の手を引いて電車に乗り込んだ。

  ☆

「うーん、亜美ちゃん大丈夫?」
 つり革を掴んでまことは自分の胸元を見下ろす。
「ん・・・」
 ぎゅうぎゅうに詰めこまれてつり革に手が届かない亜美は、まことの胸元に押し付けられ、必死でTシャツを掴んでいる。
 苦しそうに顔をゆがめる。
 かわいそうなことしたなぁとまことは思い、つり革を掴んでいる方とは違う手で亜美の肩を抱き寄せる。
「しっかりつかまってな」
「うん、ありがとう」
 見上げる亜美の目が潤んでいる。
 うわっかわいいっ・・・あぁもう~役得だ!
 心の中でガッツポーズを決めると、まことはもう一度亜美の肩を抱く腕に力をこめた。
 駅に着くたびに入れ替わる人の群れ。
 よくこれだけの人が乗れるものだと感心してしまう。
 しかし相変わらず席が空くわけでもなく、人の波の力で徐々に奥に押し込まれていく。
 勢いに押され、つり革から手が離れると、ドンっと壁を背にまことは押し付けられた。
「うわっ・・・とととっ」
「まこちゃん?」
「亜美ちゃん?」
 思わず手を離してしまったまことは、慌てて亜美の姿を探す。
 亜美はまことと同じくらいか、少し大きいくらいのサラリーマンや学生たちの壁に阻まれて抜け出せずにいた。
 ひょこんと現れた女の子に、ラッキーとばかりに目の色を変える男たちの視線に、身動きの取れない亜美は小さくなってカバンを胸の前で抱えた。
「ちょ、ちょ、すいません」
 まことは慌てて人の波を掻き分けた。
 迷惑だろうとは思ったが、怯える亜美を放っておくわけにはいかない。
「すいません!」
 まことは強引に体をねじ込むと亜美の体を抱き寄せて、再び壁際に戻った。
「ま、まこちゃん?」
「ごめん」
「え?」
「手、離してごめん」
 耳元で囁く。
 まことはくるりと体を入れ替えると、亜美を壁際にもたれさせる。
 壁に両手をつくと、腕の間にできたスキ間に亜美を入れる。
 亜美は抱えていたカバンを下ろすと、不安そうな瞳でまことを見上げる。
「あの・・・大丈夫?」
「ん」
 ニッコリ微笑むまことに、亜美の頬もほんのり染まる。
「ありがとうまこちゃん」
 まことはそっと耳元に唇を寄せると、
「だって亜美ちゃんが他のオトコに触れられんのがヤだったんだもん」
 誰にも聞こえないようにコッソリと。
 亜美の耳にだけ届くように囁いた。
 顔を上げたまことの頬も、心なしか少しだけ紅く染まっているように見えた。
「まこちゃん」
「もう少しのガマンだからね、亜美ちゃん」
 返事の代わりにまことのTシャツを掴む手にギュっと力をこめる。

  ☆

 やっとのことで人が減った車内は、異常に広く見えた。
 ストンっと空いた席に座る。
「こんなトコにあんなに人が乗れるのかぁ、スゴイな」
 そう広くはない車内を改めて見渡す。
「そうねぇ、みんな毎日こんな大変な思いしてるのね」
「うん、学校近くてよかった」
 心の底からそう思う。
 あたしだけならともかく、亜美ちゃんの家が遠かったら毎日こんな電車で通うハメになってたんだ。
 それを想像すると、まことの体が震える。
 こんな電車に亜美ちゃんを一人で乗せるのは怖い・・・というより絶対イヤだ!
 亜美ちゃんなんかすぐ変なヤツに狙われちゃいそうだもんなぁ。
 はぁ~よかった。
 大きなため息をつく。
「まこちゃん?」
「ん?」
「どうかした?」
「いや・・・今度はもっとゆっくりの時間に乗ろうね」
「そうね、まこちゃんをこんなに疲れさせるのはもうイヤだし」
「え?」
「私の代わりにまこちゃんが色んなその・・・男の人に触れられるのが・・・私もイヤだから」
 頬を染めた亜美は自分の言葉に照れたのか、俯いてしまう。
 まことはその言葉が嬉しくて嬉しくて、思わず笑顔がこぼれた。
「亜美ちゃん護るのはあたしの役目だもーん、誰にもやんない」
「ばかっ」
 愛しい想いを込めた抗議の言葉と一緒に見上げる亜美の髪を、まことはよしよしと撫でる。
「亜美ちゃんを守るっていう口実で肩抱けるなんて役得役得♪」
 人差し指を立ててまことは
「ラッキー」
 と笑った。
 まことの笑顔につられ、亜美の顔からも笑顔がこぼれた。
 電車がスピードを落とす。
 駅に近づいていた。
 まことは立ち上がって手を差し出す。
「着くよ、降りよっか」
「うん」
 その手を取って立ち上がると、亜美もニッコリと微笑んだ。
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Date:2008/08/28
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